陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「獣が見つからなくときの状況を真似ようと思う。落葉、草、岩などの上を歩けば足跡は残りにくい。低木の深い茂みを抜けるときは、低木を優しく前方に押しのけてそこをすり抜け、それからのもとの場所にもどす」
「ほう、忍術の教えにもかなっている」
 ふたたび伊平治が感心した声をもらす。
「それに音を殺す必要がある。人数が少なくとも話し声はまず三町は先に届く。発砲音に至っては三十町先には聞こえる」
「気をつけねばなりませぬな」
 小次郎が栄助の言葉に深々とうなずいた。他の顔ぶれも同じような反応を示す。
「向後、三日ののちには大名行列に追いつく。それを追い越し、あっしらは待ち伏せをする」
「つまり、早ければ四日ののちには殿さまを仕物にかけるんだな」
 猪助の言葉に、やはり彼らにとっても大仕事なのだろう助左衛門が険しい表情でうなずいた。
「頼みやしたぜ、栄助」
 猪助の発言に、栄助はしばらく間を空けて、
「わかった」
 と小さく顎を引いた。

    四

 四日後、栄助たちは大名行列を追い抜いた。列を横切る訳にはいかないから道なき場所を進んでそれなりの疲弊を強いられた。
 翌日からは仲間は先行し、栄助だけが物陰に隠れて大名行列を待って観察するという手順を踏んだ。
 栄助は大名行列のことなどこれまで生きていて考えなかったし、そもそも村をほとんど出たことがないから見るのも初めてだった。
 そこで初めて知ったのは、行列が常に組まれているという訳ではないということだ。
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