真実の番は執愛の枷を破却する

オリーゼ

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兄との再会

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 アリスターはスプーンの先で牛肉の麦酒煮込みを小さくつついた。それだけで肉はほろりと崩れる。
「おっ! うまそ! いただきまーす!」
 向かい合わせで元気にローストビーフを切り分けたマークが大きな一切れを口に放り込み幸せそうに噛み締めている。
 アリスターが自分の煮込みを口に運ばずマークの様子を見つめていると、彼は手を止めてこちらを伺ってきた。
「煮込み苦手だった? 取り替えようか?」
「いや……会ったこともない君の兄上にたかるような形になったのが情けなくて」
「困った時に頼れって言ってたし、平気だって」
「だが……」
「にいちゃん気にしないって。細かいの出来たら払えばいいだけだし。まず食べよ」
 勧められるまま運んだひとさじは口の中で柔らかく解け、旨味をアリスターの舌の上に強く残す。自覚もなかったがここまで歩いて相当腹が空いていたらしく、二口目のスプーンが皿に伸びた。
「……おいしい」
「昨日食べたパイも美味しかったんだよね。煮込み、一口もらっていい?」
 皿を差し出すとマークは持っていたフォークで肉を割って口に運んだ。
「めっちゃ美味い! 毎日通ってもいいぐらい。ローストビーフも美味しいよ」
 一口大に切られてフォークで刺された桜色の牛肉がアリスターの前に差し出される。
「はい、一口もらったお礼」
 どくんと心臓が高鳴り、多幸感が押し寄せる。番となにかを分け合う行為はこれほどまでに心を湧き立たせるのか。
 あーん、と言われて口を開けると、肉をそっと、いや割と雑に口の中に押し込まれた。
「はい、よく噛んで食べて」
 言われた通りにすると喜びが活力となって体を満たしていく。
「美味しいだろ」
「ああ。お前が食べさせてくれる食事は美味いな」
「いやいや、ここの飯が美味いんだって。でももうあの餌を食べよって思えないだろ?」
「毎日来よう。ここまで散歩して昼を食べたら体力が戻ると思う」
 ここまで歩くことがあれほどきつかったことすら吹っ飛び、そう言うとマークは朗らかな笑顔を見せた。
「いいね!」
 二人で和やかに食事を済ませた頃合いを見計らったのように、赤頭巾亭のドアが開いて中央騎士団の制服を着た男達が入ってくる。
 その中の一人、ストロベリーブロンドの男がこちらに視線を止めた。
「マーク?」
「にいちゃん」
 あまり多くない髪の色だ。
 その視線の主がマークの言っていた兄だと推測がついた。
 面差しは少し似ているがマークよりも精悍な印象がある。
 身長はアリスターと同じぐらいだが、身体能力系アルファらしさのある厚みのある身体をしていて、魔力はさほど感じられない。
「マーク!! 無事だったか! 話を聞いて心配してたんだ!」
 二人はお互いに駆け寄って強く抱きしめ合った。
「顔を見せてくれ!」
 彼がマークの兄だと分かっていても気が沈む。
 他のアルファに触れられたくない。まだ頸を噛んでいないのだ、と考えてしまう。
「子爵様から後宮に入れられたと聞いたが……」
「後宮??」
 聞き捨てならない言葉にアリスターは立ち上がった。
「マーク、後宮って?!  どういうことだ!」
 その華奢な肩を思わず掴むと、マークは気まずそうに目を伏せた。
「ん? この男は誰だ? マーク。ナンパでもされたか? ベータの男のようだが」
 突然割り込んだアリスターを不審者を見る表情でマークの兄ヒューゴは睨みつけた。
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