1 / 11
1章
目が覚めたら真っ暗闇
しおりを挟む
顔に冷えた大粒の雫が落ちて、脳が一気に覚醒した。頬に当たるやや湿った硬い岩の感触に戸惑いつつも寝ていた体を起こした。
薄く目を開けて周囲を見渡すが、あたり一面黒。恐ろしく黒。どこをどう見ても黒。これでもかと目をかっぴらいても黒。
あ、でもだんだん目が慣れてきて辛うじて足下は見えた。しかしそこは頬の感触通りの岩だった。ガックリ。
暗いし、足下岩だし、どこだよここ。
ひとまず、足を延ばしてトントンと地面をたたきながら地面があることを確認しつつ少しずつ進んでいく。俺は慎重なんだ。うっかり歩いてて道が途切れて落下死なんて冗談じゃない。
そうしてしばらく歩いていると奥のほうにわずかな光が見えた。
と、ここで安心してはいけない。もしかしたら岩の隙間から見えているだけで、出口ではないかもしれない。なんなら俺をここに連れてきた連中がキャンプ中だったりするのかもしれない。話し声は全く聞こえないが。
もしそうだった場合、俺はすぐにつかまってしまうだろう。何せ高校では漫研、大学では勉強とコミケの原稿漬けで体はへなちょこだ。身だしなみは多少気を遣っていたのでそこまで人に邪険にされたことはないが、まさかこうして連れ去られる?なんてな。いつの間に。昨日は徹夜明けで午後の講義以降記憶がないんだ。不思議だな。
息をひそめて周囲の気配を感じ取りつつ、疑いながらも僅かな希望を持ち、やはり慎重に進んでいく。すると、岩だらけの空間から、緑がいっぱいの森に出た。出口だった。
「でも、ここ、出口だけど出口じゃない……はっ?!」
待て待て待て。今の声は誰だ。一応俺が喋りはしたが、こんなに高い声じゃない。誰の声だ。
「あー、あー、もしもーし」
喉を押さえて振動を確認した。俺から出てる。高いけど、女の子ほどじゃなくて。声変わり前の男の子みたいな……。
まさか。何とも言えない考えが頭を過って、喜んでいいのか悪いのか。いや確かに俺はそういう生き物だけれど。そうじゃないのに。
あたりをキョロキョロと見渡して、水場を見つけた。そこに駆け寄り、水面に映る俺を確認した。
「ひょぇ……」
サラサラの黒髪に二重瞼のぱっちりと開いた目。すらりと通る鼻筋に、形のいい唇。すべて均等に小さな顔に収められている。整いすぎて怖いくらいに。
頬に触れるとニキビ一つできたことのなさそうなもち肌がふるりと動いた。
美少年だ。美少年がいる。水の奥に美少年が住んでいます。
水面が木漏れ日を反射してキラキラしているのもなにか見えないものが空気を読んでいるような気がしてならない。グッジョブ。いいエフェクトだ。夏コミのノベルティに使おう。
しばらくぺたぺた触って感触を確かめつつ、俺は一度冷静になった。
―――あれ、これ俺?
脳内にクエスチョンマークを大量に浮かべつつも、そのあともぺたぺた触って現実逃避をしていたら、水面に映る家のようなものが見えた。
顔を上げて見てみると、大きな木の上にツリーハウスがあって、木が絡まってできたらしい螺旋階段からそこに上れるようだ。
どうせこのままここにいても進展しないだろうし、あそこで誰かに頼ろう。電話とかあったら実家に電話させてもらおう。そう考えて、階段を上る。
薄く目を開けて周囲を見渡すが、あたり一面黒。恐ろしく黒。どこをどう見ても黒。これでもかと目をかっぴらいても黒。
あ、でもだんだん目が慣れてきて辛うじて足下は見えた。しかしそこは頬の感触通りの岩だった。ガックリ。
暗いし、足下岩だし、どこだよここ。
ひとまず、足を延ばしてトントンと地面をたたきながら地面があることを確認しつつ少しずつ進んでいく。俺は慎重なんだ。うっかり歩いてて道が途切れて落下死なんて冗談じゃない。
そうしてしばらく歩いていると奥のほうにわずかな光が見えた。
と、ここで安心してはいけない。もしかしたら岩の隙間から見えているだけで、出口ではないかもしれない。なんなら俺をここに連れてきた連中がキャンプ中だったりするのかもしれない。話し声は全く聞こえないが。
もしそうだった場合、俺はすぐにつかまってしまうだろう。何せ高校では漫研、大学では勉強とコミケの原稿漬けで体はへなちょこだ。身だしなみは多少気を遣っていたのでそこまで人に邪険にされたことはないが、まさかこうして連れ去られる?なんてな。いつの間に。昨日は徹夜明けで午後の講義以降記憶がないんだ。不思議だな。
息をひそめて周囲の気配を感じ取りつつ、疑いながらも僅かな希望を持ち、やはり慎重に進んでいく。すると、岩だらけの空間から、緑がいっぱいの森に出た。出口だった。
「でも、ここ、出口だけど出口じゃない……はっ?!」
待て待て待て。今の声は誰だ。一応俺が喋りはしたが、こんなに高い声じゃない。誰の声だ。
「あー、あー、もしもーし」
喉を押さえて振動を確認した。俺から出てる。高いけど、女の子ほどじゃなくて。声変わり前の男の子みたいな……。
まさか。何とも言えない考えが頭を過って、喜んでいいのか悪いのか。いや確かに俺はそういう生き物だけれど。そうじゃないのに。
あたりをキョロキョロと見渡して、水場を見つけた。そこに駆け寄り、水面に映る俺を確認した。
「ひょぇ……」
サラサラの黒髪に二重瞼のぱっちりと開いた目。すらりと通る鼻筋に、形のいい唇。すべて均等に小さな顔に収められている。整いすぎて怖いくらいに。
頬に触れるとニキビ一つできたことのなさそうなもち肌がふるりと動いた。
美少年だ。美少年がいる。水の奥に美少年が住んでいます。
水面が木漏れ日を反射してキラキラしているのもなにか見えないものが空気を読んでいるような気がしてならない。グッジョブ。いいエフェクトだ。夏コミのノベルティに使おう。
しばらくぺたぺた触って感触を確かめつつ、俺は一度冷静になった。
―――あれ、これ俺?
脳内にクエスチョンマークを大量に浮かべつつも、そのあともぺたぺた触って現実逃避をしていたら、水面に映る家のようなものが見えた。
顔を上げて見てみると、大きな木の上にツリーハウスがあって、木が絡まってできたらしい螺旋階段からそこに上れるようだ。
どうせこのままここにいても進展しないだろうし、あそこで誰かに頼ろう。電話とかあったら実家に電話させてもらおう。そう考えて、階段を上る。
10
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる