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この世界のアルファとオメガ
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「お待たせー」
ヴィクトルにうながされベッドに横になると、彼は昨日と同じように封印を確認する。
先程は怖いと言っていたヴィクトルだが、魔封刻印の様子を確認する手つきや眼差しは恐怖に曇っていなかった。
思えば彼はずっとそうだ。
穏やかで満ち足りていたアリスターの魔力も人生も、成人の儀の魔力暴走で両親を殺した時から、嵐のように荒れ狂った。
両親があんな死に方をした後も支えてくれた使用人にも怪我を負わせた。
代々仕えてくれていた者も領地への異動希望を出し、また別の者は逃げるように辞めていって、新しく建てた屋敷に住む人間は自分だけになった。
そして、両親が健在の時は来客で賑やかだった屋敷を訪れるのはヴィクトルだけになってしまった。
名誉職ではあったが魔力の高さで宮廷魔術師の長官を拝命していた父が跡形もなく灰になったことで、可愛がってくれたはずの父の部下達は自分を恐れて魔封刻印を穿つのを押し付けあったのだ。
それを知ったヴィクトルは宰相なのに家庭教師だったからという理由で立候補してくれ、その後も甲斐甲斐しく面倒を見てくれた。
何度も危うい場面を笑っていなしながら、最終的に生殖器にも刻印を施し魔力を完全に封じる方法を編み出してくれた。
だが体内から出せない魔力は膿んで内臓を傷つけ、寿命を縮める。
また封印の管理も昨日のようなリスクが伴う。
ずっと恐れながらもヴィクトルに甘えて来たが、とうとう昨日彼を傷つけた。
「もう、封印は解きたくない。次は貴方を殺すかもしれない。それなら自分が死んだ方がマシだ」
魔力、すなわち戦闘力の高いアルファは、魔物の被害の多いこの世界にとって今だに貴重だ。
だからあんな酷い事故を起こしてもアリスターは父の公爵位を継がされて、処分されないし自死も許されない。
だが魔力過多が原因で早逝するのは許されるだろう。
そういうと困ったようにヴィクトルは頭をかいた。
「僕だって君が寿命を縮めたり、苦しい思いをするのは見たくないんだよ」
「でも、もう、封印を外すのはどうしても嫌だ」
重ねて懇願するとヴィクトルは眉間に寄った皺を揉んだ。
「そうだねぇ……アルファとオメガの授業はおぼえている?」
アリスターは小さく頷いた。ヴィクトルに最初に習った、この世界の常識だ。忘れるはずがない。
この世界には男女の他に魔力性がある。
魔力を持たぬものはベータ。
アルファとオメガは魔力を持つ。
アルファは魔力を自由に操って体外に出すことが出来る。これを使う技が魔術だ。
一方のオメガは魔力を持つが、それを体外に放出できない。
かわりに魔力を胎内に溜め込んで、そこに魔力が満ちると発情してアルファを誘い、魔力を含む精を受け取って子を成し、魔力を次代に繋ぐ。
「研究によってオメガからアルファが分化したと分かった。すなわちアルファもここに未発達の魔力胎蔵器官を持っているということだ」
とん、と下腹部を腹の上から指で突かれてアリスターは呻いた。
「昨日以上に体内の魔力をここに集中させるように意識すれば、オメガがそうしているように魔力を貯め込む事が出来る。理論上はね。魔力をそこに留めておけるようになれば、手足に散って暴走もしにくくなるだろう。その上でオメガのように中で達する事で射精を伴わずに余計な魔力を発散できるはずだ。ただこれは仮説にすぎないし、個人的には封印を外すべき……」
「やだって言っているだろ!」
アリスターは駄々をこねる子供のようにヴィクトルに縋りついた。
「あんな怖いこと、もう無理だ。俺には貴方しか残されてない」
