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チャプタ―101

チャプタ―101

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「伴天連か」
 回国修行で各地をまわっていた清次郎は、実際に渠らを目の当たりにしたこともあった。
 もっとも、その教えに帰依しようとも思わなかったが。
 伴天連は一見、慈愛に満ちている。
 だが、きゃつらは傲慢だ――。
 己らの信じる“神”のみが本物で、他の教えを信じる者は間違った道を歩む哀れな人々……そんなふうに見ている。
 なにもそういった人間は珍しくない。
 この世には掃いて捨てるほどいる。
 だが、宗教――神という絶対的権威のもとに抱いた傲慢は他に類を見ない。これらの事実はは後世も宗教対立を招く要因となっている。
 ――闖入者の出現に、つかの間攻防が止んで静寂が下りた。
 なにかがおかしい――清次郎たちは伴天連のまとう異様な気配を感じ取っている。
 禍々しい……、宗教者だというのが信じられないくらいに。
 一度、清次郎が黄泉で見た“モノたち”と雰囲気が酷似していた。
「うぬ、何奴だ!」
 平兵衛がそれでも怯まずに詰問する。
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