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エニュニ
しおりを挟む142
先程までエニュニはジャラージャ村に居た
確かに居たはずなのだが…………
ジャラージャ村は豊かな山に囲まれた村であった
T舵国といえば緑豊かな森と山
田畑そして大小さまざまな湖…………………
いまエニュニは丘に立っている
緑豊かな丘ではない
丘は鈍い銀色
土や雑草はない
丘の上空も鈍い銀色
そして丘全体に林立しているのは…… ……………
銅像である
あまりにも臨場感のある銅像なので
最初エニュニは異国の軍隊が突然ジャラージャ村の存在を知り突撃してきたに違いないと
戦いを覚悟した
だが軍隊は一向に襲ってこない
ピタリと静止している
よほど統制の取れた軍隊かと身構えたが
兵士達はまったく動かない
石像のように動かない
だが石ではなかった
丘そのものや丘を覆う空と同じ鈍い銀色であった
鈍い銀色の硬い物質でできた銅像であった
あまりにも精密に作られているので
エニュニは銅像達は悪のレイリョク使いにより一瞬にして銅像にされてしまったに違いないと思った
丘は広大である
エニュニは永遠に丘をさ迷った
丘のすべてに兵士の銅像が立っているようだ
これだけの兵士を銅像に変えるレイリョク使いがいるなら
ジャラージャ村の存在などあまりにも小さすぎる
笑えるほど小さすぎる
実際エニュニは大声で笑った
どこともわからぬ
永遠に広い異様な丘に突然現れた自分自身をも大いに笑った
143
静かすぎる丘
空はいつでも鈍い銀色
風は淀んでいる
丘の何処に行っても銅像が並んでいる
丘いっぱいに建ち並ぶ銅像
そのすべてが兵士のようである
鎧の下に着ている服の裾が風になびいている形で静止している
丘の風は常に淀んでいる
兵士の汗が静止している
丘の気温は常に少しだけ肌寒い
兵士の時間は静止している
これだけの兵士が銅像から人間に同時に変化したらどうなるのであろうかとエニュニは恐怖に捕らわれ駆け出す
駆けながらまた思い出す
この丘に突然放り出されてから何度も何度も何度も同じ恐怖により駆け出したことを思い出す
エニュニはすでに永遠に近いほど長い間この丘をさ迷い続けている
兵士の銅像の表情には最初からもちろん気づいていた
立ち止まり息を調えながらまた銅像の表情に怯えるエニュニ
兵士であるなら戦の支度を整えた兵士であるなら気合いの充満した表情
あるいは冷静な経験豊かな表情
あるいは敵に対する憤怒
恐怖などの表情を浮かべるはずなのだが
銅像の兵士はすべて悲しげな表情を浮かべている
永遠に近いほど長い間さ迷った丘のすべての兵士の銅像が悲しい表情をしている
144
悲しい表情を浮かべている兵士の銅像の間をエニュニは永遠にさ迷い続けている
どの時代の
どの国の兵士なのか
少年であるエニュニには解らない
少年?永遠にさ迷い続けている自分は本当に少年なのであろうか?
そのような疑問は何度も永遠に繰り返した疑問だ
永遠にさ迷い続けていると
自分が少年なのかどうか
どうでもいい
人間のままでいるのかどうかも定かではない
空腹さえまったく感じないこの永遠の放浪…………………
もしかしたらすでに自分は銅像と化しているのでは?
この銀色の丘の兵士の銅像の1つとなって心だけが丘をさ迷っているのかもしれない
だから空腹を感じることなくさ迷っていられるのではないだろうか
どれだけさ迷い続けても丘から出ることはできなかった
丘はどこまで行っても悲しい兵士の銅像が溢れていた
これだけ多くの兵士がこの世界にいたとは思えない
あらゆる時代のあらゆる兵士達をこの丘そのものが召集したのだろうか
行けども行けども悲しい表情を浮かべている兵士の銅像は尽きることがなかった
疲れると兵士の銅像の間で寝るしかなかった
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