笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

牛馬走

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チャプタ―107

チャプタ―107

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 刹那、渠は身を翻してその場から逃げ出す。
 一つ、二つと宙を飛翔して迫る手裏剣を木立の間に紛れることで辛うじて防いだ。
 後に残した透波たちのことは一顧だにせず疾走する――。
 恐怖、はない。
 ただ、惜しかった。
 ここで死んでしまえば、この先に味わえるかもしれない戦いの愉悦を感じることができない。
 だから、躊躇せずに遁走に走った。マルコはどこまでも自分本位な男だ。

   四

 島津兵庫頭が本拠とする飯野の城から離れた山の一角にある廃寺――打ち捨てられた建物の骸のうちに、騎士ゲオルギウスは土足で踏み込んだ。
 元より、この国の作法になど従う渠ではないが、全体的に朽ちた廃寺は、天井、壁、床を問わず穴だらけで外とたいした違いはない。
 ――奥には、鼠染めの装束の人物と、床に寝かせられた者の姿があった。
 前者はゲオルギウスが協力している祓魔師(エクソシスト)、キリスト教に入信した“王”大友宗麟が貸し与えた諜者兼暗殺者“透波”だ。
 そして、後者は恐らくは拉致してきた敵の一人だろう。
 それにしても――とゲオルギウスは考えた。
 ……斬りたい。
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