レイン

ヌーバス

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レイン

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海原に恐怖横たわると実感する。南の島に生まれ育った者にすれば海原は疲れる。巨大なエネルギーに苛まれて疲れ果てる。

潮風に疲れを任せる。海原によってもたらされた疲れはすぐに癒える種類の疲れではない。芯に到達する疲れであり、そして海原に横たわる恐怖を伴う疲れなのである。

潮風を待望すると潮風は来てくれた。それは少年の特権であった。

少年の夏休みは永遠に続く。いま思い返してそう思う。いまこの瞬間さえ少年の夏休みは永遠に続いている。

水温が変化しないぶん空気の冷たさ暖かさに敏感だったように思う。少年は太平洋の海原に浸かっていた。

ひとりだ。ひとりで泳ぐことを少年が日常としていたわけではない。

夏の伝統てきな海神際てきなイベントがあって、大多数の島人はそこに出掛けていた。

貨幣てきな事情で少年はイベントに参加しないことを選択した。海神際てきなイベントは年々、経済活動てきな屋台やらねんごろなゲームやらこずかいのはなはだ少ない少年を悩ますイベントと化してしまったのである。

少し寂しくなった少年は潮風を呼んだ。すると潮風とともにレインが来たのである。

泣きっぱなしなレインであった。

「なにが悲しくて泣いているんだよ」

「なにが悲しくないっていうんだよ少年」

「そう言われたらすべて悲しくなってしまいそうさ」

「存在の悲しさを知ることはよいこと。存在の悲しさこそよい恐怖なんだからよ」

「レインは昔からいるのかい?」

「レインは昔からいるよ少年。レインはいま少年が浸かっている海原なんだから大昔からよい恐怖となっていたのだよ少年」

「なんだかレインと話していると僕とても静かな豊かさになっていくような気がするよ」

「静かな豊かさなのさ。静かな豊かさ少年にしかレインは理解できないのだよ」

「静かな豊かさなおとなに話しかけたりしないのかいレイン」

「静かな豊かさなおとななんていないのさ少年。この先わずかな年月で自然環境激変させてしまうおとなに静かな豊かさなんてないのさ少年」

「レインが話していることを僕理解できるよ」

「だから静かな豊かさ少年って言ったろ。ほんとの少年」



ひさびさに故郷に帰っている。そして海原に対している。

海原ぜんたいから海原はレインとなって上空へと溢れてゆくところであった。







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