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お茶会に向かいまして。
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突然ですが、現在私は迷子です。
ことの発端は、我が家に届いた1通の手紙だった。
その封書は、我がバルト帝国の王家の紋章を象った蜜蝋で封をされていた。
我が家のようなしがない子爵家(ごめんねお父様)では、一生縁のないはずの、王族からのお手紙。
それが届いた日は、家中が大騒ぎになった。
私は可愛い弟のぷにぷにほっぺをつつくのに大変忙しかったので、そちらには興味皆無だったが。
弟は アンリ・ウェヌス と名付けられた。
名前、私と似すぎてない?と思ったが、すっかりブラコンに片足突っ込んでいる私にとっては、嬉しい限りだ。
両親は本気で私に似たらいい子になると信じているらしく、私に似た名前にしたそうだけど……それでいいの?
でも名前が似ているからか、アンリは私に非常に懐いてくれているようだ。
まだ生まれて3ヶ月なので周囲の人の見分けはついていないと思うのだが、私が抱くと何故かすぐに泣き止んで、大変ご機嫌になる。指をつかんだら、離さぬっとばかりにずっと握ったままだ。可愛いの塊だ。可愛いの暴力。
反対に、お父様が抱き上げると何故か泣く。
この世の終わりという程にギャン泣きする。
そのせいで最近のお父様は浮き沈みが激しい。メンタルが風前の灯だ。
まぁ可愛い息子に泣かれ続けては、家族大好きなお父様には悲しみしかないだろう。
でも先日アンリに、「だいじなおしごとのまえだから、なるべくなかないであげてね」と冗談交じりに言ったら、ふすーっとため息?をつき、非常にイヤそうにしながらお父様の抱っこを甘受していたのは…偶然だよね?
と、脱線したが。
手紙の内容を確認したらしいお父様と、普段冷静なはずの執事長のカインが、お母様と私とアンリのいる部屋に血相変えて駆け込んできた。
「マリー、アイル!大変だ…っ!!」
「ふぇ…っ」
「まぁレオ様、とりあえず落ち着いてくださいな。アンリちゃんが泣き出しそうですわ?」
「うっ…ア、アンリ、すまない…」
「あんり、いいこでしゅねー」
「あうー!」
「アンリちゃんは本当にアイルちゃんが好きねぇ」
「…アンリ、そんなにお父様が嫌いか…」
お父様は今日も心が瀕死だ。
「それで、一体何がありましたの?」
アンリが私の指を掴んだまま眠りについたので、私も横に寝そべりながら、おっとりとお父様に声をかけるお母様の様子を窺う。
お母様に励まされて復活したお父様は、はっとしたように、握りしめたままだった紙をお母様に渡した。
「そうだった!王宮から手紙が届いたんだ!」
「あらまぁ、なぜ我が家に?」
お母様はすこし目を見開いて、こてりと首を傾げただけだった。
だが控えていたリサがとても驚いていたから、私はなんとなく、急に校長室に呼び出しくらった時くらい大変なことなんだなというのは察した。
「それが…アイルを王宮に招待するという内容なんだ…」
「……アイルちゃんを…ですか?」
「あいる??」
ほわい?
「正確には、皇子殿下と同じ年頃の子を集めたお茶会が王宮で開かれるので、その招待状なのだが…」
「おちゃかい?」
それってあれよね、よく小説でドレスに紅茶掛けたり掛けられたりするイベントの起こる会よね。
激しく行きたくない。
「おとうしゃま、あいる、いきたくない…」
「あぁアイル、そうだよね、あんな魔の巣窟のような場所に行けば、アイルのような天使は穢れにやられてしまうね!」
ちょろいお父様だ。
「レオ様、王族からの招待を理由なくお断りするようなことはできませんわ」
「そうですよ旦那様。いい加減に落ち着いてください」
「うっ…確かに…」
ちっ、お母様とカインの言葉で、お父様が正気を取り戻してしまった。
「おかあしゃま。あいるは、あんりといっしょがいいでしゅ」
「ごめんねアイルちゃん。アンリちゃんはまだお外には行けないわ。王都までは片道でも2日はかかってしまうし、お父様と行ってもらうことになるわね…」
「…あいる、さみしいから、いやだなぁ…」
必死に哀愁漂う感じに子供を気取ってみる。
ちらっと窺うと、目元を抑え震えるお父様は、『行かなくていい!』と言ってくれそうだったのに、
お母様は…
「どんなドレスがいいかしら。レオ様、お茶会はいつですの?新調しても間に合うかしら?アイルちゃんの可愛さを引き立てるようなドレスを仕立ててもらわなきゃ!」
聞いてすらいなかった。
この日お母様に完敗した私は、残念なことに採寸されドレスを新調され、お茶会に間に合うように余裕をもって馬車に放り込まれ、お父様と一緒に王都までやってきた。
馬車の揺れは幼児には大変な苦行だった。
そしてお茶会当日。
お父様が目を離した隙にちょっと気分転換と抜け出した私は、広大な王宮に見事に完敗し、立派な迷子となったのです。 ←イマココ。
ことの発端は、我が家に届いた1通の手紙だった。
その封書は、我がバルト帝国の王家の紋章を象った蜜蝋で封をされていた。
我が家のようなしがない子爵家(ごめんねお父様)では、一生縁のないはずの、王族からのお手紙。
それが届いた日は、家中が大騒ぎになった。
私は可愛い弟のぷにぷにほっぺをつつくのに大変忙しかったので、そちらには興味皆無だったが。
弟は アンリ・ウェヌス と名付けられた。
名前、私と似すぎてない?と思ったが、すっかりブラコンに片足突っ込んでいる私にとっては、嬉しい限りだ。
両親は本気で私に似たらいい子になると信じているらしく、私に似た名前にしたそうだけど……それでいいの?
