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「なんでもない」
「なんでもないことはないだろう」
頼慶が否定するも即座に大食が粘っこい口調で絡んでくる。
が、そんなやり取りが中断させられる出来事が起こった。
彼らのもとに一匹の犬が駆け寄ってきたのだ。
「来たぞ」「いずかただ」
声が飛び交う中、頼慶が大股に歩み寄り首元を確かめた。結んであった文を解いて開く。
頼慶が誤魔化すのを恐れてか駆け寄ってきた荒嶋もこちらの手元を覗き込んだ。
「「巽だ」」
頼慶と荒嶋の声が重なる。
頼慶は文を荒嶋に押し付けその場から歩き出した。
「おまえ、いずこへ参る」
「足止めをいたし、“策”を万全のものとする」
「死ぬことになるぞ」
「そうかもしれぬな」
どこか疑い混じりの声に頼慶はふり返って笑った。そのこちらの表情を見たとたん、荒嶋が急に顔つきをあらためた。すでに生きる、死ぬ、といった心持ちではこの場に立っていない頼慶の“本気”を見抜いたためだろう。
山を下りていく途中、頼慶は大量の薪が斜面を一周しているのを目の当たりにした。そこでは、上から知らせを受けたか彼らがそこに火をつけていた。
雪の半ば固まった物の上で火が赤々と燃え上がりはじめている。
やがて灯りが完全に霧の中に消えた。三〇丈ほど下ったところで足を止める。
最期になるやもしれない戦いに身を投じているせいか、頼慶は養父の最期が網膜によみがえった。
眠っていたところ、ふと気配を感じて目を覚ます。小屋から養父が出て行こうとするところだった。だが、こちらが起きたことに気づくと笑みを浮かべて妻やほかの子どもを起こさないように頼慶のもとに来た。
「なんでもないことはないだろう」
頼慶が否定するも即座に大食が粘っこい口調で絡んでくる。
が、そんなやり取りが中断させられる出来事が起こった。
彼らのもとに一匹の犬が駆け寄ってきたのだ。
「来たぞ」「いずかただ」
声が飛び交う中、頼慶が大股に歩み寄り首元を確かめた。結んであった文を解いて開く。
頼慶が誤魔化すのを恐れてか駆け寄ってきた荒嶋もこちらの手元を覗き込んだ。
「「巽だ」」
頼慶と荒嶋の声が重なる。
頼慶は文を荒嶋に押し付けその場から歩き出した。
「おまえ、いずこへ参る」
「足止めをいたし、“策”を万全のものとする」
「死ぬことになるぞ」
「そうかもしれぬな」
どこか疑い混じりの声に頼慶はふり返って笑った。そのこちらの表情を見たとたん、荒嶋が急に顔つきをあらためた。すでに生きる、死ぬ、といった心持ちではこの場に立っていない頼慶の“本気”を見抜いたためだろう。
山を下りていく途中、頼慶は大量の薪が斜面を一周しているのを目の当たりにした。そこでは、上から知らせを受けたか彼らがそこに火をつけていた。
雪の半ば固まった物の上で火が赤々と燃え上がりはじめている。
やがて灯りが完全に霧の中に消えた。三〇丈ほど下ったところで足を止める。
最期になるやもしれない戦いに身を投じているせいか、頼慶は養父の最期が網膜によみがえった。
眠っていたところ、ふと気配を感じて目を覚ます。小屋から養父が出て行こうとするところだった。だが、こちらが起きたことに気づくと笑みを浮かべて妻やほかの子どもを起こさないように頼慶のもとに来た。
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