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第2話 木こりのトール
しおりを挟むそれから数年が経ったある日のこと――。
「おい、トール! 今日も森の木こりかよ?」
「だってコイツ、武器が装備できないらしいぜ?」
「――え? そうなのか? でも、斧は振れるんだろう?」
「木こりの斧は戦斧じゃないからな? あれは、道具であって武器じゃないから大丈夫らしいぜ?」
「じゃあ、その木こりの斧で戦闘すればいいんじゃねぇのか?」
「出来なくはないだろうけど、それだといつまで経っても最底辺冒険者のままだろうなぁ」
トールの事情を知りながら、そんなふうに揶揄する、村の同年代の二人組がトールに聞こえよがしに声を掛けてくる。
トールはいつものことだと諦めがちに、
「――いや、木こり斧も魔物相手に振るうことはできないんだ。その瞬間、握れなくなるんだよ」
と、返してやる。
前に一度、道具なら装備できるのだからと、その木こり斧で魔物と対峙したことがあったが、その瞬間に、斧は手のひらから滑り落ちてしまった。
その後再度拾おうと試みたが、今度は触れることすらできなかった。
仕方なく戦闘するのを諦め、魔物から遠ざかる決意をし、再び斧を手に取ると今度は何ごともなく拾えた。
(やっぱり、「呪い」は本当なのだ――)
と、その時改めて思い知ったのだった。
それからは、森で木こりの技術を磨き、父の手伝いをこなしている。極まれに、魔物と遭遇することがあるが、そういう時には一目散に撤退するように心がけてきた。
そのおかげで、こうして今も生きている。
しかし――。
今日はそうはいかなくなった――。
トールは狂狼3匹に取り囲まれ、拳を固く握りながら、やっぱりやめておくのだったと後悔し始めていた。
ほんの少しの思いやり――。それがこんなことになるなんて――。
(せめて助けるのなら、人間の方がまだよかったな――)
そうだ。人間なら、命を落としたとしても、助けた人からいくらかのお礼金がもらえるかもしれない。そうすれば、両親も少しは報われるだろう。
もしくは、勇気ある木こりとして表彰されることもあったかもしれない。
しかし、トールが今救助したのは、人間ではない――。
もちろん、獣人族やエルフ族、ドワーフ族のような亜人種族でもないのだ。
(ちぇ。それにしてもアイツ、逃げ足が速いやつだな。もうこのあたりには居ないのかもな――)
そう、トールが割って入った直後、そいつはあっという間に姿を眩《くら》ましてしまったのだ。
つまり、俺が身代わりというわけだ――。
3匹の狂狼たちは、自分たちが必死で追い込んだスライムをまんまと逃がしてしまった張本人に対して、完全に怒りの念を燃やし、唸っている。
「わかったよ。ただ、俺も指をくわえてやられてやるほどの潔さは持ち合わせていないんでな? 最後まで抵抗はさせてもらう――」
そう宣言してみせたが、武器は装備できない――。
つまりは素手で出来ることをやるしかないのだ――。
「どこまで、出来るか――だな」
そう決意すると、トールは拳を振りかぶって目の前に並んでいる3匹の内の1匹に目掛けて、打撃を繰り出した。
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