最上位αの初恋

認認家族

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 沈黙に耐えられなくなったのか、宮下が陸のスマートウオッチに言及した。
「あれ?青島スマートウオッチ買ったんだ?」
「うん」
 陸が柔らかい笑みを浮かべながらベルトを撫でる。
 確信した。
 陸の新しいスマホには何も入ってない。コンちゃんの情報が入ってるのはソレだ。
 どす黒い思いが込み上げてくる。そんなに大切そうに撫でるな。愛おしそうに見つめるな。君は私のモノだ。何故自覚しない。自覚させねば。そうだ、我が儘な番には躾が……
 コツン!
 頭に何か当たった。
 見ると胡桃だった。
 千葉が私を注意する為にスコーンに入っていた胡桃を弾いたのだ。
 深呼吸を繰り返す。いわゆるアンガーマネジメントだ。京極の次代としてのカリキュラムの中にあったこれを実践する日が来ようとは。学んでいる時は、私にこのようなものは不要だと思っていた、そこまで私の心を揺さぶるものなど起きやしないと思っていたから。
 けれど現実はどうだ。陸は私の心を復活させた。深呼吸程度では消せない苛立ち。
 指をテーブル叩く。陸が顔を上げる。陸に認識された、それだけで妬心が霧散した。

「「「「…………」」」」
 猪瀬がため息を漏らした。
 そう、まだ陸に私の執着を気が付かれる訳にはいかないのだ


「あの?」
 陸が場に残る微妙な緊張感を察して聞いてきた。 
「なんでもない」
「貴嗣様、この後ベッドの割符と温泉が……」
「そうか」
 これから一週間、陸は私の隣で眠る。すでに私と陸の配置は決まっているが、陸に警戒されないように全員くじ引きを行う。

 箱に沈んでいるクジは全て陸の位置、端にしてある。私はクジを手に隠し持って行い、猪瀬たちは箱の上蓋に貼り付けてあるのをひく。
 失態続きの宮下は青褪めながら手のストレッチをしている。陸がそんな宮下を励ましている。…………宮下、陸に懐かれすぎだ。やはり帰しておくべきだったか


 猪瀬が箱を私に持ってきた。
「ああ、私はここか」
 つぶやきながら、端から2つめのベッドの上に座る。陸に気が付かれないように皆を睨む。
『例え天地が避けようともミスはするなよ』と。
 皆が緊張する。
 絶対に失敗は出来ない……!そんな悲壮感漂うくじ引きに、陸までつられて緊張している。すでに決まっているのにと思うと、かわいすぎる。
 陸がくじを開き、そして、崩れ落ちた。
「俺、くじ運悪すぎない?」
 …陸、聞こえないと思ったのかもしれないけれど、最上位αの耳はいいからね?
「私の隣はそんなに嫌か?」
 いじけそうになりながら問うと
「い、いえ、光栄であります!」
 敬礼までつけて返してくれた。
 ……陸は軍服も似合いそうだ。
 私が上官で、部下の陸を呼び出して……

 コホン
 千葉が咳払いする。不粋な奴め。

 陸が確定したので、くじ引きは一気になごやかになった。陸が恨めしそうに周囲を見る。酷いな陸、私はこんなに喜んでいるのに。
「あ~、ホッとした。手がつるかと思ったわ」
 宮下が手をぷらぷらさせていう。『逆サイド、当たってしまえ!』とでも、陸は思ってそうだな。

 サイドチェストに服を詰め込んで一段落したので、陸を露天風呂に誘う。千葉にも、『陸を湯舟に引き留めるから、スマートウオッチを調べるように』とアイコンタクトを取った。『了解』


「陸はこの別荘初めてだろう、案内するよ。海に面した露天風呂もある。先ずはそこから行くぞ。今年は丁度大潮の時期でそろそろ満潮時刻だから格別だ。」

「インフィニティ風呂!皆も行こう!」
 陸!
 なんて事を言うんだ!

 陸は猪瀬達に恨みでもあるのだろうか。
 陸の裸を見る者がいれば、私はソイツの目を焼くしかない。記憶に留めてしまうならば、脳をいじるしかない。
 君に参加を強いた猪瀬への意趣返しかもしれない。けれどそんな、自分を犠牲にしてまで猪瀬を仕留めなくても……!




 ~~~~~~~~~~~~~~~~
 盛大なブーメラン。
 いや、予言?

『自分を犠牲にしてまで敵を仕留めなくても……!』
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~
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