僕の可愛いお嬢様が魔法学校へ入学するようです

つかさ

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お嬢様

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はい、到着しました。いつもの事ながら、風で髪がぼさぼさです。僕の髪は人より細いらしくてすぐ絡まるんです。昇降床に風よけがあると助かるんですけどね。
お嬢様曰く、そんなことしたら使い勝手が悪くなるから却下。だそうです。うちのお嬢様はメイドに少々厳しすぎませんか?
ぼやいていても始まりませんので、いつもの通りに髪を直してドアをノック。
返事はありません。これもいつも通り。ですのでそのまま扉をかけて中へ入ります。
いつも不思議なんですけど、どうして前の日の朝に掃除して見えていた床が一晩で本や書類で埋もれるんでしょうね?
「お嬢様」
本と書類をかき分けながらベッドへ向かいます。本棚を増やしても焼け石に水でしょうね。本当、どうしましょうか。
ベッドですやすやとお休みになっているお嬢様の肩を揺らします。むずがるように寝返りを打ち、銀色の髪が流れます。白い肌と相まって作り物のようにも感じてしまいます。お嬢様はほとんど外に出ることがないのですが、不思議と蒼白い感じではなく雪のように真っ白な輝きさえ宿したような肌をしています。いつまでも眺めていられるんですが、あとのこともありますのでここは我慢です。
「お嬢様、起きてください。朝のお支度の時間です」
「……ん……、おはようマルク」
少し眠そうな目でお嬢様は僕を見ます。少し頭が揺れています。可愛い。
「おはようございます」
「髪結ってくれる?」
「はい、それでは失礼しますね」
髪に指を通し整えていきます。どこか気持ちよさそうにお嬢様は目を閉じています。

お嬢様、エルミナ・ネフィリア。僕のお嬢様であり、塔の今代の主でもあります。塔の主とはどういうものかと言えば、読んで字のごとく塔の一番偉い責任者であり、ひいては独立自治区フェルノの関係者なのです。本来であれば権力とは関わるべきではないのでしょうけれど、塔の存在によって自治区は成り立っていますのである程度の意思統一をしておかないと自治区を囲むように国境線を広げているいくつもの国に付け入る隙を与えてしまいます。
そんな重い責任を負うような地位に何故僕と同い年のお嬢様が就いているか疑問に思う方をいるでしょう。
塔主は前代の塔主の指名により決まります。正確には塔主が継承する水晶柱によって選ばれます。ここ何代かは血縁者が選ばれることが殆どだったと聞きますし、そうでない場合でも辿っていけば姫の血筋に行きつくそうですから適正というものがかつての王の血筋と関係があるのかもしれません。
お嬢様を見ているとそう思います。あれはまともな人間がする作業ではありません。ただただ文字を追い、ページを捲り、その内容を頭に叩き込む。その合間に自治区の協議会から上がってくる議題に応じ、対価の知識の価値を見定め……、常に途切れることなくこの繰り返しです。
扱うものが秘密にしたい事柄になる場合が多い都合上、関わる人数は少ない方が良い、そんな理由があるにせよ普通の人が続けられるものではありません。
話が逸れました。ついついお嬢様はすごいと言葉にしてしまいたくなって。
先代はお嬢様のお母さまだったのですが、もともと体が弱かったこともあり4年前に亡くなっています。それ以降お嬢様が今代の塔主を担っているのです。本来であれば代替わりまでに自治区内で生活を送る猶予もあったはずなのですが、お嬢様はほんの数年だけしか自治区で過ごしたことがありません。その数年がなければ僕はお嬢様に拾われることもなくこうやって一緒に過ごすことも出来ていなかったのですから、わずかでもその時間があったことに感謝しましょう。
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