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そんな彼への皮肉な思いも今の了斎は感じない。ただただ重苦しい思いだけを抱いていた。
瞬間、感情が消し飛ぶ。忍びとしての性(さが)が発動した。殺気を感知したのだ。
れんのあからさまなそれではなく、押し殺したものだった。一瞬吹いたかすかな風のごとくあるかどうか感知しがたい、だからこそ難敵のそれだと悟ることのできるものだった。
刹那の間に了斎はれんと視線を交わす。同時に意思を伝え合った。
「敵でございます」
叫びながら、了斎はアルメイダを押し倒す。並行してれんは大内輝弘に飛びかかった。
間髪いれず床から二本の刀身がはえる。それぞれ狙い違わずアルメイダと大内輝弘が元居た場所をつらぬいていた。
殺気をとらえてからここまで刹那の出来事だった。
了斎は背筋が寒くなるのを感じる。あとわずかでアルメイダ、大内輝弘という立場は異なるが用心ふたりを殺されるところだった。
が、危難は去っていない。襲撃者があきらめるか、加勢が駆けつけなければ了斎たちでどうにかしなければならない。
戛(かつ)――失敗ったそのとたん、障子を突き破って棒手裏剣がほぼ同時に複数飛び込んできた。
とっさに了斎は大内輝弘が取り落とした鉄砲を拾いあげていた。硬質な音が動作と同時にひびく。手裏剣を鉄砲でもって防いだのだ。
刹那、床からふたたびの電光石火の刺突。
ももをかすかに裂かれながらも了斎はかろうじて避けた。
次の瞬間、銃声がなりひびく。アルメイダが刃のはえた位置を頼りに床下に向けて銃丸を放ったのだ。
同様の行動を、れんを狙った相手に次郎丸が実行した。
弾を受けたらしく、床にはえた刃が不自然な動きを見せる。そして沈黙。
一方で、部屋の周辺は騒がしくなった。
「銃声が聞こえてぞ」「賊か」
屋敷の者が駆けつけてくる気配がする。他方で、棒手裏剣の第二陣はない。どうやら、残りの敵は退いたらしい。
了斎は安堵の息をつきながら、
「みなの者、大事はないか」
とたずねる。
瞬間、感情が消し飛ぶ。忍びとしての性(さが)が発動した。殺気を感知したのだ。
れんのあからさまなそれではなく、押し殺したものだった。一瞬吹いたかすかな風のごとくあるかどうか感知しがたい、だからこそ難敵のそれだと悟ることのできるものだった。
刹那の間に了斎はれんと視線を交わす。同時に意思を伝え合った。
「敵でございます」
叫びながら、了斎はアルメイダを押し倒す。並行してれんは大内輝弘に飛びかかった。
間髪いれず床から二本の刀身がはえる。それぞれ狙い違わずアルメイダと大内輝弘が元居た場所をつらぬいていた。
殺気をとらえてからここまで刹那の出来事だった。
了斎は背筋が寒くなるのを感じる。あとわずかでアルメイダ、大内輝弘という立場は異なるが用心ふたりを殺されるところだった。
が、危難は去っていない。襲撃者があきらめるか、加勢が駆けつけなければ了斎たちでどうにかしなければならない。
戛(かつ)――失敗ったそのとたん、障子を突き破って棒手裏剣がほぼ同時に複数飛び込んできた。
とっさに了斎は大内輝弘が取り落とした鉄砲を拾いあげていた。硬質な音が動作と同時にひびく。手裏剣を鉄砲でもって防いだのだ。
刹那、床からふたたびの電光石火の刺突。
ももをかすかに裂かれながらも了斎はかろうじて避けた。
次の瞬間、銃声がなりひびく。アルメイダが刃のはえた位置を頼りに床下に向けて銃丸を放ったのだ。
同様の行動を、れんを狙った相手に次郎丸が実行した。
弾を受けたらしく、床にはえた刃が不自然な動きを見せる。そして沈黙。
一方で、部屋の周辺は騒がしくなった。
「銃声が聞こえてぞ」「賊か」
屋敷の者が駆けつけてくる気配がする。他方で、棒手裏剣の第二陣はない。どうやら、残りの敵は退いたらしい。
了斎は安堵の息をつきながら、
「みなの者、大事はないか」
とたずねる。
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