男はアリスターを抱きしめてその耳元で湿度だけは高く、しかし軽薄に謝罪した。
「アリ……すまない。僕が無力なせいで」
「どうすればいいんだ?」
アリスターは首を振ってたずねた。彼に謝罪される謂れはない。
「君は優秀な生徒だから、すぐにできるようになるよ。魔力を動かしてここに寄せて」
腹の上を手でさすられ、アリスターは目を伏せて体内の魔力を意識して寄せる。昨日より少し余裕がある魔力は思ったよりも簡単に操ることができた。
「……これでいい?」
「とても上手。そこに魔力を集めたまま、昨日みたいに、膝を曲げて手を置いて足を開いて」
ヴィクトルに言われるがまま、膝を曲げ掌をそこに置くと、ヴィクトルの手が臀部を掴んで秘所を押し開いた。
「なっ!!」
「なんでもするんだろ。君は魔力を寄せるのに集中」
その響きは教えを請うていた頃と同じで、アリスターは羞恥に震えながらヴィクトルの命令に諾々と従い、己の中で踊る魔力に集中した。
いや、そうしようとした。
「ひっ!! なっ!」
押し開かれた秘所に生暖かい吐息がかかってアリスターの身が震える。
「オメガじゃないから濡れないでしょ。まず少し解して中も綺麗にしないと。いやほんと、普通に封印外して出した方がいいと思うんだけど」
「我慢、する……!」
「嫌だったら、止めるんだよ。無理強いはしていない」
陰嚢がヴィクトルと形のいい鼻で持ち上げられ、会陰から窄まりの外側を探るようにぬるりと舌が這った。アルファの矜持が屈辱を訴えるが、身体は裏腹に歓びに打ち震えた。
「力を抜いて」
陰茎をしごかれながら蕾の中心をつつかれ、舌先に襞を舐られ、膝に小さな爪の痕が残る。
「あっ……そんな、きたな……」
オメガとちがってアルファのそこは性器ではない。蕾を暴かれて舌で愛撫されるのはこのうえなく恥ずかしい。
「汚くないよ。君の身体はどこも綺麗だ。でも君が嫌なら、これを使おう」
全裸のアリスターとは対照的に、いまだにネクタイすら乱していないヴィクトルは身を起こし、ジャケットの裏ポケットから硝子の小瓶を取り出して蓋を開けた。
ヴィクトルにうながされベッドに横になると、彼は昨日と同じように封印を確認する。
先程は怖いと言っていたヴィクトルだが、魔封刻印の様子を確認する手つきや眼差しは恐怖に曇っていなかった。
思えば彼はずっとそうだ。
穏やかで満ち足りていたアリスターの魔力も人生も、成人の儀の魔力暴走で両親を殺した時から、嵐のように荒れ狂った。
両親があんな死に方をした後も支えてくれた使用人にも怪我を負わせた。
代々仕えてくれていた者も領地への異動希望を出し、また別の者は逃げるように辞めていって、新しく建てた屋敷に住む人間は自分だけになった。
そして、両親が健在の時は来客で賑やかだった屋敷を訪れるのはヴィクトルだけになってしまった。
名誉職ではあったが魔力の高さで宮廷魔術師の長官を拝命していた父が跡形もなく灰になったことで、可愛がってくれたはずの父の部下達は自分を恐れて魔封刻印を穿つのを押し付けあったのだ。
それを知ったヴィクトルは宰相なのに家庭教師だったからという理由で立候補してくれ、その後も甲斐甲斐しく面倒を見てくれた。
何度も危うい場面を笑っていなしながら、最終的に生殖器にも刻印を施し魔力を完全に封じる方法を編み出してくれた。
だが体内から出せない魔力は膿んで内臓を傷つけ、寿命を縮める。
また封印の管理も昨日のようなリスクが伴う。
ずっと恐れながらもヴィクトルに甘えて来たが、とうとう昨日彼を傷つけた。
「もう、封印は解きたくない。次は貴方を殺すかもしれない。それなら自分が死んだ方がマシだ」
魔力、すなわち戦闘力の高いアルファは、魔物の被害の多いこの世界にとって今だに貴重だ。
だからあんな酷い事故を起こしてもアリスターは父の公爵位を継がされて、処分されないし自死も許されない。
