379 / 437
第379話 クリストファーの推理②
しおりを挟む「フランソワの話や、ヒューロ院長の話などから推察すると――」
と、クリストファーが続ける。
仮に、そのリューデス・アウストリアが何らかの目的で「魔法具」を集めているとする。
とすれば、その収集依頼はヒューロに伝えられるはずだ。ヒューロは自分の配下の中から宝物探索が得意なものに依頼するだろう。もしくは、口の堅い者か、だ。
そしてその白羽の矢が「謎の男」に立った。
しかし実はその「謎の男」はヘラルドカッツの諜報員で、「魔法具」はヘラルドカッツ国家魔術院が用立てていた――。
そう考えるのがある意味素直な見方だろう。
つまり、「魔法具」はリューデスの手元にある、ということになる。
「――もし、僕が救えなかったその魔術師が「謎の男」だったとして、彼はいったい何のためにリューデスの屋敷に忍び込んだんだろう?」
と、キールが疑問を差し挟んだ。
確かに変だ。
クリストファーは少し考え込んだ。
「魔法具」を回収にむかった? いや、それなら初めから渡さなければいいだけだ。わざわざ渡す意味がわからない。
渡すことで何か得することがあるとすれば、単純にヒューロ院長とリューデスの関係がより親密になるということで、ヘラルドカッツ国家魔術院が関与していることを知らないリューデスがヘラルドカッツ国家魔術院に恩義を感じたり、評価を上げることはないはずだ。
それにキールさんの話から察するに、攻撃を仕掛けたのは「謎の男」の方だ。
「――リューデスを殺そうとした……、というのはどうでしょう?」
クリストファーが「問い」に「回答」を返す。
「――なるほど。そうなるとその指示はレイモンド院長からということになるだろうね。つまり、レイモンド院長はリューデスを殺そうとしていた、ということになるわけだ」
キールさんが整理する。
しかし、クリストファーにはまだ不明な点が残っている。何のために、リューデスを殺害しようとしたのか? その動機がはっきりしない。
「――わからない、ですね」
とクリストファーが応じる。
「わからない? それは、レイモンド院長が指示したかわからないってこと?」
とはミリアの言だ。
「ううん。たぶん、レイモンド院長が指示をしたのは間違いないと思うんだ。ただ、どうしてそんな指示をしたのか、その理由、動機がわからない」
とクリストファーは答えた。
「――ところでクリストファーはそのレイモンド院長には会ったことはあるの?」
と、キールはすこし見方を変えようと試みた。
「ええ。何度かお出会いしてます。ですが、そんなに自分の利益に固執するような雰囲気には見えませんでした。どちらかと言えば、そうですね、ニデリック院長に近い、そんな気がします」
「え? 教授は、レイモンド院長が何やら画策していることをわたくしから聞いてもなお、そう思っておられたのですか?」
「――ごめん、フランソワ。君のことを信じていないわけじゃないんだ。ただ僕にはレイモンド院長が何かを守ろうとしていたんじゃないかってそう思えるんだよね」
「守る?」
「うん。だから君がレイモンド院長の周辺を調べていても君に危害を加えることはないだろうとそう思っていたんだよ」
「――それで、私を自由に放置していた、と?」
「殿下――。旦那様は常にご心配なされていましたよ? 私にいつもよろしく頼むと仰っておいででしたから。それゆえ私は、殿下をお守りする業務に専念できました。幸い、危機的な状況は訪れませんでしたから、何よりです」
とは、ユルゲンの言葉だ。フランソワがクリストファーに抱いた懐疑心を慮っての言葉だろう。
「――教授は、そこまでご存じの上でわたくしと……」
結婚したのか? と、問いたかったのだろうが、その先は声にはならなかった。
ただ、フランソワは感極まって顔を伏せ肩を震わせている。
「――フランソワ。君には本当に感謝している。僕は、ヘラルドカッツに来た時本当に独りぼっちだった。たしかに国家魔術院の皆さん、特にルスランさんには気を配ってもらってたけど、自分のチームを立ち上げるまでは、僕は攫われてきたただの学生に過ぎなかったんだ。周囲の人たちはみんな僕の知らない人ばかりで、僕の味方は一人もいなかった。でも、君だけは違った。本気で僕を頼りにしてくれ、僕に寄り添ってくれた。君に出会ってなかったら、僕はたぶん、ここに戻ってこれなかったと本気でそう思っている。――ん? そうか、そうだ。『守る』ことが目的だったんだ……」
クリストファーの表情が何かに気付いたように輝いた。
「気づいたようだね、クリストファー。そう、彼は『守る』ためにリューデスを殺せと命じたんだ。この世界を守るために、ね」
「世界を、守る? どういうこと? ちゃんと説明して、キール」
ミリアが詰め寄る。アステリッドも、気をようやく取り直したフランソワも、そして、終始寡黙に押し黙っていたユルゲンも、キールの次の言葉を待っている。
「ふん、ようやく答えが出そうじゃな――。誰が敵で、誰が味方か、がのぅ」
と、神ボウンが言った。
「――でも、レイモンド院長のやり方ではリューデスは止められない……。おそらくリューデスは僕らがこれまでに出会ったどんな敵よりも強くて賢い魔術師だ」
キールの言葉には覚悟の色が込められていた。
それは、ミリアもアステリッドもクリストファーも、今までに見たことはないと思えるほどに、真剣で深刻な表情だった。
0
あなたにおすすめの小説
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる