素人作家、「自作世界」で覚醒する。

永礼 経

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第66話 レスファイアの決断

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 その後――。

 エリシアの命により、サフィアは大聖堂大司祭である自身の養母、レスファイア・リファレントに事態を報告し、礼拝堂へと呼び出した。

『レスファイア、そういうことですので、サフィアをこの者たちに伴わせ、私の元まで来てもらうことにしました。よろしくお願いします――』

 エリシアの「魔法通信レパス」を直接受けたレスファイアは、意外なことにすんなりと状況を受け入れ、

御身おんみのご指示とあらば――」

と、許諾した。

『レスファイア、任務の件、いつもご苦労様です。あなたのおかげで、現在も世界の安定が図れています。今後も引き続き、よろしくお願いいたします。サフィアにはこちらで使命を与えることになるでしょう。あなたの教育により、その役目を果たせるに足る能力をすでに手に入れていると、そう見ております。やはり、あなた同様、リファレント一族の血は特別なのでしょう――』

と、エリシアはレスファイアに語り掛けた。

『それでは時間です。私の通信はここまでです。3人とも、剣ヶ峰で待っています――それでは直接会える日を楽しみにしていますよ?』

 という言葉を最後にエリシアからの「魔法通信レパス」の回線が切られた。


「お養母様かあさま、いえ、大司祭さま、リファレント一族とは、どういう意味ですか? 私は、大司祭さまの養子では無かったのですか?」
と、サフィアが問う。

「――サフィア、あなたは間違いなく私の養子です。が、あなたの実母、べルティア・リファレントは私の実の姉に当たります。つまりあなたは私の姪なのです」
と、レスファイアがサフィアの出自について明かす。

「私にはお母様がいたのですか?」
「もちろんです。この世に母の居ない人などおりません。しかしながら、あなたの母はあなたが幼き頃に天に召されました。その後、幼かったあなたは一時期、ポート・アルトの聖堂に身を寄せていましたね。そして、そのことは私の耳にも入ってきていました――」

 レスファイアの告白はなおも続く。

 レスファイアはその後しばらく、ポート・アルトの聖堂にサフィアが成長するまで預けておくことにした。
 それは、レスファイア自信がすでに今の役目、大聖堂大司祭に就いていたからである。
 幼きサフィアを引き取ったとしても、かえってサフィアに負担を強いることになることを見越し、ある程度働ける年齢まで待っていた。

 そして、サフィアが12になるのを待って、養子縁組をして大聖堂へと連れてきたというのである。

「それが、5年前のことです。――そもそも、あなたの存在について報せてくれたのはエリシアさまご本人でした。私とエリシアさまはあなたのことについて相談し、今話したようなことを決断したのです……。――サフィア、おそらくエリシアさまがあなたをお召しになったということは、その時期が来たということなのでしょう。あなたはあなたの出自と役目についてこの者たちとの旅の中で様々なことを知ることになるでしょう」

「私の役目――ですか?」

「恐れずに行きなさい、サフィア。あなたはこの5年の間に私が思っていた以上の成長をしてみせました。あなたの魔術師としての能力はすでに、その辺りの冒険者を越えています。あなたもとうとう旅立ちの時なのです。世界を見てきなさい、サフィア。そして、もし傷つき疲れたら、いつでもここに戻って来なさい。私はあなたの母であり、ここはあなたの家なのですから――」

「お養母さま――」

「ユーヒ、ルイジェン、娘のことをどうかよろしくお願いします。あなた方二人をエリシアさまがお召しというのなら、それはあなた方がその資格を持っているということです。創生神エリシアに間違いはありません。それは、私自身が一番心得ています。あなた方と共に行動することはサフィアの使命であり運命なのでしょう。どうぞよろしくお願いいたします――」


 そうして、その日、ユーヒとルイジェンはこの大聖堂で部屋を借り、一晩逗留することにして、明日の朝食後、サフィアを連れてポート・アルトへ向かうことが決定したのだった。


 その日の夕暮れ――。
 ユーヒは今日の昼のエリシアとの会話から、サフィアの養母であり、現大聖堂大司祭であるレスファイアの決断に至るまでの経緯をもう一度反芻して現状を整理していた。

 エリシアの言葉から察するに、ユーヒには何か特別なことを依頼したいと考えているようだった。
 もしそうなら、この世界を去るのはまだ先になりそうな気がする。
 ユーヒ自身、この世界の生活に随分と馴れてきているが、やはり、「地球の滑川夕日」にもう未練を感じないと言えば嘘になる。
 せめて、「滑川夕日」がどうなったのか、どうしてここにいるのかということぐらいははっきりさせておかなければ、未練を断ち切ることはできないだろう。

 それに、レスファイアの決断の速さも気になる。

 いくらエリシアに対して絶対的な信頼を寄せているとはいえ、これほど突然の展開には戸惑うのが普通の感覚のはずだ。

――そうでないとするなら、それは前々からその為に準備をしていた、ということだ。

 レスファイアの言うサフィアの役目とは何なのか。
 おそらくレスファイア大司祭にはすでに目星が付いているのだろう。
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