忍び切支丹ロレンソ了斎――大友宗麟VS毛利元就(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 賭けに勝った者は興奮したところに酒が入り口がしごく軽くなる。そこに、「ところで、聞いたか」と“本題”を持ち出すのだ。
 むろん相手は「なにがだ」と問い返す。あとは簡単だ。「南蛮人が陣中におるとかいう話だが」
 そうやって、「知っている」という返答を求めていた。
 昨日はすべて空振りに終わっている。話に聞いてはいるがくわしい居場所は知らないという返事が返ってくるか、まったく知らないかのどちらかだった。
 されど、城のなかならばともかく行軍の途上で常に人と隠しとおすことはできぬはず――。
 なかば己に言い聞かせて了斎は地道に内情を探っていた。
 あせりがないといえば嘘になる。
 そもそもアルメイダが無事でいるのかという点も気がかりであり、れんはともかく次郎丸がひそかに行軍にはりつきつづける体力が保(も)つのかということも案じられた。
 販女として陣中に出現してはれんも話を聞き込んでいるはずだがあちらもいまだに収穫はない、と定期的な顔合わせで知らされている。
 といっても、連日あらかさまに言葉を交わせば毛利の忍びに目をつけられる危険があるため、接触はすれ違うだけにとどめなにかアルメイダにつながる話を耳にしたのなら咳払いをするという取り決めをしていた。
「おお、南蛮人か。知っておるぞ。なにしろ、今宵寝ずの番で警固することになっておるからのお」
 酒にありついた足軽が顔をやや赤らめながら上機嫌に告げる。
「よいのか、寝ずの番をするのに酔っ払っておって」
 賭けに負けた者が恨めしげな目をくだんの者に向けながら非難した。
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