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「おいしいね、お頭」
「馬二ぃ、人の耳のあるところでその呼び方をするなっていってるだろう」
口から米粒を飛ばしながらしゃべる馬二を太蔵は注意する。が、その視線はほかの場所に向けられていた。
「あなたも止めてください」
通りがかった小女の尻を太蔵が顔をにやけさせながらなでようとするのを小平次は腕をとらえ軽く抓(つね)って止める。
「ひでえや、これが生き甲斐だってのに」
「それでは今すぐ出家しなさい」
「あ、今遠まわしに死ねっていいなさったね、小の字」
太蔵の軽口に小平次も付き合った。ときに鬱陶しくなることもあるが、なんだかんだで小平次はこういったやり取りが嫌いではない。渡り忍びの仕事で収入を得るようになって余裕ができたため、示し合わせて男三人で煮売り酒屋に夕餉を食べに来ていた。
が、今日は心から楽しむことはできていなかった。それが馬二に真っ先につたわったのだろう。
「どうしたの? ご飯、おいしくないの?」
「違います」
「じゃあ、うんこ?」
「違います」
「じゃあ、おしっ――」
「それも違いますから。それと大きな声でそういうことは仰らないでください」
大声を出す馬二に苦笑し小平次は苦笑を浮かべた。
「おいしいね、お頭」
「馬二ぃ、人の耳のあるところでその呼び方をするなっていってるだろう」
口から米粒を飛ばしながらしゃべる馬二を太蔵は注意する。が、その視線はほかの場所に向けられていた。
「あなたも止めてください」
通りがかった小女の尻を太蔵が顔をにやけさせながらなでようとするのを小平次は腕をとらえ軽く抓(つね)って止める。
「ひでえや、これが生き甲斐だってのに」
「それでは今すぐ出家しなさい」
「あ、今遠まわしに死ねっていいなさったね、小の字」
太蔵の軽口に小平次も付き合った。ときに鬱陶しくなることもあるが、なんだかんだで小平次はこういったやり取りが嫌いではない。渡り忍びの仕事で収入を得るようになって余裕ができたため、示し合わせて男三人で煮売り酒屋に夕餉を食べに来ていた。
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