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第377話 神ボウンと『付与能力(ギフト)』
しおりを挟むクリストファーの声で、ソファに腰かけていた白髭のじいさんに、皆も気づいた。
なぜ部屋に入った時にすぐ気づけなかったかと不可思議に思うものが数名いる中で、ユルゲンとクリストファーだけは気が付いていたようで、
「部屋に入った時から異様な存在感を感じておりましたが――。キール様、会わせたい方というのはこちらのご老人ですな?」
とユルゲンもクリストファーの後に続く。
「ほほほ、わしの存在に気付いたのは、男性陣だけじゃったか――。存在感を薄くして様子を見ておったのじゃがな……。若いの、そなたが口にした名はかつてのわしの名じゃ。今は「神ボウン」である――。それに、そっちの初老の男、お前、ただの執事ではないな――。纏っている気が、役人のものではないぞ?」
神ボウンは、そう値踏みをするように口を開いた。
「ボウンさん、そういう回りくどいことはいいって。それより、なんだよこの部屋。僕が来るときはいつもただの真っ白い空間なのに――」
「あほ! 麗しき女性を3人も迎えるのに何もない殺風景な空間でよいわけがなかろう! こちらにもそれなりの『準備』というものがあるのじゃ!」
「――あ! なんだよ? お茶と茶菓子まであるじゃないか!」
「お前の分は無いぞ?」
「え? なんで? どうしてさ?」
「これらは女性専用じゃ」
「カミサマのくせにケチだよな?」
「うるさいわい! お前にはそんなものより重要なものを一杯やったじゃろう!」
「え? 何ももらってないよ?」
「かーっ! この恩知らずめが! お前の素質は誰によって与えられたものじゃと思うておる!」
「え? だって、あれは、ヒルバリオが――」
「ただ単純に選んだら自動的についてくる、「お子様ランチのおまけ」みたいに貰えるものじゃとそう思っておったか!?」
「え? そうじゃないの?」
「そんなわけあるか!! あれはわしの力で付与しておるものじゃ!」
「あ、あの!!」
と、アステリッドが叫んで割り込む。
「――キールさん、そのおじいさんって、もしかして転生のおじいさん? なのですか?」
「おお、アステリッド・コルティーレ。お前のこともよく覚えとるぞ? 前世の藤崎あすかは残念じゃった――。が、今度の人生はなかなかにいい人生を歩んでおる様子。これからもお前のことはよく見ておるからな? 頑張るんじゃぞ?」
と、ボウンがアステリッドに返す。
「転生? 転生とは何のことですの?」
とはフランソワだ。
「フランソワ・エル・ヘラルドカッツェ――。お前も自分で道を切り開きつつあるようじゃな。わしの与えた「能力」もそろそろ、真価を発揮しかけておる様子――。お前の人生もこの先が楽しみじゃな? あーあー、今はもうヘラルドカッツェではなく、ヴェラーニであったな?」
とボウンがフランソワに返す。
「能力だって――? え? もしかしてじゃあ、フランソワさんも――?」
「え? フランソワさんも、転生者? なのですか?」
と、アステリッドとキールが顔を見合わせる。
「――『能力』って、もしかして――?」
「ああ、そうじゃ。お前が『警鐘』と銘打った能力のことじゃ。まあ、実際は『アラートベル』という能力なのじゃが、まあ、そんな名などどうでもよい。お前の人生にとって大いに助けとなるであろう」
「あ――。そうだ! ボウンのおじいさん! 私の能力って、なんなのですか? 私はあまりそういう特別なものを感じてないんですけど――」
と、アステリッドが詰め寄る。
そうなのだ。藤崎あすかが何を選んだのか? アステリッドには全く記憶がなかった。
「アステリッドや。『それ』はまだじゃ。お前の「能力」はこれから花開くかそのまま開かぬか。それはこれからのお前の行動に掛かっておる――。今はそれだけ覚えとりゃいい」
と、ボウンはそう返すにとどまる。
「ミリアとクリストファーとユルゲンさんは、『新生魂魄』という訳か……」
と、キールがぼそりと呟いた。
「『しんせいこんぱく』?」
と、ミリアが受ける。
「ああ。今回が初めての人生の人たちの魂のことだよ。ミリアたちは前世がない、新しく生まれ出た魂を持っているってこと、だね」
と、キールが返す。
「つまり、私たち3人にはそんな特別な「能力」は無いということね?」
と、ミリアがさらに返した。
「いいや――。ミリア・ハインツフェルトよ。それは違うぞ? お前たち新生魂魄にはむしろ転生魂魄にはない無限のものを持っておると言ったほうがよいじゃろう」
「え? 無限のもの――?」
「可能性――ですね」
と、クリストファーがこの問いの答えを解き明かした。
「さすが、『ラアナの神童』。その通りじゃ。お前たち新生魂魄はあたらしい「能力」を生み出す無限の可能性を持っておるのじゃ。それはお前たちが人生をかけて探し当てるものなのじゃよ?」
神ボウンはそう言って顎の髭を撫でた。
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