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チャプタ―128

チャプタ―128

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 義久はこれを助けるべく出陣した。
 十一月一日に高城南方の佐土原に陣(じん)を構え、十一日には切原坂に伏兵をひそませ、大友勢五〇〇人を討ち取るに至る。
 ――義久着陣により、両軍の総力をあげた衝突はもはや目前にせまっていた。

   七

 だが、大友陣営では田北鎮周(たきたしげかね)ら即戦派と、佐伯惟教(さえきこれのり)ら自重派に意見がわかれ、軍としての統一した意思を欠いていた。
 軍議の末、ひとまず自重派の意見が容れられたが、鎮周ら即戦派は翌日早朝、勝手に兵を動かし、高城へ攻撃をしかけてしまった。

 佐土原に陣を構える島津義久のもとに、高城が攻撃された、という報がもたらされた。
「いかが思案する?」
 義久は床机に座った姿勢で、かたわらの肝属兼盛に目を向けた。
「――大友方は意気軒昂、ということでござろうか?」
「違うな」
 気を遣った口調の兼盛の言葉を、義久は笑みをふくんだ声で否定する。
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