真実の番は執愛の枷を破却する

オリーゼ

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決意

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 宿屋になっている2階の部屋を借りた3人は、場所をそちらに移した。
 アリスターの身元証明と後宮の話。どちらも耳目がある場所でできなかったからだ。
「にいちゃん。彼は俺の運命の番のアリスター。事情があってまだ番ってないけど」
「エドからお前マークが運命の番だ、なんとしても再会したいと詰め寄られたぞ。俺はお前しかオメガを知らないが、運命ってのは何人もいるものなのか? いや、そもそもこいつアルファじゃないだろ。こいつからなにも感じない」
 アリスターは王家から支給されている髪色と魔力を隠すための魔道具を身につけていた。
 魔力を封じた上でそれをつけると、ベータの男に見えるようだ。
「あの人の勘違いだ。俺は発情してなかった。昨日、後宮中のオメガが発情していたから、誰かの匂いがついてたんだと思う」
「リーベルか……」
「リーベルの事知ってるの?!」
「従兄弟だからな。だが、その話は後だ。マーク、君は後宮から逃げて来たのか?」
 逡巡を見せたマークはこくり、と小さく頷いた。
「言えなくてごめん……。養子先でつけられた名前はメルクリウス。マークは庶民的でダメなんだって。あの日、後宮の大広間にアルファとオメガが集められて……俺はリーベルからもらった薬で発情しなかったから逃げて来たんだ」
 リーベルのフェロモンは番にしか感じ取れないが、引き換えにオメガの発情を強烈に誘発すると聞いたことがある。
「話がさっぱり分からないんだが? ベータがお前の番の訳を説明しろ」
「すまない、自己紹介がまだだったな」
 戸惑いを浮かべて口を挟んだヒューゴを一瞥し、アリスターは魔道具を外した。
「アリスター・クラレント。クラレント公爵だ。性別も言った方がいいか?」
「こここここっ!!!」
「にいちゃん、鶏みたい」
「公爵閣下だぞ! これが落ち着いていられるか⁉︎   ちゃんと俺にも分かるように説明しろ!」
 悲鳴じみた声を上げたヒューゴにアリスターはマークとの出会いを説明し、マーク——メルクリウスは後宮から逃げ出した経緯をアリスターとヒューゴに説明すると、彼は目に見えて狼狽した。
沈黙ののち、恐々と尋ねられたのは、弟が罪に問われないかだった。
「……公爵閣下、マークは逃亡罪とか不敬罪とかに問われますか?」
「大丈夫だ。後宮は王太子の命で解散された。第一、俺がそんなことをさせない」
 はっきりと言い切るとヒューゴは息をついた。
 その顔から不審者を見る目つきは消えて、ただ弟を案じる気配だけが残っていた。
「……マークをよろしくお願いします。養子にされて縁は切られていますが、大切なたった1人の弟なんです」
「私にとって、マークはこの世界で唯一の存在だ。どれほどの困難があっても、彼を幸せにしてみせる」
 はっきりとマークの兄に向けて発言した瞬間、アリスターの心の奥に溜まった澱がすっと流れて消えていき、マークを幸せにしたいという気持ちがしっかりとした形を持った。
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