お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。

永礼 経

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第435話 地球と大世界

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 ここは地球だ、とボウンが宣言した。

 が、それでもおかしなことはまだ残っている。地球だとすれば、『魔法』は存在しないはずなのだ。
 
 キールの前世、原田桐雄は、前々世ヒルバリオが転生する際に『膨大な魔術の素質』を選択したことによってその素質を持って生まれた。だが、その地球には「魔法」は存在していなかった為、その素質は無駄なものだったのだ。
 これはボウンが過去にそう断言している。

 ところがだ、それでもボウンはここが「地球」だというのだ。
 その結果導き出される答えは――。

「違う世界線……、なんだろ?」
と、キールがボウンに告げた。
「ここは地球だけど、僕らの生きていた地球とは違う。初めは全く次元や場所が違う別の星だと思っていたんだ。でも、あまりに地球と環境が似すぎている。いや、全く同じだと言ってもいい。ただ、存在している生命体や概念や科学、魔法もだけど、そう言った「設定」が違う。これは、僕らの知っている地球とは違う歴史を歩んだからなんじゃないかと、僕はそう結論付けた。ボウンさん、これで間違いないよね?」

 ボウンはじっとキールを見返し、やがて、意を決したように話し始めた。

「小僧、お前の言う通りじゃ。今お前の生きている世界は、前の地球と同じ場所じゃが、世界線が違うのじゃ。つまりは、現在、二つの「地球」が存在しているというわけじゃな。転生は基本的には二つある。同世界転生と異世界転生じゃ――」

 同世界転生とは、同じ世界に生まれ変わることをいうのだという。つまりは、「輪廻転生」というやつだ。
 これも場合によっては、「選択」による素質付与を受けて生まれ変わる。ただ、前世の記憶は多くの場合、解放することができない程、魂の奥深くに格納されてしまう場合が一般的だ。

 そうして、もう一つが「もう一つの地球」へと生まれ変わる、異世界転生だ。
 これは双方向性があり、「地球」から「大世界」へ、または「大世界」から「地球」へと転生するという。

 キールが出会った転生者が、全て「地球人」だった理由は、同世界転生の場合の多くが前世の記憶の影響を受けないで生活しているからに他ならない。つまり、気付いていないのだ。本人もキールも。

「あっ! そう言えば、前にメイリンさんも、不思議な力を持っているみたいなこと言ってたよね? あれ、ボウンさんが僕に語り掛けてた時だろう? 彼女ってもしかしてその同世界転生者なんじゃない?」

 ここまで話を聞いたキールが数年前のカインズベルクで世話になった下宿宿の主人、メイリンさんのことを思いだしたのだ。
 彼女には人の考えていることを一定の範囲で見抜く力が備わっていると、ボウンさん(の声)がキールに伝えたことがあった。
 そのことを思いだしたのだ。

「ほう、あの時のことを覚えておったか。そうじゃ、彼女は同世界転生者じゃ。もちろん自分の素質、『ギフト』については全く気付いていないのじゃがな」

 これで、いろいろなことが少し判りかけてきた。
 
 つまり、「地球」という世界とこの「大世界」という世界は、元は同じ起源だったのだが、世界線(ボウンさんによると因果律というらしい)が違うことで二つの世界に分かれたのだろう。
 魔法の無い「地球」と、魔法の存在する「大世界」とに、だ。

 しかし、同じ起源である限り、化学反応は同じ結果を生む。

 おそらく「100日戦争」以前の旧人類は地球と同じような科学の発展を遂げたのではないだろうか。そうして、その結果、ドラゴン族の怒りを買ってしまった。旧人類も科学力を駆使して立ち向かったのだろう。が、ドラゴン族の強大な力の方が勝り、絶滅してしまった――そういうことではないだろうか。

「ボウンさん、一つ聞いていいかな……」
「さっきからいくつも聞いてるじゃろうが?」
「いや、まあ、そうなんだけどさ、「地球」にもドラゴン族は存在してるの?」
「――お前はどう思う?」
「――魔法が無い世界。つまり、魔素が存在しない世界ってことだ。どうして「地球」には魔素が存在しないのか、それも気になるけど、ボウンさんが言うのだからそれは嘘じゃない。だから、ドラゴン族は存在しない――と思う」
「ほう。それはどうしてじゃ?」
「ドラゴン族は魔素と親和性が高い種族だ。それはエルルートと比べようもないほどにね。だから悠久の時を生き、アストラル・ボディという術式すら可能にした。つまり、彼らは魔素のある世界だからこそ存在し得るんじゃないかとそう思った」
「なるほどのう。まあ、そんなところじゃな。今のお前たち人類の知識であればその程度の理解で充分じゃ。――お前の言う通り、「地球」にはドラゴン族は存在しない。どうじゃ? 安心したか?」

 キールは少し考え込んだ。
 ドラゴン族が存在しないということは、この「大世界」のように「100日戦争」は起こらないということだ。
 だったら、人類は滅亡しないのだろうか――?

「――いや、そんなことはないはずだ。むしろ、歯止めが利かなくなった人類の科学はいずれ抑えが利かなくなり、暴走し、世界の秩序や摂理を破壊する……、なんてことにならないという保証はない、と僕は思う」

 古代バレリアの世界、この「大世界」の旧人類はおそらくのところ「原子力」の域まで到達した時点で滅亡していると推測できる。

 「地球」はどこまで行けるのだろう――。

「あ! ちょっと待って! 旧人類は宇宙には出たの!? 「地球」では、宇宙開発が進みだしていた。ってことは、この世界でもそこまで達していてもおかしくないはず――」

「――小僧、時間じゃ。これ以上は今は話せん。いずれまた話せるときが来るかもしれんな。まあ、今はそんな事よりここでやるべきことを考えるのじゃな。ほれ、もう行け、わしもしばらくここを離れることにする――。こ、ぞう……ま、たな……」

 そう言ってボウンさんは部屋ごと消失してしまった。

 キールは何もない白い空間に取り残された。

(あ、あのじじい、消しやがった――) 
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