信長、秀吉に勝った陰陽師――五色が描く世界の果て(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 この日、京の一隅にある寺の本堂で、複数の影があつまり車座になっていた。
 見る者が見れば目を剥いたか、よろこんで主家への注進に及んだだろう。なぜなら、その面子が内裏の主だった者たちだったからだ。まさしく謀議のなされる場、それ以外のなにものだというのか。
 しかし、その場に呼ばれた者のひとりとして久脩は怪訝な思いを抱いていた。
 近衛前久などの公家は分かる。だが、陰陽道を牛耳るとはいっても結句のところ、かの安倍晴明といった先祖ですら官位は朝廷においては決して高くない一族の自分が呼ばれていることがいぶかしく思えた。ちなみに安倍晴明は陰陽師としては高位の従四位、その息子の吉平も従四位上で人生を終えている、公卿には手が届いていないのだ。
 一の人(摂政・関白)ですらたいした力を持たない時世ではあるが、だからこそ余計にみずからがこの場にいる意味を久脩はつかみかねる。こちなど用立つことなどなかろうに――。
 源平の頃から、弓矢、太刀打ちこそがことを決するようになったのだ。晴明の子孫だ、陰陽道だといってみたところで虚しい。
 しかも――久脩は目だけを動かして脇へと視線を動かした。
 そこにいるのは勘解由小路在昌(かげゆこうじあきまさ)、もうひとつの陰陽道の大家たる家の者だ。ただし、法華宗との悶着から京を捨てたはずの人間だった。陰陽師の家の者の癖に相変わらず異国(とつくに)の神の教えに染まっているらしく、例の十字の飾りが首元にさがっている。それが原因で父とも揉めたとか揉めていない、とか。
 久脩の知る在昌はとにかく好奇心の強い男で、陰陽道のための天文の知識をより深めるために伴天連(バテレン)に近づきついには入信するに至ったのだ。
 自分と同じく、近衛前久などに比べれば、いや久脩以上に見劣りする人物だった。なにしろ、在昌は昇殿の許されない地下の身、つまりは貴族とすら認められていない。
 そんな者をあつめて近衛殿はなにを企んでおられる――。
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