異世界旅行は命がけですがよろしいですか?―バウガルドの酒場冒険譚

永礼 経

文字の大きさ
5 / 44
異世界なめたら死ぬよ?

第4話 一応安全装置付いてますがすべては自己責任です

しおりを挟む

「――とまあ、こんな感じです」
フィーリャは3人に説明を終えた。
「それでは快適なご旅行をお楽しみくださ~い。行ってらっしゃいませ~」 

 そんな感じで、酒場の玄関から押し出された3人は初めてバウガルドの世界を目にすることとなる。

「お? おお――! めっちゃファンタジーじゃんかよお!?」
シンヤは大声を上げた。

 そこはいわば大阪の港のそばにある某テーマパークのあの魔法の世界のような建造物が立ち並ぶ街並みだった。
 しかしそれとは完全に異なる。
 「リアル」なのだ。
 明らかに、この街は実在している。ここには人々(?)の生活が息づいている。

 街の通りには、何族かもわからない人々が闊歩し、臭いもまさにリアルに鼻を突いてくる。

「やべぇ! 鳥肌立ってきたぁ!」
シンヤは大はしゃぎだ。
「さて、これからどうする?」
トオルは意外と冷静だ。
「わたし、買い物がしたいな!」
サラが主張した。女の子というのはいつでも、まずは買い物から始まるものなのだろうか。 

「まあなぁ、でも確かに初期資金として100シルバーずつ支給されたけど、何するか決めてないから何買っていいかわかんねーなぁ」
とはシンヤの言葉。
「そうだなぁ……」
とトオルが相槌をうった。
「取り敢えず、歩き回ってみる?」
サラは買い物がしたくてたまらない。

「おい! お前ら! 新規ダイバーだな?」
唐突に男の声がした。
 3人がそろってその声の方を向くと、一人の男が立っていた。 

 全身を金ぴかに光る鎧で固め、腰にはこれまた金ぴかの意匠を凝らした剣を帯刀している。背中には長さ1.5メートルはあろうかという大きな盾を背負っていた。
 身長は180センチ足らずだろうか。シンヤよりは低いが、トオルよりは高い。年齢は、30代前半と言ったところか。間違いなく人間、つまり、彼も旅行者なのだろう。

「え、と。すいません。“ダイバー”ってなんです?」
シンヤがその男に聞いた。

「ああ、やっぱりな。あっちの世界から来た人間を“ダイバー”っていうんだよ、この世界ではな。それよりお前らまさかここから歩いて散策しようとか思ってないだろうな?」
男が訝しむように問う。

「え? そのつもりでしたけど、なんかまずいっすかね?」
シンヤが聞き返す。

「あちゃー。あぶねぇなぁ。お前らにここで会えてよかったよ。お前ら、ちゃんと酒場の“インスト”きいてたのか?」
男はやや強めの口調で問い詰める。
「ここはもう、日本じゃねぇんだ。どこにも安全な場所なんてないんだぜ? そんなこともわからず、100シルバー握りしめて街歩きまわってりゃ、いい金蔓《かねづる》ってもんだ。お前ら、周りの見たこともない種族のやつらに襲われて、逃げられると思ってるのかよ?」

「ああ、たしかに。フィーリャさんにも充分に気を付けてくださいねと言われたような気が――」
シンヤが答える。

「でも、まさかそんな治安が悪いなんて一言も言ってなかったですよ?」
とはトオルだ。

「だよなぁ。それについては仕方ねぇんだよ。あの人たちにとっちゃ、それが当たり前なんだからよ。治安が悪いって思ってねえんだから、言うわけねぇんだよ」
そう言って男は頭を掻くような仕草を見せる。
「まあとにかくだ、腕輪だけは絶対外すな。それからやばくなったら速攻で帰還しろ。まずはそれからだ。何なら今すぐ帰還して再度ログインしてを数回繰り返すぐらいの方がいい。そうやって腕輪の使い方に慣れろ。街をうろつくのはそれからでおそくない――って、やべぇ、もう滞在制限時間が来る、お前らちゃんということ聞くんだぞ、いいな! わかったな? 死ぬんじゃねーぞ?」
そう言ってその男は慌てて酒場に飛び込んで行った。

 死ぬ?

「そう言えば、この旅行に際して事故や事件に関しては店は一切責任を負わないって誓約書にサインさせられたような……」
トオルが呟く。
「え~、買い物は? ねぇどうするのよ?」
サラはさっきからそのことで頭がいっぱいのようだ。さっきの鎧男の話聞いてたか?

「せっかく来て何もせず帰ってまたログインしてってめんどくさくねーか?」
とシンヤ。
「そうだよ? ヤバくなったら、帰還しちゃえばいいんでしょ? 少しぐらい大丈夫だよ」
とサラ。
「じゃあ、少しだけ見てから帰還するか――」
トオルも2対1になってまでは押し切れない。

 ということで3人は、「少しだけ」見て回ることにした。そう、その「少し」が命取りになるとは知らずに――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...