ヌーバニア

ヌーバス

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ワノジャ

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73


「鎖国している戸R国がG牙国に軍事協力するとは思えないが何らかの理由で協力しているとしたら

双竜隊どころか
フールモ軍すべてが危うい

戸R国の道具が兵器として使用されたら竜Q国そのものさえ持ちこたえられる
かどうか…  」

「アロンよ
もし戸R国が中立を
守ってる場合は? 」

「G牙軍は竜Q国の南側の海から竜Qに侵入
それからこの戦場に駆けつけるだろうな
そうなればフールモ軍は
終わりかもな  」

「問題はフールモ軍師だ
お前がこれだけ戦況を把握できるってことは? 」

「フールモはもっと客観的にあらゆる場合を想定している

怖いのはフールモ軍師の
客観性だ  」

「確かに
フールモは双竜隊が
挟み撃ちになるのを客観的に観察するかもな
この戦場のすべてがやつにとっての実験にされる
かもしれない… 」

「とうとうフールモ軍師を
やつ呼ばわりしたか… 
だが、やつにとって双竜隊は大事な実験隊のはず…
なのだから…そこまで
冷たくしない… 」

「しないはずだよな… … 」



74


当のフールモは

自分を『探求者』だとしている

『実験』などではない『探求』なのだ

フールモが探求しているのは真理ではない

フールモは善を探求している

絶対的な善を探求することがフールモの絶対的な喜びである

フールモが
ある植物から得た成分を使い
村中に
双子を誕生させたのは事実であった

だが副作用がないよう何十年も研究を重ねた末の事業であったのだ

フールモにとり
双子だけから成る双竜隊は必要な善である

同調を有効活用する方法を
双竜隊を使って探求する

この世界に
例の現象が迫っている
朱雀大陸ではすでに…

双竜隊は例の現象に対応する善なのだが
それはそれとして…

フールモの探求結果は善の方向に向かう

フールモは
最初からそれを知っている

それだけではない

フールモは最初から存在している

フールモは最初から
すでに世界を知っている

あとは善をなすだけだ

フールモは第一軍師になろうと思えば
すぐになれる
世界を支配することさえ可能である
だが、支配は悪なのだ

フールモは悪を行わない
なぜなら世界を知っているからだ

だが今は
世界を知っていることを秘密にしている

世界を知っていることを秘密にすることは善である

フールモは善をなさねばならぬ



75


砦に
ワノジャの軍隊が到着したのは
P摩国が竜Q国に侵攻する二日前であった

猿軍師が
P摩軍による竜Q国侵攻を予想したから砦に進軍したのだが

その予想は
ワノジャ軍の兵士にさえ知らされていなかった

大掛かりな軍事訓練を行う
との通達であった

砦は
竜QとP摩の国境から程近い

普段は
僅かな国境警備隊がいるに過ぎないが
さすが大国竜Qだけあって

国境近くの砦は
ワノジャ軍を滞りなく受け入れることができるほどの大きさがある

猿の指示は

「砦にて
P摩軍を迎え撃て 」

猿の予想どおりP摩軍が侵攻してきた

だが
南のV谷国までが竜Q国に侵攻してきた

V谷国の同時侵攻についての猿の予想はなかったのである










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