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異世界なめたら死ぬよ?
第2話 バウガルドの酒場へようこそ
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「いらっしゃいませ。本日はバウガルド旅行へ申込みいただきありがとうございます。先ほども店員の方からご説明させていただきましたが、まずは何より安全第一で行動されるようお願い致します。向こうからお戻りの際は、向こうの世界で渡されるマジックアイテムで一瞬で戻れますのでご安心ください。ただしこのマジックアイテムですが腕輪の形をしておりますので必ずご着用していただくようお願い致します」
と、私がそう説明すると、
「はい、わかりました。腕輪ですね。それを身に付けてて戻りたいと言えば戻れる感じですか?」
とインテリ系男子が聞いてくる。
「実際には、魔法詠唱が必要ですが、短い呪文ですのですぐに覚えられますよ」
と、私がそう答えると、
「大丈夫だって、そんなに難しい呪文だったら帰ってこれなくなるじゃん? だから簡単なんだよ? ね、店長さん」
と、スポーツマン男子が聞いてきた。
この男の子がどうもリーダー格のようだ。仕切り屋さんがいるパーティは行動判断が早くなるのでこういった人材はとても重要なパーティの一要素だ。
「それでは皆様、まずはお荷物をしっかり抱いていただいて、準備ができましたらこちらの箱に手を置いてください」
そう言って私は3人の間のテーブルの中央に置いた「バウガルドの酒場」を指し示した。
3人は荷物を手にすると、箱に手を置いて待機する。
「では、準備はいいですね? それでは、バウガルドの酒場へ、行ってらっしゃいま――せ……」
私の目の前で3人の姿が光に包まれると跡形もなく消え去った――。
さあて、彼らは無事帰ってこれるのだろうか?
――――――――
店長の声がふぅっとかき消えたかと思った瞬間、シンヤはまぶしい光に包まれた。
そうして数秒たっただろうか――?
気が付くとさっきとは風景の違う場所で、テーブルの席に座っていた。
隣にトオルが座っており、正面にはサラも座っている。
まだ音は何も聞こえてこない――。
3人は顔を見合わせ、恐る恐るまわりの風景を見渡した。
その時、3人の世界に「音声」が帰ってきた。
民族楽器のような陽気な音楽が流れ、がやがやと話をしている声が聞こえる。はじめは何を言ってるのかわからなかったが、徐々にそれが日本語として聞こえてくるようになった。
「おめえ! こないだどこで稼いだよ?」
「ベイリン洞窟のコボルド野郎は結構実入りがいいんだよ。最近はあそこへよくこもってるぜ?」
「へぇ、コボルドってあの犬みたいなやつだろ? アイツすばしっこくてめんどくせーんだよな――」
とか何とか――。
声の主はどれ、いや、だれなのかわからなかったが、明らかにまわりにいる人達の中に人じゃない人たち? もいる。
3人がきょろきょろしてると、店の店員らしい人が気付いて寄ってきてくれた。きれいな女性だ。シンヤは思わず見とれたが、その女性の耳の形を見てぎょっとした。
明らかに人間のそれとは違う、とんがってピンと立っていた。気づくと瞳の色がブルーというかグリーンというかこれも人間では見たことがない。
「え、るふ――?」
「あら、お客さん、その格好ということは、あっちから来た人たちだね。私がエルフ族だってわかったってことは、いわゆる「ファンおた」のかたかな?」
「ふぁんおた……?」
シンヤはそのエルフの店員さんが言っている意味がよくわからない。
「ああ、いいのいいの。気にしないで。ようこそバウガルドへ~。まずはこの世界のルールを教えてあげないと駄目なとこからだね? そうね、まずはカウンターに行って、冒険者セットをもらって、次に奥の預り所で着替えを済ませたら荷物を預けてきてね。ああ、冒険者セットの腕輪はめっちゃ重要アイテムだから必ず腕にはめておいてね。準備ができたら、またこの席に戻ってきてね――じゃあ、早速、行動開始~!」
エルフ店員さんに追い立てられるように席を立った3人はまずは酒場のカウンターへ向かった。
「あれ? 店長――さん?」
サラがカウンターの向こうにいる男性の容姿を見て、さっきのボドゲカフェの店長とそっくりだということに気付いた。
「ああ、みんなそう言うんだよね。でも、私の名前は、リノセルフです。この「バウガルドの酒場」の主人をやってます。リノでいいですよ。君たち、大阪本町支店から来た方たちだね。そこの店長と私がそっくりらしいんだよね。いつもそこから来た人に言われるからもう慣れたよ――。さあ、これが冒険者セットだ、こっちが男性用でこっちが女性用。その先に預り所があるからそこで着替えて荷物を預けてきて。あと、腕輪は必ずはめておくんだよ?」
