実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―53

ダメな安倍晴明53

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   二

 依頼がなくとも、依頼を探してなくとも安倍兄弟は忙しい。今日は賀茂忠行のもとでの修行だった。
 ひと通り終わったところで忠行のいつもの厚意で夕餉が出る。
 この席には調子が悪いといって晴明は出ていない。西対で賀茂保憲の夜具を借りて仮眠を取っていた。
「あやつが食を抜くとはことは深刻やもしれぬなあ」
 忠行が椀を片手にしみじみと告げる。
「師のあのような折はありましたでしょうや」
 そこで晴足は思い切ってたずねる。
「祓いの仕事は人の闇を見つめることになる、大なり小なり人間というものが忌むものべきものに思えるものだ」
「なるほど」
 やはり年経た陰陽師の言葉には説得力があった。
「師はいかにして克服なされた」
「刻が過ぎるのを待つしかあるまいなあ」
 晴秀の核心を突いた問いに、忠行は申し訳なさそうな顔で応じる。
「あとはなにか気紛れになることでもするしかあるまい。遊行、賭け事などな」
「保憲殿も覚えがおいでか」
 保憲に晴俊が楽しげに問いかけた。
 まあな、と保憲はうなずく。
「晴篤、食べるか寝るかどちらかにしろ」
 そこに、舟を漕ぐ晴足へ忠行からの叱声た飛んだ。が、寝ながら食べるという器用は行為は止まらない。それを見て、忠行も諦めてらしく苦笑を浮かべた。
「今度、晴明のことを賭場に連れて行くか」
「まあ、何もせぬで見守るよりはなあ」
 晴俊の言葉に晴足は微妙な表情で首肯する。
「ここに来るのも、手前の見たところ発散にはなっておるようだが」
 保憲の言葉に、兄弟たちは顔を見合わせた。
「そういえば」
「我らには当たり前だから気づかかったが」
 晴秀の言葉を晴俊が継いだ。さらに、
「ここにくると、邸におるよりいきいきしているようにも見える」
 晴足が声を発した。
「わしとしては何より嬉しいぞ」
 忠行が目を細めてみせる。
 その反応に晴足は微笑を浮かべた。
「いっそ、当家で晴明のことは預かってもらいましょうか」
「それもよかろう」
 晴足の軽口に忠行も冗談で応じる。
「やれやれ、清々するな」
「これ、口が過ぎる」
 悪態をつく晴秀を晴俊が叱った。
 そして、相変わらず晴篤は居眠りをしている。
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