素人作家、「自作世界」で覚醒する。

永礼 経

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第76話 砂漠の案内人の目

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「そんなお伽噺とぎばなしになってるなんて――。面白いものだな――」

 ユーヒは思わず零してしまう。
 「おおかたは」合っている――。と、言うべきだろうか。

「ユーヒ――?」
 ルイジェンが、ユーヒの言葉を不可思議に思い言葉を掛ける。

「ああ、ごめん、一人で納得してしまってたね。この話については、今晩にでも話すよ……」
「そうか――。なにか思うところがあるのか?」
「ん~、なんだろうな。少し、作為的なものを感じるんだよなぁ」
「作為的?」
「うん。誰かがわざと捻じ曲げて伝えているというか――、を伝えるとなにか問題があるのか、って感じだな」
「何を言ってるか判んねーよ?」
「――だよね。だから、少し落ち着いて話したいんだ。それよりルイジェン、このまま「迷宮」に到着次第潜るつもりなのか?」

 ユーヒは話題を変えようと質問する。
 今朝日が昇り始める前に出発したから、さすがに疲れていないと言えば嘘になる。

「まさか、さすがに今日はめた方がいいですよ? 口を出すのは悪いかと思いますが、「迷宮探索」されるパーティを何度か送り届けていますが、事前に休息を取らずそのまま突入したパーティは、大抵が散々な目に遭っていますから――」

 とは、ラコニの言葉だ。
 少年とはいえ、ここまでのガイドっぷりから見て、かなりの経験者であるように見える。
 これまでにも何組もここまで案内してきたことがあるのだろう。

「――それに……」
「それに?」

 ラコニが何ごとかを続けようとするのに、ユーヒが促す。

「今晩は、嵐になりそうです――。日が落ちる前に対策を取っておいた方がいいでしょうから」

「嵐だって? こんなに日が煌々こうこうと照ってるのにか? 雲一つないぞ?」
と、ルイジェンが疑いの眼差しを向ける。

「ラコニ、もしかして何かのかい?」 
と、ユーヒが問いかける。

「そうですね――。僕には見えています。西の空、まだかなり向こうですが、風が舞っているようです。おそらく十中八九、今晩は砂嵐です――。そういう訳で、野営の準備が少しかかります。僕だって、こんなところで死ぬのは嫌ですからね。ちゃんと手伝ってもらいますよ?」

「死ぬ、ですって――?」
と、サフィアがさすがにその言葉に引っ掛かって問い返す。

「――ええ。場合によっては命に係わることになりかねません。砂漠を舐めない方がいいですよ?」
と、ラコニが真顔で答えた。

「わかった。ルイ、ラコニに従おう。彼にはんだよ。そうか、君もあの目を持つもの、なんだね?」
「なあユーヒ、見えるってどういうことだよ? あの目って何のことだ?」

「ケーレの目――と言います。砂漠の案内人の中でも一部のものがもつ特殊な目ですよ。まあ、分かり易く言えば、視力がいいということです。しかも、通常人の何倍も、です」
と、ラコニが答える。
「やっぱり、ケイノール渓谷に向かいます。ここからなら、それほど時間はかかりませんし、砂嵐をやり過ごすには最適な場所ですから――」

「おいおい、ちょっと待ってくれ! 今さら目的地の変更なんて――」
「いや、ルイ! さっきも言ったけど、ここはラコニに従おう。ラコニ、君の言うとおりにするよ」

「すいません。ですが、明日夜が明けてから出ても「誘いの迷宮」には昼前に着きますから。それより、思っていたより大きい嵐です。念には念を入れるべきだと考えます」
「わかった。ラコニ、よろしく頼む――」

 ユーヒは、二人の意見を聞かずに返答した。
 彼が「ケーレの目」を持つものなら、彼の判断に従っておいた方がいい。

 それに、ケイノール渓谷が夕日の物語の設定のままなら、ラコニの判断はおそらく正しい。

「ルイ、サフィア、ごめんだけど、今は彼に従おう――」

 ユーヒは二人にそう言って押し切ることにした。
 ルイジェンも、珍しくユーヒが強気に出るから、さすがに圧し負けて、わかったと返事をする。

 それからしばらくして、一行は、ケイノール渓谷に到着した――。

「おい、どこに谷なんてあるんだよ?」
「もう見えていますよ?」

 ルイジェンが、まだ少々苛立ちを隠せない感じだが、あまり煽らないようにしようとユーヒは考える。いや、ラコニが見えていると言っているのは、はったりでも何でもない。
 実際、すぐそこがケイノール渓谷のはずなのだ。

「――あれ見てください! 砂漠に亀裂が――」

 サフィアが声を上げた。

「ああ、やっぱり――。あれがケイノール渓谷なんだね、ラコニ?」
「はい。あそこなら、どんな砂嵐が来ても、まず問題ありません」

 それはそうだと、ユーヒも思う。

 ケイノール渓谷――。
 それは、砂漠の地面が大きく口を開いている場所。
 地面に裂け目が走り、その下は鉱物の採取場になっていたというのが夕日の設定だったはずだ。

 4人は、その裂け目の端から地下へと延びる岩の階段を下りて行った。
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