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乳切木の分銅を小平次は回避する。
変幻自在の動きで、弁造は剣の間合いを殺していた。それは視界の端に映る吟の敵、半平も同じだ。
小手に眉間に分銅が襲いかかり、牽制の一閃すら払い受けられる。
村の番太の棒を利用して作り直したのか、断ち切った長さから得物は修復されていた。
「どうした、どうした、我らを退治するのであろうが」
御庭番の登場にあせっているのを見越して弁造が煽ってくる。
視界の端に御庭番の姿を小平次は確認した。どちらにしろ庄右衛門は同門――そう自分に言い聞かせ小平次は迷いを断ち切る。
相手を距離が離れたところで小太刀を抜き放ち二刀を構えた。小太刀を腰のあたりで水平に近く、大刀は八相を傾がせたような形にとる。
「苦し紛れの両刀遣いか、くだらぬ」
弁造が嘲笑を浮かべ鎖を旋回させた。
閃、小太刀が鋭くそれを打ち払う。高い身体操作のもとの一撃のため両手でふるうのと変わらない力がそこにはこもっていた。二刀で戦う者は大力の者というのは兵法を知らぬ者の戯言でしかない。
肉薄する小平次に顔を引きつらせながら弁造が乳切木の本体をぶつけてくる。
早――小平次は大小を交差させていた。刃のあいだを棒はすべる。結果、小平次は相手にあと一歩の間合いまでせまっていた。
構えを崩しざまに片方の大刀を横に払う。その動きで相手の得物が脇にそれた。
剣光一閃、脇差が相手の腹を裂く。
浅い――致命傷にはならなかったと小平次は瞬時に悟った。
乳切木の分銅を小平次は回避する。
変幻自在の動きで、弁造は剣の間合いを殺していた。それは視界の端に映る吟の敵、半平も同じだ。
小手に眉間に分銅が襲いかかり、牽制の一閃すら払い受けられる。
村の番太の棒を利用して作り直したのか、断ち切った長さから得物は修復されていた。
「どうした、どうした、我らを退治するのであろうが」
御庭番の登場にあせっているのを見越して弁造が煽ってくる。
視界の端に御庭番の姿を小平次は確認した。どちらにしろ庄右衛門は同門――そう自分に言い聞かせ小平次は迷いを断ち切る。
相手を距離が離れたところで小太刀を抜き放ち二刀を構えた。小太刀を腰のあたりで水平に近く、大刀は八相を傾がせたような形にとる。
「苦し紛れの両刀遣いか、くだらぬ」
弁造が嘲笑を浮かべ鎖を旋回させた。
閃、小太刀が鋭くそれを打ち払う。高い身体操作のもとの一撃のため両手でふるうのと変わらない力がそこにはこもっていた。二刀で戦う者は大力の者というのは兵法を知らぬ者の戯言でしかない。
肉薄する小平次に顔を引きつらせながら弁造が乳切木の本体をぶつけてくる。
早――小平次は大小を交差させていた。刃のあいだを棒はすべる。結果、小平次は相手にあと一歩の間合いまでせまっていた。
構えを崩しざまに片方の大刀を横に払う。その動きで相手の得物が脇にそれた。
剣光一閃、脇差が相手の腹を裂く。
浅い――致命傷にはならなかったと小平次は瞬時に悟った。
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