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決勝戦
隣に立つ例の男からは香りが消えていた。道着を着替えたか。
だが、今更遅い。
この男の周囲を洗えば、俺の運命に出会える。
秋葉智則、次男、β。
両親、長男共にα。そのためか、幼少期に虐待を受けていた疑惑があり一時保護施設に入っていた。
高校の成績は優秀、SP会社が運営している道場にも通い運動に秀でており、周囲の信頼も厚い。
父親が社長を務める秋葉商事で新事業の補佐をしている。(恐らく秋葉智則自身が主導、秋葉商事は名義貸しに近いと推察される)
それなりに高級住宅地に住んでいる為、周囲にはαΩの率が高く、どのΩが俺の運命に該当するかは、現時点では未確認。
この短時間の間に調べられたのはその程度だ。明日にはもっと詳細なデータ
決勝戦のメンバーがそろった。
秋葉とやらを除き、みなαで落ち着きがある…ようにも見えるが実際は薄氷の上にいるような緊張が見える。むしろ…この状況で平穏でいられる俺や秋葉が珍しいのだ
何者おも寄せ付けないピンと張った背すじ。そこいらのαなんかよりも使える人物かもしれない。
射る番になってもヤツは凪いでいて、相当な精神力だ。深澤というかなり有名なセキュリティ会社が運営している道場で護身術を学んでいたから、心頭滅却すれば火もまた涼しという域まで達したのかもしれない。βでそこまでなるにはかなり努力を労しただろう、久々に骨のあるやつに会えた。
試合を終えて少し話をした。この決勝戦でお互い相手の質を感じ取り、数時間前の微妙な印象は払拭されていた。弓の話で盛り上がる。
話してみると、頭の回転も悪くない。側近に優秀なβが一人二人欲しかったところだ。リクルートするか。
「あ…連れがくるので、また、大会で」
お辞儀をされて、去っていく。
珍しい。たいていの奴はツレなどより、将来をのためにもこの俺と話すことを優先するのに。
なんとなくヤツの向かう方向を見て…心臓が一瞬止まった。
俺のオレのオレノオレノ!
白魚のような手が他の雄に伸ばされる。
オスに触れる前に、その体ごと取り戻した。
けれど、俺のメスはいやいやと身を捩る。俺のメスなのに。そうか、隙間があるかるから暴れるのだ。強く強く抱きしめる。俺のメスが呻く。
「先輩!」
オスが俺のメスに声をかけ、メスの意識がそちらを向いた。ユルサナイ…
「とものり…」
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ…
オレノメスナノニ。マダフクジュウサセテナイカラ…?
頸にかみついた。ナニカが俺の牙を阻む。それでもぐりぐりとうずめていく。
オレノメスが悲鳴をあげた。
「やだ、助けて智則!」
俺のメスなのに他のオスを頼るな!
俺だけを見つめろ!
怒りのままに牙をもっともっと埋める。
「やめろ!」
オスが俺とメスを剝がそうとする。
奪われてなるものか!!奪うものを殺してやる。怒りを振りまくとうめき声が聞こえてきたが目の前のオスは眉をひそめただけで、なおも俺とメスを引き裂こうとしてくる。
ユルサナイ
怒りのあまり、自分が制御できなくなっているのが分かる。あと数秒でラットになる。歯がガチガチと鳴り涎がたれる。うずめたい、うずめたい。俺を俺のメスにうずめる。
「チッ」
急速に目の前が暗くなった。
なんだ…?
奪われてなるものか!
メスをもっと引き寄せる。
だが、視界は完全に暗くなってしまった。
隣に立つ例の男からは香りが消えていた。道着を着替えたか。
だが、今更遅い。
この男の周囲を洗えば、俺の運命に出会える。
秋葉智則、次男、β。
両親、長男共にα。そのためか、幼少期に虐待を受けていた疑惑があり一時保護施設に入っていた。
高校の成績は優秀、SP会社が運営している道場にも通い運動に秀でており、周囲の信頼も厚い。
父親が社長を務める秋葉商事で新事業の補佐をしている。(恐らく秋葉智則自身が主導、秋葉商事は名義貸しに近いと推察される)
それなりに高級住宅地に住んでいる為、周囲にはαΩの率が高く、どのΩが俺の運命に該当するかは、現時点では未確認。
この短時間の間に調べられたのはその程度だ。明日にはもっと詳細なデータ
決勝戦のメンバーがそろった。
秋葉とやらを除き、みなαで落ち着きがある…ようにも見えるが実際は薄氷の上にいるような緊張が見える。むしろ…この状況で平穏でいられる俺や秋葉が珍しいのだ
何者おも寄せ付けないピンと張った背すじ。そこいらのαなんかよりも使える人物かもしれない。
射る番になってもヤツは凪いでいて、相当な精神力だ。深澤というかなり有名なセキュリティ会社が運営している道場で護身術を学んでいたから、心頭滅却すれば火もまた涼しという域まで達したのかもしれない。βでそこまでなるにはかなり努力を労しただろう、久々に骨のあるやつに会えた。
試合を終えて少し話をした。この決勝戦でお互い相手の質を感じ取り、数時間前の微妙な印象は払拭されていた。弓の話で盛り上がる。
話してみると、頭の回転も悪くない。側近に優秀なβが一人二人欲しかったところだ。リクルートするか。
「あ…連れがくるので、また、大会で」
お辞儀をされて、去っていく。
珍しい。たいていの奴はツレなどより、将来をのためにもこの俺と話すことを優先するのに。
なんとなくヤツの向かう方向を見て…心臓が一瞬止まった。
俺のオレのオレノオレノ!
白魚のような手が他の雄に伸ばされる。
オスに触れる前に、その体ごと取り戻した。
けれど、俺のメスはいやいやと身を捩る。俺のメスなのに。そうか、隙間があるかるから暴れるのだ。強く強く抱きしめる。俺のメスが呻く。
「先輩!」
オスが俺のメスに声をかけ、メスの意識がそちらを向いた。ユルサナイ…
「とものり…」
ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ…
オレノメスナノニ。マダフクジュウサセテナイカラ…?
頸にかみついた。ナニカが俺の牙を阻む。それでもぐりぐりとうずめていく。
オレノメスが悲鳴をあげた。
「やだ、助けて智則!」
俺のメスなのに他のオスを頼るな!
俺だけを見つめろ!
怒りのままに牙をもっともっと埋める。
「やめろ!」
オスが俺とメスを剝がそうとする。
奪われてなるものか!!奪うものを殺してやる。怒りを振りまくとうめき声が聞こえてきたが目の前のオスは眉をひそめただけで、なおも俺とメスを引き裂こうとしてくる。
ユルサナイ
怒りのあまり、自分が制御できなくなっているのが分かる。あと数秒でラットになる。歯がガチガチと鳴り涎がたれる。うずめたい、うずめたい。俺を俺のメスにうずめる。
「チッ」
急速に目の前が暗くなった。
なんだ…?
奪われてなるものか!
メスをもっと引き寄せる。
だが、視界は完全に暗くなってしまった。
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