素人作家、「自作世界」で覚醒する。

永礼 経

文字の大きさ
53 / 124

第53話 迷宮の異変

しおりを挟む

 シルヴェリアの冒険者ギルドに戻ったユーヒとルイジェンは早速「依頼の品」を提示する。

 今回のクエストは、慰めの迷宮のボス討伐宝箱の中身トレジャーを持ち帰ること、だった。

「えっと……、これはどういうことですか?」

 ギルドの受付嬢が目を丸くして問いかけてくる。
 ユーヒとルイジェンが差し出した「宝物」を見た第一声がそれだった。

「どういうことって、どういうことだよ?」
と、文字に起こせばどういうことなのかわからない言葉をルイジェンが返す。

「慰めの迷宮のボス部屋にいた【オウガ】を討伐後に出現した宝箱の中にはいっていた宝物です。おそらく、短剣だと思いますが?」
と、ユーヒ。

 宝箱の中身は一振りの短剣だった。
 やや小ぶりだが、意匠がなかなかに凝っていて、見た目的には結構高価なもののように見える。

「えっと、確認ですが、迷宮ボスは【オウガ】ですよね?」

 受付嬢がやはり何かに引っ掛かるようで再度確認を入れてくる。
 ユーヒとルイジェンは顔を見合わせて頷き合うと、ルイジェンが状況を話す。
 【オウガ】には違いないが、やたらと強かった。魔法で強化されたような形跡は感じられなかったが、ルイジェンがこれまでに対峙したどの【オウガ】よりも強力なモンスターだったと説明する。

「すいません。確認ばかりで申し訳ないのですが、その【オウガ】、棍棒を装備していませんでしたか?」

「ああ、棍棒だったな。そう言えば、【オウガ】の通常装備って――」
「大斧です――。棍棒を装備しているのは、【ダークオウガ】のほうです。白金級冒険者プラチナクラスの魔物です――」

白金級プラチナ――!?」
と、ルイジェン。
「え? だって、慰めの迷宮ですよね? たしか、あそこは銅級冒険者対象ダンジョンのはずですよね? ほら、この依頼書にもそう書いてあるじゃないですか」
とは、ユーヒだ。

「はい。慰めの迷宮で、【ダークオウガ】が目撃されたことはありません。今回はレアケース、ということなのでしょうか?」
と、受付嬢。

 いやいやいや、こちらに聞かれても、わからないよ。
 それより、この「宝物トレジャー」ではクエスト達成にならないってそんなわけ、ないよね?

 という意味のことを、もう少し丁寧な口調で告げるユーヒ。

「――あ、それは大丈夫です。ですが、規格外の魔物が現れたとなると、再調査が必要になるかもしれません。ああ、それはこちらの問題ですので、お気になさらず。少しお待ちください。支部長に報酬について相談してまいります――」


 それからしばらくして、先程の受付嬢が帰ってきて二人に告げる。

「えっと、協議の結果、クエストは問題なく達成とみなしますので、規定通り報酬をお支払いいたします。ですが、この「宝物トレジャー」は相当に魔力価値が高いものと鑑定されましたため、追加ボーナスとして、1500Gゴールドをお支払いすることになりました。今回の依頼達成報酬と併せて1600Gゴールドとなります」

「え!? そんなに!?」
「ほお!? それはありがたいな。いいのか?」

「はい。冒険者ギルドの報酬の査定は、成果主義です。成果に応じた報酬をお支払いするのがWSSの基本理念ですので。なお、この報酬が不服となれば、「トレジャー品」の受け取りは致しかねますがいかがいたしましょう?」

 確かに魔力価値が高い武器と言われれば手放すのが惜しい気もするが、かといって、短剣といっても、おそらくダガァほどの大きさしかない。
 ユーヒの得物はショートソードだし、ルイジェンはロングソードだ。二人ともダガァの扱いにはあまり馴れていない。

 結局は1500Gで手放して、その資金で、自分に合った武器装備を手に入れる方がより効果的だろう。

 と、二人は協議し、そのまま引き取ってもらうことにした。


――――――


(あの二人が【ダークオウガ】を倒したって、そういうことか――。聞けば、ハーフエルフの方は銀級、黒髪の小僧のほうはまだ銅級だというが――。本当に白金級の魔物を倒したってんなら、あの二人、要注意だな――)

 階下のホールを見下ろしながら、あご髭を撫でるガタイの良い中年の男性はそう思案する。
 この男の名は、ジョーダン・アンダーバルという。この冒険者ギルド「木の短剣」シルヴェリア支部の支部長である。

(とりあえずのところ、トレジャー品は本物だった。それは、レインの鑑定が確かなことから疑う余地はない。となると、本当に慰めの迷宮に【ダークオウガ】が出現したか、あの二人が嘘をついているかのどちらかになるが……)

 とにかく、すぐに調査隊を編成して慰めの迷宮へ向かわせなければならない。その調査結果によっては、慰めの迷宮のランクの見直しの必要があるからだ。

 もしあいつら二人のいう事が本当だとした場合、このあと潜入する冒険者パーティが、今回のように生きて帰れるとは限らないからだ。

 これが本当なら、冒険者ギルドの「依頼ランク」は相当のものであるという定説を壊しかねない事実だが、相手は魔物モンスターであり迷宮ダンジョンだ。そこには、イレギュラーというものは常に存在する。

 要は、素早い対策こそが肝要なのだ。

(とりあえず、今シルヴェリアにいる白金級プラチナクラス冒険者を募るしかないか――)

 ジョーダンはそう意を決すると、階下へと足を向けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。 なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。 一人称視点、独り言多め、能天気となっております。 なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。 ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A ご指摘あればどんどん仰ってください。 ※2017/8/29 連載再開しました!

処理中です...