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チャプタ―100

チャプタ―100

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 市右衛門の家臣たちは、人数で圧倒的に有利に立つ透波を相手に果敢に戦った。
 閃、清次郎は眼前の敵の一人を斬る。
 その攻撃で、同時に近くにいた透波を威圧――左の方へ追いやった。
 平兵衛と右京亮も冴えた業前を見せ、次々と敵を屠る。それを八九郎が手裏剣で援護した。
 ――連携した動きで、“魚群を追い込むように”斬撃と剣気によって敵勢を追い込んだ。
 宮本武蔵でなくとも、慧眼を持った者が修羅場を潜り抜ければ戦場の鉄則というものに気づく。あとはそれを書き残すかどうかだ。
 飛来する手裏剣を体捌きで避け、剣身でもって防ぐ。
 死ぬことが怖くない――ために、平兵衛たちは“ぎりぎりのところ”まで踏み込み、迫り、戦闘において優位に立つことができた。
 透波の数も半数ほどに減りつつある。
 これなら、敵を全滅させることもできよう――そう思えたところに、黒衣の屈強な男が姿を現した。
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