Ωにうまれて

認認家族

文字の大きさ
2 / 10

2

しおりを挟む
智則から連絡が入った。

『応援は大丈夫だから、ホテルに戻って試合が終わるのを待ってて下さい』

え?
いやいや、応援の為に飛行機でここまで来たんだよ?
予選は応援させてくれたのになんで。

『ヤダ』

『先輩、お願いいたします。ホテルで大人しくしてて。』

智則が折れないのは珍しい。
けれど、僕だって譲歩は出来ない。僕に残された時間は少ない。智則の応援を出来るのも、今回が最後になるのだから。

『絶対ヤダ。智則今どこ?向かうよ』
…………返信がない。
『いいよ、じゃあ虱潰しにあたっていく』

『そこから二ブロック先すいどう』

慌てて返信したんだろうな。くすりと笑いもれる。
智則は僕の場所をGPSで把握している。僕がお願いをしたんだ。

智則の所に行くと、何故か水浴びしていた。
適度に割れた腹筋が眩しい。髪の毛から滴り落ちる水滴がエロい。
「ど、どうしたの!?」
慌てて近づくと、手で制された。
「それ以上は近づかないで。先輩の香りが移る」
「え……」
智則がそんな事をいうのは初めてだ。
「何かあったの?」
「あったというか……用心です。何度も言うけど、今すぐホテルに戻って鍵をかけて待っててほしい。先輩の香りに反応したαがいる。」

何かと思えば……。
僕のニオイに反応するαなんてごまんといる。けれど僕のネックガードを見て諦めるヤツがほとんどだし、諦めない輩にはスタンガンをお見舞いする。避けられても智則が助けてくれるから、なんの問題もない。

「いつものことじゃん?僕は智則の応援をする。…………これが最後の応援になるから」

智則が痛ましそうに顔を歪める。そんな顔をさせたいわけじゃない

「先輩、最後なんかじゃないよ。試合終わったら話があるって言いましたよね。……でも取り敢えず、余裕のある男って見せたいから今回は折れます。抑制剤と防犯ブザーとスタンガン持って来てますよね?」

余裕のある男……。
笑ってしまう。
「先輩!」
顔を赤くして智則が抗議する
「いや、だって男というより男の子だし。それに、ホントに余裕のある人はそんな事言わないよ」
さらに智則が赤くなる。あぁカワイイなぁ。
…………あと一年。

「大丈夫、スプレーも持ってきているよ。……不安なら抑制剤も飲んでおくから、安心して試合に臨んで?」

目の前で抑制剤を飲んだ

智則は少しだけだけど安心したようだ。近づくと離れるけれど。


智則と分かれて、二階席に移動した。

智則があまりにも心配するので、防犯ブザーを首から下げている。集中して欲しいから。どうせ、僕がΩなのはネックガードとこの容姿でバレバレだしね。

順番待ちの智則を見つめた。
ピンと張った背筋。
僕の心配するより、自分の心配したほうがいいけどね。αどもが下卑た視線を投げかけているのに智則は気がついてない。己に集中し、纏う空気は静謐で、僕は智則が入学してきた頃を思い出していた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。

処理中です...