平安山岳冒険譚――平将門の死闘(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 結果は、全滅、だ。頼慶以外、生きていない。この段になってやっと頼慶は声を上げて泣いた。
 やがて、涙が枯れた。この頃になると、頼慶の覚悟は決まっていた。歩いて一日ほどの親戚の家を頼るのだ。旅の必要な物を家財から揃えて頼慶は歩き出す。
「いかがか」
 という声で頼慶は我に返った。
「うむ」
 頼慶はとりあえず唸ってみせる。行者姿の自分にはまわりの人間はつい法師を相手にするのと同じような態度になりがちなのを承知の上での態度だ。
「刺客と距離を取っている衆の正体は知れたのか」
「む、それは」
「いまだ定かではないのだな」
 男の語気が弱まったのをのがさず頼慶は問いかけた。
「そ、その通りだ」
 男は眉根を寄せてうなずく。
「大食が目代を利用したのもくだんの衆にこちらの存在を知れれぬようにするためであろう。なれば、我らも軽挙に及べぬ」
 頼慶は真剣な顔になって告げた。半分は本音で、半分は「将門を手にかけるようなことはしたくない」という思いがそう発言させた。甘いだろうな、わしは――。

 その頃、都では。
 清涼殿の端に立つ藤原忠平が地面の一角に生えた彼岸花を愛でていた。側らには子息の実頼の姿がある。
「小次郎は無事にもどって参るでおじゃろうか」
 まだ権力の毒に染まっていない実頼はどこか心配げな顔で忠平にたずねた。
 それに父は眉をひそめる。
 こやつにも権勢を握る者の心得をそろそろ叩き込まねばなるまい――。
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