でも名前が似ているからか、アンリは私に非常に懐いてくれているようだ。
まだ生まれて3ヶ月なので周囲の人の見分けはついていないと思うのだが、私が抱くと何故かすぐに泣き止んで、大変ご機嫌になる。指をつかんだら、離さぬっとばかりにずっと握ったままだ。可愛いの塊だ。可愛いの暴力。
反対に、お父様が抱き上げると何故か泣く。
この世の終わりという程にギャン泣きする。
そのせいで最近のお父様は浮き沈みが激しい。メンタルが風前の灯だ。
まぁ可愛い息子に泣かれ続けては、家族大好きなお父様には悲しみしかないだろう。
でも先日アンリに、「だいじなおしごとのまえだから、なるべくなかないであげてね」と冗談交じりに言ったら、ふすーっとため息?をつき、非常にイヤそうにしながらお父様の抱っこを甘受していたのは…偶然だよね?
と、脱線したが。
手紙の内容を確認したらしいお父様と、普段冷静なはずの執事長のカインが、お母様と私とアンリのいる部屋に血相変えて駆け込んできた。
「マリー、アイル!大変だ…っ!!」
「ふぇ…っ」
「まぁレオ様、とりあえず落ち着いてくださいな。アンリちゃんが泣き出しそうですわ?」
「うっ…ア、アンリ、すまない…」
「あんり、いいこでしゅねー」
「あうー!」
「アンリちゃんは本当にアイルちゃんが好きねぇ」
「…アンリ、そんなにお父様が嫌いか…」
お父様は今日も心が瀕死だ。
「それで、一体何がありましたの?」
アンリが私の指を掴んだまま眠りについたので、私も横に寝そべりながら、おっとりとお父様に声をかけるお母様の様子を窺う。
お母様に励まされて復活したお父様は、はっとしたように、握りしめたままだった紙をお母様に渡した。
「そうだった!王宮から手紙が届いたんだ!」
「あらまぁ、なぜ我が家に?」
お母様はすこし目を見開いて、こてりと首を傾げただけだった。
だが控えていたリサがとても驚いていたから、私はなんとなく、急に校長室に呼び出しくらった時くらい大変なことなんだなというのは察した。
「それが…アイルを王宮に招待するという内容なんだ…」
「……アイルちゃんを…ですか?」
「あいる??」
ほわい?
「正確には、皇子殿下と同じ年頃の子を集めたお茶会が王宮で開かれるので、その招待状なのだが…」
「おちゃかい?」
それってあれよね、よく小説でドレスに紅茶掛けたり掛けられたりするイベントの起こる会よね。
激しく行きたくない。
「おとうしゃま、あいる、いきたくない…」
「あぁアイル、そうだよね、あんな魔の巣窟のような場所に行けば、アイルのような天使は穢れにやられてしまうね!」
ちょろいお父様だ。
「レオ様、王族からの招待を理由なくお断りするようなことはできませんわ」
「そうですよ旦那様。いい加減に落ち着いてください」
「うっ…確かに…」
ちっ、お母様とカインの言葉で、お父様が正気を取り戻してしまった。
「おかあしゃま。あいるは、あんりといっしょがいいでしゅ」
「ごめんねアイルちゃん。アンリちゃんはまだお外には行けないわ。王都までは片道でも2日はかかってしまうし、お父様と行ってもらうことになるわね…」
「…あいる、さみしいから、いやだなぁ…」
必死に哀愁漂う感じに子供を気取ってみる。
ちらっと窺うと、目元を抑え震えるお父様は、『行かなくていい!』と言ってくれそうだったのに、
お母様は…
「どんなドレスがいいかしら。レオ様、お茶会はいつですの?新調しても間に合うかしら?アイルちゃんの可愛さを引き立てるようなドレスを仕立ててもらわなきゃ!」
聞いてすらいなかった。
この日お母様に完敗した私は、残念なことに採寸されドレスを新調され、お茶会に間に合うように余裕をもって馬車に放り込まれ、お父様と一緒に王都までやってきた。
馬車の揺れは幼児には大変な苦行だった。
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お父様が目を離した隙にちょっと気分転換と抜け出した私は、広大な王宮に見事に完敗し、立派な迷子となったのです。 ←イマココ。
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