そう言ってカウンターに向かって左の方を指し示した。
なるほどたしかに――。
そこには扉があり、「預り所」というプレートがかかっていた。
と、私がそう説明すると、
「はい、わかりました。腕輪ですね。それを身に付けてて戻りたいと言えば戻れる感じですか?」
とインテリ系男子が聞いてくる。
「実際には、魔法詠唱が必要ですが、短い呪文ですのですぐに覚えられますよ」
と、私がそう答えると、
「大丈夫だって、そんなに難しい呪文だったら帰ってこれなくなるじゃん? だから簡単なんだよ? ね、店長さん」
と、スポーツマン男子が聞いてきた。
この男の子がどうもリーダー格のようだ。仕切り屋さんがいるパーティは行動判断が早くなるのでこういった人材はとても重要なパーティの一要素だ。
「それでは皆様、まずはお荷物をしっかり抱いていただいて、準備ができましたらこちらの箱に手を置いてください」
そう言って私は3人の間のテーブルの中央に置いた「バウガルドの酒場」を指し示した。
3人は荷物を手にすると、箱に手を置いて待機する。
「では、準備はいいですね? それでは、バウガルドの酒場へ、行ってらっしゃいま――せ……」
私の目の前で3人の姿が光に包まれると跡形もなく消え去った――。
さあて、彼らは無事帰ってこれるのだろうか?
――――――――
店長の声がふぅっとかき消えたかと思った瞬間、シンヤはまぶしい光に包まれた。
そうして数秒たっただろうか――?
気が付くとさっきとは風景の違う場所で、テーブルの席に座っていた。
隣にトオルが座っており、正面にはサラも座っている。
まだ音は何も聞こえてこない――。
3人は顔を見合わせ、恐る恐るまわりの風景を見渡した。
その時、3人の世界に「音声」が帰ってきた。
民族楽器のような陽気な音楽が流れ、がやがやと話をしている声が聞こえる。はじめは何を言ってるのかわからなかったが、徐々にそれが日本語として聞こえてくるようになった。
「おめえ! こないだどこで稼いだよ?」
「ベイリン洞窟のコボルド野郎は結構実入りがいいんだよ。最近はあそこへよくこもってるぜ?」
「へぇ、コボルドってあの犬みたいなやつだろ? アイツすばしっこくてめんどくせーんだよな――」
とか何とか――。
声の主はどれ、いや、だれなのかわからなかったが、明らかにまわりにいる人達の中に人じゃない人たち? もいる。
3人がきょろきょろしてると、店の店員らしい人が気付いて寄ってきてくれた。きれいな女性だ。シンヤは思わず見とれたが、その女性の耳の形を見てぎょっとした。
明らかに人間のそれとは違う、とんがってピンと立っていた。気づくと瞳の色がブルーというかグリーンというかこれも人間では見たことがない。
「え、るふ――?」
「あら、お客さん、その格好ということは、あっちから来た人たちだね。私がエルフ族だってわかったってことは、いわゆる「ファンおた」のかたかな?」
「ふぁんおた……?」
シンヤはそのエルフの店員さんが言っている意味がよくわからない。
「ああ、いいのいいの。気にしないで。ようこそバウガルドへ~。まずはこの世界のルールを教えてあげないと駄目なとこからだね? そうね、まずはカウンターに行って、冒険者セットをもらって、次に奥の預り所で着替えを済ませたら荷物を預けてきてね。ああ、冒険者セットの腕輪はめっちゃ重要アイテムだから必ず腕にはめておいてね。準備ができたら、またこの席に戻ってきてね――じゃあ、早速、行動開始~!」
エルフ店員さんに追い立てられるように席を立った3人はまずは酒場のカウンターへ向かった。
「あれ? 店長――さん?」
サラがカウンターの向こうにいる男性の容姿を見て、さっきのボドゲカフェの店長とそっくりだということに気付いた。
「ああ、みんなそう言うんだよね。でも、私の名前は、リノセルフです。この「バウガルドの酒場」の主人をやってます。リノでいいですよ。君たち、大阪本町支店から来た方たちだね。そこの店長と私がそっくりらしいんだよね。いつもそこから来た人に言われるからもう慣れたよ――。さあ、これが冒険者セットだ、こっちが男性用でこっちが女性用。その先に預り所があるからそこで着替えて荷物を預けてきて。あと、腕輪は必ずはめておくんだよ?」
そう言ってカウンターに向かって左の方を指し示した。
なるほどたしかに――。
そこには扉があり、「預り所」というプレートがかかっていた。
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