だが魔力過多が原因で早逝するのは許されるだろう。
そういうと困ったようにヴィクトルは頭をかいた。
「僕だって君が寿命を縮めたり、苦しい思いをするのは見たくないんだよ」
「でも、もう、封印を外すのはどうしても嫌だ」
重ねて懇願するとヴィクトルは眉間に寄った皺を揉んだ。
「そうだねぇ……アルファとオメガの授業はおぼえている?」
アリスターは小さく頷いた。ヴィクトルに最初に習った、この世界の常識だ。忘れるはずがない。
この世界には男女の他に魔力性がある。
魔力を持たぬものはベータ。
アルファとオメガは魔力を持つ。
アルファは魔力を自由に操って体外に出すことが出来る。これを使う技が魔術だ。
一方のオメガは魔力を持つが、それを体外に放出できない。
かわりに魔力を胎内に溜め込んで、そこに魔力が満ちると発情してアルファを誘い、魔力を含む精を受け取って子を成し、魔力を次代に繋ぐ。
「研究によってオメガからアルファが分化したと分かった。すなわちアルファもここに未発達の魔力胎蔵器官を持っているということだ」
とん、と下腹部を腹の上から指で突かれてアリスターは呻いた。
「昨日以上に体内の魔力をここに集中させるように意識すれば、オメガがそうしているように魔力を貯め込む事が出来る。理論上はね。魔力をそこに留めておけるようになれば、手足に散って暴走もしにくくなるだろう。その上でオメガのように中で達する事で射精を伴わずに余計な魔力を発散できるはずだ。ただこれは仮説にすぎないし、個人的には封印を外すべき……」
「やだって言っているだろ!」
アリスターは駄々をこねる子供のようにヴィクトルに縋りついた。
「あんな怖いこと、もう無理だ。俺には貴方しか残されてない」
男はアリスターを抱きしめてその耳元で湿度だけは高く、しかし軽薄に謝罪した。
「アリ……すまない。僕が無力なせいで」
「どうすればいいんだ?」
アリスターは首を振ってたずねた。彼に謝罪される謂れはない。
「君は優秀な生徒だから、すぐにできるようになるよ。魔力を動かしてここに寄せて」
腹の上を手でさすられ、アリスターは目を伏せて体内の魔力を意識して寄せる。昨日より少し余裕がある魔力は思ったよりも簡単に操ることができた。
「……これでいい?」
「とても上手。そこに魔力を集めたまま、昨日みたいに、膝を曲げて手を置いて足を開いて」
ヴィクトルに言われるがまま、膝を曲げ掌をそこに置くと、ヴィクトルの手が臀部を掴んで秘所を押し開いた。
「なっ!!」
「なんでもするんだろ。君は魔力を寄せるのに集中」
その響きは教えを請うていた頃と同じで、アリスターは羞恥に震えながらヴィクトルの命令に諾々と従い、己の中で踊る魔力に集中した。
いや、そうしようとした。
「ひっ!! なっ!」
押し開かれた秘所に生暖かい吐息がかかってアリスターの身が震える。
「オメガじゃないから濡れないでしょ。まず少し解して中も綺麗にしないと。いやほんと、普通に封印外して出した方がいいと思うんだけど」
「我慢、する……!」
「嫌だったら、止めるんだよ。無理強いはしていない」
陰嚢がヴィクトルと形のいい鼻で持ち上げられ、会陰から窄まりの外側を探るようにぬるりと舌が這った。アルファの矜持が屈辱を訴えるが、身体は裏腹に歓びに打ち震えた。
「力を抜いて」
陰茎をしごかれながら蕾の中心をつつかれ、舌先に襞を舐られ、膝に小さな爪の痕が残る。
「あっ……そんな、きたな……」
オメガとちがってアルファのそこは性器ではない。蕾を暴かれて舌で愛撫されるのはこのうえなく恥ずかしい。
「汚くないよ。君の身体はどこも綺麗だ。でも君が嫌なら、これを使おう」
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