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異世界なめたら死ぬよ?
第1話 異世界旅行はボドゲカフェから
しおりを挟む「きゃあ――! やめて――! シンヤ――! トオル――! どこにいるのぉ――!!」
二人はその声にびくっと反応してすぐさま声のする方へ駆け出した。
サラだ――!
見ると、酒場の前で数人(匹?)の人物(動物?)に囲まれているショートタンクトップとショートパンツの女の子の姿が見えた。
「シンヤ! サラだ! 絡まれてるぞ!?」
「ああ、見えてる! あいつら、何やってやがるんだ!」
シンヤは鬼の形相だ。
やがて、そこに近づいていくと、2人(匹?)の人に絡まれているサラと目が合った。
「おいコラてめえら! なにしてやがる、サラを放せ!」
シンヤが威勢よく吠えかける。
続いてトオルがサラの手を引こうと右手を伸ばした、次の瞬間だった――。
――ボトッ……!
何かが地面に落ちる音がした。
――――――――
大阪本町商店街の一角にある雑居ビルの2階にその店はあった。
「いらっしゃいませー。ボードゲームカフェ『ダイシイ』へようこそ!」
ケイコ君の明るい声が店内に響く。
「本日はボードゲームカフェのご利用でよろしかったでしょうか?」
少しだけメイド服に寄せたような制服を着たケイコ君が、人懐っこい笑顔で応対してくれている。
「え? ええ、あの僕たち、バウガルドへ行ってみたいんですけど――」
3人のうちの一人、背の高い男の子がそう答えた。
そのお客様たちは初めての方のようだ。
「バウガルドですね? ありがとうございます! それではシステムの説明をいたしますのでまずは空いている席におかけください――」
そう言ってケイコ君はお客様たちを促した。
お客様は3名の学生風のグループだった。
一人は髪を短めに整えて、見るからにスポーツマンという感じの好青年だ。体格もいい。身長も180センチ以上はあるだろう。バイタリティ(体力)の値が相当あるだろうか。
もう一人の青年のほうは身長はそれほど高くはないがそれでも175センチほどか、眼鏡をかけていて、顔立ちから聡明さがにじみ出ていて、いかにもインテリジェンス(知性)の値が高そうに見える。
最後は女性だ。身長は160センチほどでそれほど高くないが、体つきはすらりとしてしなやかそうだ。なかなかにアジリティ(敏捷度)の値が高いかもしれない。
「――となります。以上で説明は終わりですが、何かご質問はございますか?」
どうやら、ケイコ君の説明が終わったようだ。さて、この子たち本当に行くつもりになっただろうか?
「まじっすか! やべえな、俺めっちゃワクワクしてきたんだけど?」
「まあ、危険な箇所にさえ近づかなけりゃ大丈夫ってことだよな――」
「えー? ほんとに? ほんとに怖いとこ行かないよね? ね?」
3人3様の反応だが、これもだいたいいつものことだ。
「よろしいですか? ただし、これはゲームではなくあくまで『旅行』となりますので、お客様が旅先で会われる事件や事故などには当店は一切の責任を負えませんのでご注意ください。ではよろしければこちらにご署名をお願い致します。それから、お荷物はそのまま身に付けていただいていてOKです。バウガルドにあります、保管庫へお入れください。――店長! バウガルド旅行3名様はいりますー!」
ケイコ君が私の方へ向かって叫んだ。
さて、やっと私の出番だね。
私は店内に所狭しと並んでいるボードゲームの中から、一つの箱「バウガルドの酒場」を取り出して、お客様3名の待つテーブルへと向かった。
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