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第396話 バレリアの『古代図書館』
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クルシュ暦371年11月20日――。
キールたちエルレア訪問組が南海の大洋の上にまだいるころ、エリザベスたちバレリア探索班もまた、挑戦の時を迎えていた。
『英雄王』がエランの港へ移動するにあわせて共にバレリアまで同行していたエリザベスたち遺跡探索班は、その後、遺跡内部の探索拠点「円盤の部屋」まで降りていた。
エリザベスが今回持ち込んだのは、改良型の発電機だ。
この発電機は、初代からすでに10回目のアップデートを迎えており、発電力も大幅に上がっていたが、度重なる「パソコン起動実験」を行ってゆくうちに、当の「パソコン」の方が悲鳴を上げてしまった。
最後にこの発電機を持ち帰った「パソコン」に接続して起動実験をした際、その「パソコン」内部の部品が発火し、焼失してしまったのだ。
原因が何なのかを特定する必要が生じた。単純に電力量が大きすぎたのか、それとも部品の劣化によるものなのか、他に原因があるのか、調べなければならなくなったわけだ。
「――よし、これでOK。これで同じことが起きれば、それはそれでまた考えなくちゃいけないわね」
エリザベスは配線を確認すると、そう言った。
「うーん。特に問題ないように思えるんだけどなぁ。動いてくれたらいいけど――」
と、アステリッドが応じる。
「これ動いたら、どうなるのさ?」
と、聞いたのはハルだ。
「どうなるってのはちょっと一言では言いにくいんだけど、分かり易く言えば、「古代の図書館」の門が開くっていうか、もちろん、物体的なものじゃなくて、観念的なものだけど――」
「『図書館』?」
「うん。この箱の中にいっぱい「本」が詰まってて、その『本』が読めるようになるって言えばいいのかな――」
「この中に「本」が詰まってるの?」
「実際に入ってるのは「データ」っていう電子の情報なんだけど、電気が通うことでそれが息を吹き返すっていうか……」
「「本」が息を吹き返す――。なんか、すごいんだね?」
ハルには良く分からないことだらけだが、とにかく、大変な代物であることは伝わっている。
「よし、じゃあ、いくわよ?」
エリザベスが気合を込めた声を発した。
パチン!
と、スイッチの入る音がする。
ブン……。
と続いてこれまでにも何度も聞いた起動音が聞こえる。
ジ、ジジ、ジジジ、ジ――。
まだ画面は黒い闇のままだ――。
ジ、ジジジ、ジジ、ジジ――。
カタカタカタ、カタカタカタ……。
「え? 初めて聞くわよこの音は――」
エリザベスが固唾をのんで画面を見守りながら言った。
と、次の瞬間、とうとう画面から「光」があふれ出した――。
「うごいた?」
「動いてます!」
「え? え? なに? どういうこと?」
「本当に、動いてる?」
「ええ、パソコン自体は起動しています。でも、何だろうこの文字――」
画面に現れた文字は、アステリッドには意味不明なものだった。まったく見たことが無い形態の文字のように見える。もちろんそれは「前世の記憶」を辿っても見当たらない。
「これは――私も見たことが無い古代文字……なのかしら?」
と、エリザベスは黒い画面に並んでいる文字らしきものを見て言った。
「『この計画を実行するためには鍵を入れろ――』。一体何のことだろう?」
と、ハルが呟く。
「え? いま、ハルちゃん読んだよね? 読めるの?」
アステリッドが隣でつぶやいたハルに向かってそう問うた。
「え? ああ、だってこの文字、聖エルレア文字だから――。あ、えっと、聖エルレア文字ってのはエルレアの古い文字で、一応学校で習うんだよ、聖典がこの文字で書かれているから――」
「すごい――。お手柄よ! ハル! あなたがいてくれたおかげで、これが何を意味してるか分かるかもしれないわ!」
と、ハルの説明の途中でエリザベスががばぁとハルに抱きついた。
「わ、わわっ! なに? どういうこと? なんなのさぁ! わかるように教えてよ~」
ハルはただ文字を読んだだけでここまで褒められたことにただただ困惑するだけだった。
――『計画を実行するためには鍵を入れろ』。
アステリッドはそれがどういう意味かなんとなく分かっていた。しかし、そうなるとまた新たな『問題』が現れたことになる。
喜ぶエリザベスに対して、どう声をかけようか思案していた。
『計画』を実行するためには『鍵』を入れろ――。
つまり、『鍵』を探さねばならない。
それに、この文字がハルの知っているその聖バレリア文字だとすれば、その『鍵』も聖エルレア文字で入力する必要がある可能性もある。
「聖典」――。
そう、ハルは言った。そもそもその「聖典」ってどういう書物なのだろう?
「ハルちゃん、その「聖典」ってどんなことが書かれているの?」
「え? ああ、言うなれば、おとぎ話だよ? 昔の偉いお坊さんが子供たちにどう言ったか――とか、昔むかしの古い時代に現れた魔物をどうやって倒したかとか、そんな話――」
なるほど、伝説や伝奇のようなものか――。
アステリッドは、なんとなくだが、その聖エルレア文字の「聖典」にヒントがあるのでは、と直感的に感じていた。
キールたちエルレア訪問組が南海の大洋の上にまだいるころ、エリザベスたちバレリア探索班もまた、挑戦の時を迎えていた。
『英雄王』がエランの港へ移動するにあわせて共にバレリアまで同行していたエリザベスたち遺跡探索班は、その後、遺跡内部の探索拠点「円盤の部屋」まで降りていた。
エリザベスが今回持ち込んだのは、改良型の発電機だ。
この発電機は、初代からすでに10回目のアップデートを迎えており、発電力も大幅に上がっていたが、度重なる「パソコン起動実験」を行ってゆくうちに、当の「パソコン」の方が悲鳴を上げてしまった。
最後にこの発電機を持ち帰った「パソコン」に接続して起動実験をした際、その「パソコン」内部の部品が発火し、焼失してしまったのだ。
原因が何なのかを特定する必要が生じた。単純に電力量が大きすぎたのか、それとも部品の劣化によるものなのか、他に原因があるのか、調べなければならなくなったわけだ。
「――よし、これでOK。これで同じことが起きれば、それはそれでまた考えなくちゃいけないわね」
エリザベスは配線を確認すると、そう言った。
「うーん。特に問題ないように思えるんだけどなぁ。動いてくれたらいいけど――」
と、アステリッドが応じる。
「これ動いたら、どうなるのさ?」
と、聞いたのはハルだ。
「どうなるってのはちょっと一言では言いにくいんだけど、分かり易く言えば、「古代の図書館」の門が開くっていうか、もちろん、物体的なものじゃなくて、観念的なものだけど――」
「『図書館』?」
「うん。この箱の中にいっぱい「本」が詰まってて、その『本』が読めるようになるって言えばいいのかな――」
「この中に「本」が詰まってるの?」
「実際に入ってるのは「データ」っていう電子の情報なんだけど、電気が通うことでそれが息を吹き返すっていうか……」
「「本」が息を吹き返す――。なんか、すごいんだね?」
ハルには良く分からないことだらけだが、とにかく、大変な代物であることは伝わっている。
「よし、じゃあ、いくわよ?」
エリザベスが気合を込めた声を発した。
パチン!
と、スイッチの入る音がする。
ブン……。
と続いてこれまでにも何度も聞いた起動音が聞こえる。
ジ、ジジ、ジジジ、ジ――。
まだ画面は黒い闇のままだ――。
ジ、ジジジ、ジジ、ジジ――。
カタカタカタ、カタカタカタ……。
「え? 初めて聞くわよこの音は――」
エリザベスが固唾をのんで画面を見守りながら言った。
と、次の瞬間、とうとう画面から「光」があふれ出した――。
「うごいた?」
「動いてます!」
「え? え? なに? どういうこと?」
「本当に、動いてる?」
「ええ、パソコン自体は起動しています。でも、何だろうこの文字――」
画面に現れた文字は、アステリッドには意味不明なものだった。まったく見たことが無い形態の文字のように見える。もちろんそれは「前世の記憶」を辿っても見当たらない。
「これは――私も見たことが無い古代文字……なのかしら?」
と、エリザベスは黒い画面に並んでいる文字らしきものを見て言った。
「『この計画を実行するためには鍵を入れろ――』。一体何のことだろう?」
と、ハルが呟く。
「え? いま、ハルちゃん読んだよね? 読めるの?」
アステリッドが隣でつぶやいたハルに向かってそう問うた。
「え? ああ、だってこの文字、聖エルレア文字だから――。あ、えっと、聖エルレア文字ってのはエルレアの古い文字で、一応学校で習うんだよ、聖典がこの文字で書かれているから――」
「すごい――。お手柄よ! ハル! あなたがいてくれたおかげで、これが何を意味してるか分かるかもしれないわ!」
と、ハルの説明の途中でエリザベスががばぁとハルに抱きついた。
「わ、わわっ! なに? どういうこと? なんなのさぁ! わかるように教えてよ~」
ハルはただ文字を読んだだけでここまで褒められたことにただただ困惑するだけだった。
――『計画を実行するためには鍵を入れろ』。
アステリッドはそれがどういう意味かなんとなく分かっていた。しかし、そうなるとまた新たな『問題』が現れたことになる。
喜ぶエリザベスに対して、どう声をかけようか思案していた。
『計画』を実行するためには『鍵』を入れろ――。
つまり、『鍵』を探さねばならない。
それに、この文字がハルの知っているその聖バレリア文字だとすれば、その『鍵』も聖エルレア文字で入力する必要がある可能性もある。
「聖典」――。
そう、ハルは言った。そもそもその「聖典」ってどういう書物なのだろう?
「ハルちゃん、その「聖典」ってどんなことが書かれているの?」
「え? ああ、言うなれば、おとぎ話だよ? 昔の偉いお坊さんが子供たちにどう言ったか――とか、昔むかしの古い時代に現れた魔物をどうやって倒したかとか、そんな話――」
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