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チャプタ―106

チャプタ―106

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「行け」マルコは身ぶりで渠らに指示を飛ばした。
 途端、一切の躊躇なく透波たちはこの国の剣としては異質な、反りのない忍び刀を抜き放ち突撃する。
 銀光が流星雨の夜のごとく無数に煌めいた。
 そして、それを彩るように血煙が吹く。
 いい、国だ――。
 こんな忠実な手駒が数多く手に入る乱世、マルコのような人間にとっては理想的な環境だ。
 欧州の旅路で出会った時代遅れの騎士ゲオルギオスという手勢もいるが、やはり一人ではなにかと不自由だ。
 しかも、マルコと同じく戦うことを――ただし相手はあくまで剣士、戦士が望ましいらしい――至上の喜びとするため、みずからの戦いを優先する傾向がある。こちらにつき従うのは、あくまで強敵と巡りあえるからだ。
「我らの試みに引きたまわざれ――」
 あと少しで祓除が完成する――寸前、風切り音がマルコに迫った。
「……ッ」
 痛みが肩から噴く。目だけを動かして確かめると、一本の棒手裏剣が肩口に突き刺さっていた。
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