16 / 44
異世界行商でセカンドライフを満喫するつもり
第15話 行商人って何売ればいいんでしょうかね
しおりを挟むハヤトは荷作りを済ませた。なんとか商売も形になってきた。
明日あたり、街を出てみるのもいいかな。
そんなことを考えて今日は帰還することにした。帰還する際はここからでもよいのだが、やはり預り所に荷物を預けておいた方が安心だ。
それに、仕事上がりの一杯が何よりの楽しみだからだ。
ハヤトは露天商セットを背負って、リノズバルへと向かった。
(日本時間で)数日前――。
初めてバウガルドに来たときは、この圧倒的な臨場感に度肝を抜かれた。まわりにいるのはおおよそ人類とは思えないような種族。実際、人類ではないのだろうが、しかし、言語はなぜだか理解できるのだ。
臨場感と言ったが、正しくはこの表現は間違っている。
ここは、ヴァーチャルじゃなく、リアルなのだ。
つまり、感じる温度も、人々の息遣いも、この世界特有の臭いもすべて現実のものなのだ。
はじまりの酒場のフィーリャくんに説明を受けてすぐ、外に放り出されたが、すぐに酒場に引き返し商売の仕方を聞いてみた。
「え? お客さん珍しいね? ほとんどのダイバーはみんな冒険者になるのが普通なんだけどね。そうか、商売人かぁ。それだったら、商業ギルドだね――」
そう言ってフィーリャくんは、商業ギルドの場所を教えてくれた。
フィーリャくんはとにかく「腕輪、腕輪」とうるさく何度も言ったもんだから、ハヤトはそれをすぐに腕にはめた。なんとなく利き手よりもう一方の方がいいような気がして、左の腕に装着しておいた。
こちらの世界ではあちらの世界の10倍の速度で時が流れていると聞いている。つまり、こちらでの1時間はあちらでの6分になる。仕事終わりにちらりと寄ったもんだから、今日はそれほど時間はない。せいぜいあちら時間で1時間半、つまり90分だ。これをこちら時間に換算すると、900分、15時間になる計算だ。
残念ながら、年齢が若返るわけではない為、ハヤトの体はあちらのままである。58歳の体でこちらで戦闘するのはさすがにきついだろう。しかし、時間は実はゆっくりたっぷりある。少しずつ鍛えてゆけば、あるいは……。
そう考えなくもないが、今の今すぐにそれは難しい。なので、やってみたかった「商売」、それも「行商人」を志すことにしたのだ。
町から町へとゆったりと往来しながら現地で良いモノを仕入れ、別の土地で売る。
そんな冒険をしながらの商売って面白そうじゃないか。
そんな期待を胸に商業ギルドの門をたたいたのだった。
商業ギルドは、いわゆる卸問屋紹介であったり、各地の特産品の情報だったり、交易ルートの案内や初期資金の融資などを行っている商人の互助会のようなものだ。
説明をしてくれた商業ギルドの受付嬢?(子豚)が言うには、もしも売れ残ったり、さばききれないものがあったりした場合も、
「あきらめずにここに持ち込んでみて。完全に回収はできないまでも、幾らかにはなるはずだからね」
という事だった。
おそらくそういった物品を集めて売りさばくというやり方もある? いや、売れないから売れ残るわけだから、それを買ってもすぐには売れない、というのが普通だろう。
ハヤトはとりあえずのところ、腐らないものを売ることから始めようかとも思った。しかし、腐らないということは、一度買えばしばらくは買わないものという事でもある。
(う~ん。なかなか難しいものだな。これまでこんなに、モノを買って売るということについて考えたことはなかったな――)
おかしなことにほぼ毎日のように何かを買っているはずのハヤトだったが、いざ自分が売る側になってみるといったい何を売ったらよいのか、皆目見当がつかない。
(こりゃあ、まいったぞ? 何かしら仕入れないと商売なんて始まらない。でも持ち金は準備費用としてもらった100sだけだしな)
「あのう、すいません。ここらで行商人の方が店を出している場所ってどこかありますか?」
ハヤトは受付嬢?(子豚)に恐る恐る聞いてみる。
「なるほど、取り敢えず見て回るってのもありですよね。それだったら――」
ハヤトは商業ギルドをでて、受付嬢?(子豚)にいわれたように道を進んでゆく。すると、たしかにたくさんの露天商が並んでいる場所に出た。いわゆる青空市場みたいなものだ。
この街、なかなかに規模が大きいようで、そこには買い物客がひしめいていて、どこもかしこも軒下には客が入っている。
(こりゃあすごいな。あっちの世界とは大違いだ――)
ハヤトは軒を連ねる露店商を順に見て回った。
やはり、圧倒的多数なのは、食品関連だ。それから、武器防具関係が次いで多い。おそらくこれは街の外に出現する魔獣に対抗するためと、ダイバー参入により冒険者用の装備の需要があるのだろう。
そのほか、おそらく薬関連の専門店や、魔術関連道具のようなものもある。
(ほんとにいろいろあるんだな――。たしかにな、いるものってすべてどこかで売ってるものなんだもんな――)
などと、今更この歳になってあらためて気付かされるのだった。
結局一日目は踏ん切りがつかず、はじまりの酒場へ戻ってきた。
「あ、えっと、ハヤトさんだっけ?」
ハヤトが酒場へ戻り、何かを注文して今日は帰還しようと思っていたところに、フィーリャくんが声をかけてきた。
「あ、はい――」
「もう、何か始めるつもりで仕入れとかしました?」
「あ、いえ、結局今日のところは決めきれず、帰ってきちゃいました」
「あ、それならちょうどよかった。実はうちのお客さんで、行商の手伝いが欲しいって人がいたんで、どうかなと思ってたんですよ? どうです? 話聞かれます?」
渡りに船とはこのことだ。そういう方の下で学ばせてもらえるならこれ以上都合のいいことはない。
「え、ええ、是非――」
ハヤトは即答した。
「オッケー、じゃあ紹介するね。ゲラルト~。こっちきて~」
そう言って呼ばれた向こうから、身長2メートルはあろうかという大男(牛頭)がこちらへ向かって歩み寄ってきた――。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる