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第431話 魔術師と神の会談②
しおりを挟む「次に、二つ目は――」
キールは質問を続ける。
二つ目は、魔族についてだ。
「魔獣・魔物の類い」をまとめて魔族と呼称するのがこの世界の習わしとなっている。しかしながら、奴らの正確な正体は未だ判明していない。
どこから現れるのか、何が目的なのか、また、いったい何ものなのか――?
これが二つ目の質問だった。
この世界では、言葉が通じ会話が成立するもの同士を「人類」と呼んでいる。現在「人類」と規定されている種族は3つ。「レント(人)族」「エルルート族」「ドラゴン(竜)族」だ。
ドラゴン族が現れるまでは、「レント」と「エルルート」のみが「人類」であった。いち早く、来たる「レントとの邂逅」に備え『共通語』を獲得しておいたエルルートとレントの交流はすんなりと進んだ。
それはごく自然なことだ。
互いに同じ言語を使い意思疎通がまったく障害なく可能であれば、「会話」が成立するのは当然のことだからだ。いわゆる、違う国の人という程度の認識だ。
この段階ではまだ、『共通語』が使用できるかどうかが「人類であると規定するものさし」であったろう。
しかし、エルルート族が公に異種族であることが明かされ、レントが(公式には)未踏の、新たな大地からの来訪者であると公表した以降、この世界は「大世界」へと拡がった。
つまり、これからも新たな「人類」が発見される可能性があるいうことになり、そして、3つ目の種族、ドラゴン族が現われた。
このドラゴン族は『共通語』はもちろん、そもそも、意思疎通に「言葉」を使用する必要すらない特殊な種族である。
「エレメンタル・ボディ」である彼らは、基本的に意思疎通に「魔力」を使用している。分かり易く言えば、「直接頭に語り掛けることができる」と言えばよいか。
そんな彼らとの「会話」にはもはや「言葉」は必要ではない。いや、そう言うと語弊があるだろう。
ドラゴン族は相手との会話を幾たびか行うことでその人類が使用する「言葉」を理解し、それを「思念波」として魔法を利用して語りかけてくる、超高度な知能と魔法的素質を持ち合わせる種族である。
つまりは、相手が「言葉」を持つ種族であれば、ドラゴン族は「会話」が可能であるということなのだ。
これにより、「ものさし」の幅が大幅に拡大されることになる。
これまでは『共通語』が「人(類)かどうか」を推し量るものさしであったところから、『どのような形態であれ言葉を獲得している』というところまで拡がった。なぜなら、ドラゴン族がいる限り、彼らを介して「会話」が可能になるからに他ならないからだ。
それに、悠久の時を生きる原初の生物であり、現在は肉体という物質界からも解き放たれた彼らドラゴン族が「死滅する」可能性は非常に低い。
ところが――。
「魔族が言語を持っているかどうかについてはそのドラゴン族でもわからないのだと、ミリアがジョドから聞いているんだ。だから僕たち人類は彼ら魔族を人類と認識できないんだ――」
キールの言っていることは、「間違っていない」。
言語形態の壁はドラゴン族の出現によって突破された。にもかかわらず、意思の疎通が不可能なもの、それはつまり、動物や植物、魚類などの人類以外の生命体と同じなのである。
その上、魔族は「必ず」敵対する。こちらから危害を加える意思が在るか無いかは「無関係」に襲い掛かってくる。
そのようなものは動物たちよりも始末が悪い。もちろん、動物や虫類のなかには人類を襲うものもいる。が、基本的にはその行動は自己防衛本能から来るものと思われるが、魔族の行動はその範囲を明らかに超えている。
その行動からは本能的行動ではない、明確な意思を読み取れる気がしてならないのだ。
――人類を滅せよ。
そういう大きな意思が働いているのではないだろうか、と、キールは推察している。
白髭じじいの回答は「答えられない」だった。
「――じゃが、お前の考えていることは『摂理』じゃ。動物たちに、転生の可能性はない。それは、彼らが『魂魄』を持たないからだと言われている。そして、わしの知る限り、魔物もまた転生してはおらぬ――。これ以上はおまえたち「人類」が解答を求め研究するしかないじゃろう。やるかやらないかはまた別の話じゃがの」
と、白髭じじいが言った。
「魂魄がない――か。桐雄やあすかが住んでいた「地球」の物語だと、魔族と人族が話をしたり、時には仲間になったりする設定のものも多いけど、この世界でそれは期待薄かもしれないなぁ」
かつて、この白髭じじいが言ったのを思い出す。
――魂魄は「文明」を持つもののみに宿っている、と。
もし魔族が文明を持つ者たちならば、彼らにも魂魄が存在し、「転生」するものがいてもおかしくはない。
それが無いとなると、やはり魂魄を持たない、つまり、「文明を持たない種」であるといえるだろう。
今のところ「魔族」に関してはこれより進展は無さそうだ。次の質問に移ろう、とキールは考えた。
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