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第385話 リューデスの発見と「神の意思」
しおりを挟むリューデス・アウストリアは嬉々として興奮していた。
あの術式を完成させるためにはもう一つの「魔法具」が必須だった。しかもそれは世の中に存在せず、作り出さなければならないものなのである。
そしてその素材はある一定以上の魔力量を持つ魔術師の体でなければならない。
『人器』――。
人の体内に限界まで魔力を注ぎ込んだ生きた『器』。
実は人が体内に宿せる魔力量が人によって異なるのは周知の事実であるのだが、その「限界」が意外と多いことはあまり知られていない。というのも、魔術師は自身の制御できる量の魔力量しか体内に宿すことができないからである。
自身の「限界」が、その「含有魔力量の限界」より先に来るというわけだ。
然れば、もしその術者が限界を超えた魔力量を体内に取り込んだ場合はどうなるか? 術者は自身の体内の魔力量を制御できず、流脈が損なわれ、精神に異常をきたすと言われている。精神に異常をきたす、というより、大抵の場合は氾濫して自身の存在を保てなくなる、つまり、体ごと「爆死」するらしい。
だが、「アカルニックの法衣」があればこの問題を解決できる。
「アカルニックの法衣」は魔力領域を遮断する「魔法具」だ。着用した人体は一つの「領域」となり、外界と隔絶される。これによって、体内の魔力が外界へ戻ろうとする力が働かない。つまり、「媒体」のなかに押し留めて置けるということになる。
もちろん、その「媒体」がすでに精神崩壊を起こし、すでに「人」ではなくなってしまうのは防ぎようがないが。つまりこれこそが『人器』、「人体で作った容器」だ。
この侵入者、なかなかの魔術師だったようで、今回は必要魔力量を充填できそうだ。
これまでに何度か(何人か)試してみたが、そのすべてが必要量を充填するには至らなかった。
「アカルニックの法衣」は一着しかない。
つまり、用を為さないものにいつまでも着せておくことは出来ない。
リューデスは仕方なく「法衣」を剥ぎ取る。そうした時の「その術者だった体」が体内からあふれ出す魔力と共に空中へ拡散してゆく様は、生命の儚さ、魔力という神秘の力の美しさを目にすることができる数少ないイベントであり、目を楽しませてくれるものであったが、さすがに何度も見ていると飽きも来る。
そうしてさらに何度か繰り返してきたが、ようやく、その「器」が手に入ったのだ。
(これですべての準備が整った――。前にこの術式を試みた魔術師は人間だったと言われているが、その者は運用を誤った。異界の者を呼び出すための「門」を開いたまではよかったが、それらを制御する、支配する力を持っていなかった為、それら「魔物」どもは今もなお、この世界に出現しては破壊を繰り返している。しかし――)
――『神の支配』、私がそう名付けたこの王冠の形をした「魔法具」を持つ私であればそれが可能になる。
この「魔法具」を発見したのは本当に幸運だった。いや、「神の導き」であろう。
見つけた場所は、西の海洋に浮かぶ小さな島だった。
どうしてこれがそこにあったのかなどはリューデスの興味の範疇ではない。大事なのは、それを発見したのがリューデスであったという事実の方だ。
そう、世界中の誰でもない自分だけがこの「力」を手に入れることができた。これを「神の意思」と言わずなんと言えようか。
最初はただの王冠だと思っていた。が、試しに被ってみると、何か分からないが「強い」力を感じる。そして、折よく、魔物が出現した。リューデスがこれに対応しようと魔力を充填した時にそれが起きた。
王冠が輝き、魔物の内の一体と「心が通じた」。奇妙な感覚だったが、その魔物が自分の意志に従って動くという「確信」が沸く。
リューデスは試しに、その一体の魔物に「命じた」。隣に立つもう一体の魔物を「斬り殺せ」と。
すると、その魔物は、即座に行動を起こし、隣に立つもう一体の魔物を一刀のもとに切り伏せたのである。
その魔物はまだ、切り伏せられた一体の魔物の横におとなしく佇んでいる。
そこでリューデスは次の命令を下した。
「自害せよ――」と。
結果は予期していた通りだった。その魔物は自分の首に剣の刃を当て、引き裂いた。
魔力の消耗はかなりあった。一体の魔物を「支配」する力、それだけであればそれ程の能力とは言えないかもしれない。なぜなら、「一体」支配したところで大規模戦闘であればそれほど大きな効果は得られないだろうからだ。
だが、違ったのだ。
この「王冠」の効果に限界はなかった。いや、あるのかもしれないが、今のところそこまで至っていない。
その後、リューデスは様々な状況で「試験」を繰り返したが、判明したのは、「消費魔力量に準ずる」ということだった。
つまり、無尽の魔力量があれば、限界は無限である可能性がある――。
リューデスは、この力があれば、昨今レントが発明した「電力技術」に太刀打ちできる、いや、蹂躙することができるという結論に至ったのである。
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