お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。

永礼 経

文字の大きさ
18 / 437

第18話 リカルドという男

しおりを挟む

 エドワーズ・ジェノワーズは、爪を噛んでいた。
 あの青年を殺そうと差し向けた大男のウルが精神異常になっていたためだ。

 それは突然のことだった。
 依頼をした翌々日の朝、ウルと街角で出会ったエドワーズはこの大男の様子がおかしいことに気づいた。
 地面に転がったかと思うと、ぼーっと天を眺めたり、座り込んで地面に頭を打ち付けたり、「おおう、おおう――」と訳の分からないうめき声を上げたりしている。
 
 恐る恐る近づいて声をかけたが、ウルはエドワーズの方を見ることすらなく、全くの無反応でふらふらと歩み続けている。

(狂っていやがる――。何があったんだ……?)
そう思ったエドワーズだったが、これ以上ウルと接触していて万一あの青年との関係に足がつけばこちらも立場が危うくなる。
 エドワーズはそれ以上ウルと関わるのは危険だと察し、その場を離れた。

(あの青年、ルイの知り合いのようだが、そう言えば前にルイも変なことを言っていたことがあったな。腕がないとか何とか言ってかなり怯えていたことが。あの時は気にも留めなかったが、ウルの様子といい、少し気になる。それに「あの顔」、あれはまさしくアイツ、ヒルバリオ・ウィンガードの顔だった――)

 ふぅっと大きく息を吐き、エドワーズリカルドは自分の過去を思い起こす。 
 あの時手に入れた4つの宝石は残り一つとなってしまった。
 
 一つ目は、今の名前を手に入れるために殺し屋を雇い、王都のはずれの一軒家を購入し、そこで街道の冒険者や行商相手に小さな酒場を開くのに使った。

 殺し屋を雇って密かに始末した、エドワーズ・ジェノワーズになりきるのに約10年を費やした。そして、周囲の誰もが自分をエドワーズと認識していることを確信したリカルドは、計画を次の段階へと進めた。

 王都の繁華街に、店を移したのである。しかし今度はただの酒場ではない。酒場には売春宿も併設している。この時二つ目の宝石を使った。店は豪華絢爛に装飾し、王国官僚のお偉方も上客として扱えるような意匠を凝らし、女どもも王都中の美女を取りそろえた。いささか無慈悲な手段も使ったが、そんなものは些細なことだ。女どもも今となってはその稼ぎに満足していることだろう。

 そこからまた10年後、貴族社会とのパイプを持ちたかったリカルドは、3つ目の宝石を使った。没落貴族の経済支援を名目にそこの令嬢と結婚をしたのだ。その貴族はすでに破産寸前であったため、娘をリカルドに差し出すことに何の躊躇ためらいもなかった。現在もこの貴族家、レインス家とは関係を築いている。二十歳そこそこの若い女ではあったが、容姿はそれほどでもない、いわば中の上程度だ。ただ、その体は充分に堪能させてもらった、やはり若い女はいい。息子もできた。バカ息子だが、まぁそんなことは俺の知ったことじゃない。俺は俺の人生だけ楽しければそれでいいのだから。

 これで宝石は残り一つとなった。

 しかし、これはおそらくもう使う必要はないだろうと思っている。
 十分な富と栄誉、貴族社会とのつながり、これだけあれば一般国民としては誰にも手が届かないほどの暮らしができる。あまり王国政府に近づきすぎると却って、足元をすくわれかねない上に、余計なしがらみにとらわれるかもしれない。ここまでの暮らしを謳歌しているというのに、国王の機嫌を取ってびくびくしながら生きるのはまっぴらだ。
 
 これからも、店に若い女を入れて、そのたびに楽しませてもらう。妻は飾りでもう若くはない。子もなした今となってははっきり言って用済みだが、特に俺のすることに口出ししない限りは、レインス家を利用するための大事な「パイプ」でもある。おそらくレインスの当主であり義父であるバリージョ・レインスはもう長くはない。あいつが死ねば当主は義弟のメイスに移る、この義弟は凡庸な男で女好きと来ている。まあそう仕向けたのは俺自身なのだがな。それなりに女をあてがっておけば俺に逆らうようなことはないだろう。

 ここまでは完璧だった。
 これでもう俺は後は死ぬまで、好きな女を抱き腹いっぱいうまいものを食い、凡人は俺にびへつらう。あとは若い女の上で死ねれば本望というものだ。そう思っていた矢先のことだ。
 アイツが現れた。
 キール・ヴァイス。ただの大学生だ。
 しかしそいつはヒルバリオと同じ顔を持ち、そして、時折俺に話しかけるさまはまさしくアイツが蘇ったものだと確信させるに足る。
 何より俺の“名前”を知っていやがる。

(アイツだけは、俺の人生をぶち壊しかねない……絶対始末しなくては――)

 そう思った、リカルドはある者へ届けるふみを書くためにペンを取った。出来ることなら、こいつらにだけは頼りたくなかったのだが、自分の身を守るためだ、背に腹は代えられない。

『至急、仕事を頼みたい。立春祭の日にあの場所で。


 翌日、それを王都の書簡配達人へ持たせた。充分な報酬を与えて――。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

処理中です...