異世界旅行は命がけですがよろしいですか?―バウガルドの酒場冒険譚

永礼 経

文字の大きさ
23 / 44
『竜撃』キョウヤと呼ばれるまでには

第22話 ボドゲカフェ・デビューは緊張する

しおりを挟む

 東京都T区羽原町――。
 ここにボードゲームカフェ「ダイシイ」が出店したのは6年ほど前だった。
 
 京也はこのお店の常連客だ。もともとは大阪本町店でこの店をよく利用していたが、仕事の関係で今は東京に住んでいる。
 東京に越してきてからはこの店がホームグラウンドだ。


 ボドゲカフェブームはもう10年以上も前のことだ。
 当時はばんばん出店攻勢があったが、世界の状況がこれに急ブレーキをかけた。

 新型ウィルスの大規模蔓延が世界中を襲ったのだ。
 2019年にそれは発生し、2023年まで4年もの間世界はこの新型ウィルスの感染拡大と戦う日々を送った。

 当時大学生だった京也は毎日を部屋で過ごし、大学生であるにもかかわらず大学生活を送っているとは到底言えないような状況だった。
 授業はオンライン、定期テストはすべてレポート提出へと置き換わった。
 当然ながら、サークル活動も部活動も、そして、アルバイトすらもほとんどできないまま時間が溶けて行った。

 そんな時だ。

 学生マンションの集合ポストに一枚のチラシが投げ込まれていた。

『ボードゲームカフェ「ダイシイ」オープン! おひとりさまでもOK です! ぜひ集まった人たちでゲームを楽しみましょう! 見学自由です、是非一度ご来店ください!』

 大阪本町商店街、薬のイノキヤとなりの馬飼まかいビル2階――とそのチラシに住所が刻まれている。

 当時、京也は大阪の大学生だったのだが、その近所の学生生協関連施設の学生マンションに住んでいたのだ。
 本町商店街は目と鼻の先だ。歩いて5分で行けるところだし、たまに外食するときによく利用している場所でもある。その商店街の「コクうまケンケン堂」は月に3~4度は訪れるラーメン屋だ。学生にとってラーメン屋さんほどお世話になる外食店もないだろう。

(薬のイノキヤのとなりかぁ――。そんなところにこんな店ができたんだ――)

 その時はそんなものだった。


 それから数日後、久しぶりのアルバイト出勤で帰りが遅くなったため、かえって自炊すると遅くなるからいつもの「ケンケン堂」でラーメンでも食べようと本町商店街へ向かった。

 ラーメンはいつも通りの味でそこそこうまいが、おいしいというわけでもない。
 この「めちゃくちゃ」というのは関西特有の言い回しなのだろうか、「とてもとても」というのが標準語なのか、なんとも怪しい。もうそんなこともわからないぐらい大阪にどっぷりつかっている。

 そうして、ラーメンでお腹を膨らました後、帰路につこうと商店街を歩いている時だった。

「めっちゃおもろかったなぁ!」
「おう、あんなにボードゲームって面白いってしらんかったわぁ」
「またこようぜ! こんどはマリたちもつれてこようや!」

 学生風の男子3人組がビルから飛び出てくるのに鉢合わせた。
 
(ボードゲーム――?)

 京也はどこかで聞いたフレーズを思いだしてふとそのビルの方へ視線を向けた。

『ボードゲームカフェ「ダイシイ」 見学歓迎! お気軽にどうぞ!』

 そんな文字が目に入る。
 ゲーム=さいころと言わんばかりのサイコロをモチーフにしたロゴマークがいかにもという感じをかもし出している。

 先ほどの3人組はそのまま興奮気味に会話しながら商店街の入り口方面、地下鉄の駅の方へと歩いて行った。
 新型ウィルスの影響もあって、商店街の人通りはそれほど多くないので、余計にその声が鮮明に聞こえたのかもしれない。

 ああ、そういえばこの間のあのチラシの店かぁ。おひとり様でも歓迎って書いてあったよな? でも一人でゲームってできないだろう?

 まあ、いいか――。

 帰って寝るにはまだ早いし、どうせ明日もバイトないし、授業はオンラインだからあとで再生すればいいしな――。ちょっと寄ってみるか――。


 しかし、この入りにくさはなんなんだろうな。何と言うか敷居が高い? みたいな。 知らない世界へ飛び込むというのは得てしてこういうものかもしれない。などと思いつつ、意を決して階段を上がる。

 階段の途中あたりに差し掛かった時だった。

「ありがとうございました~、またおいでください~」
と、明るい女の人の声が響いた。
 そのすぐあとに階段の踊り場横の扉が開くと、
「んじゃまたきます~」
という男の人の声がした。
 すぐ直後に一人の中年の男性が大きなバッグを抱えて扉から出てきた。

 その男性は私に気が付いて、
「あ、ああごめんね。待たせちゃったかな。どうぞ」
そう言って狭い踊り場の片隅へよけながら、扉をもって待ってくれた。

京也はつい、
「あ、いえ、ありがとうございます――」
と答えた。

 扉から入ると、中には棚にぎっしりと何かが積まれている部屋だった。テーブルが6つぐらいか。それぞれに椅子が4脚ほど添えられている。
 そのうちの一つに3人ほどが何かを囲んでいるのが見える。

「じゃあ、僕は帰るから、また出会うことがあったらその時はよろしくね」
そう言って、その男の人は階段を大きなバッグを抱えながら降りて行った。

(なにがよろしくなのだろう?)
京也はその時のその男の人の言葉の意味がしばらく分からなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...