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「その都度、雇主を変えて忍び働きをする、そんな忍びのことだ。依頼主は町人から武士、百姓まで選ばぬ」
「さような節操のない真似」
「節操云々以前に天道に恥ずべき所業に手を染めておるではないか我らは」
ふたたび嘲笑を浴びせようとした半平に定二は半ば怒鳴りつけるように告げる。
「その生業は今より儲かるのか?」「おい」
興味を示す忠次を半平は睨みつけた。
「今ほどは無理であろう。したが、今より心安う過ごすことは叶う」
定二の返答に、忠次は思案するようなようすを見せる。
「おぬし、裏切るつもりか?」
弁造は忠次に詰問の言葉を浴びせた。
「元より、もはや我らは家中の朋輩ではない、紐帯いたすもいたさぬも各々の勝手」
忠次は負けない語気で応じるや、
「承知した、おぬしの話に拙者は乗る」
と定二に向かって言い放つ。
「御両所はいかがする?」
「知れたこと、こんな美味い商売を止められるか」「誰ぞの存念にふりまわされるのは御免だ」
定二の問いかけに半平は歪んだ笑みで応じた。視線を向けられ、弁造もまた「否」とこたえる。
「されば、運命は決した」
定二が告げたとたん、屋根の軒先から複数の影が姿を現した。電光石火、床に降り立つや弁造たちに殺到してくる。かすかな動揺から定次にも予想外の出来事であったことを弁造は瞬時に悟った。
が、ある意味、定二には都合がよかった。襲撃に乗じて逃げることが可能になる。仲間への最後の情で、小平次たちの同道は断って単独で弁造たちのもとを訪れていたのだ。もっとも、その行為には内応した者が出たという揺さぶりをかける、そんな忍びとしての計算も存在したことも事実だった。
「さような節操のない真似」
「節操云々以前に天道に恥ずべき所業に手を染めておるではないか我らは」
ふたたび嘲笑を浴びせようとした半平に定二は半ば怒鳴りつけるように告げる。
「その生業は今より儲かるのか?」「おい」
興味を示す忠次を半平は睨みつけた。
「今ほどは無理であろう。したが、今より心安う過ごすことは叶う」
定二の返答に、忠次は思案するようなようすを見せる。
「おぬし、裏切るつもりか?」
弁造は忠次に詰問の言葉を浴びせた。
「元より、もはや我らは家中の朋輩ではない、紐帯いたすもいたさぬも各々の勝手」
忠次は負けない語気で応じるや、
「承知した、おぬしの話に拙者は乗る」
と定二に向かって言い放つ。
「御両所はいかがする?」
「知れたこと、こんな美味い商売を止められるか」「誰ぞの存念にふりまわされるのは御免だ」
定二の問いかけに半平は歪んだ笑みで応じた。視線を向けられ、弁造もまた「否」とこたえる。
「されば、運命は決した」
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が、ある意味、定二には都合がよかった。襲撃に乗じて逃げることが可能になる。仲間への最後の情で、小平次たちの同道は断って単独で弁造たちのもとを訪れていたのだ。もっとも、その行為には内応した者が出たという揺さぶりをかける、そんな忍びとしての計算も存在したことも事実だった。
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