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第85話 大英雄ジーク・二ュール
しおりを挟むジーク・ニュール――。
レトリアリア王国の王族の血筋を引く彼は、ユーヒがはじめてこの「クインジェム」に舞い降りたときにいた街、ケリアネイアで父親と二人で暮らしていた。
父親の名は、ジェレミア・ニュール。祖父の名はリューガー・ニュールという。
リューガー・ニュールはレトリアリアの国王であり、かつて、1200年以上前にシルヴェリア王国との間で最後の国家間戦争といわれる『領土確定戦』を起こした当事者でもある。
この『領土確定戦』の最中、「病死」し、王位は第一王子のレミンゴ・ニュールが継いだ。
第二王子だったジェレミアは当時、『領土確定戦』の将軍として全軍を率いていたが、父王の「病死」を理由に本国より撤退命令が下り、『領土確定戦』は終結する。
その後、敗戦の責めを理由に辞任し、ケリアネイアへと移り隠遁生活をしていたが、ジークが20歳の時、王都から捕吏が遣わされ、ジェレミアは「大臣殺し」の嫌疑を掛けられ逮捕され、ついには処刑されてしまった。
これは、のちのち王位争いの禍根となると見たレミンゴ国王を担いでいる一派が企てた謀略であったことがのちに判明するが、当時は証明のしようがなく、ジークの元にも捕吏が遣わされることになる。
すでに数年前に流行り病で妻を亡くしていたジェレミアは獄中で、一人残してきた息子ジークに危険が及ぶことを察知し、腹心であったヘイゼル・クロスに自身の剣を託し、息子を逃がしてくれと依頼する。
ヘイゼルはジェレミアの遺志を受け、ジークの元へ走り、二人はケリアネイアからダイワコクへ、そしてベイリールへと逃れ出た。
そこから身を隠す為に都合よく、まだ発起当初だった冒険者ギルド「木の短剣」へと身を寄せ、ジークは「ジークバルト・キュール」、ヘイゼルは「ヘンデル・クライス」と偽名を名乗ることになる。
その後、レトリアリアで起きた魔巣の急激な浸食を機に、レトリアリアの国家体制が一新され、国王を担ぎ上げていた一派を追い落とすことに成功したジークだったが、自身は継続して冒険者を続け、アルたちと行動を共にするようになった。
ジークにしてみれば、改心したレミンゴ国王との間に和解が成立していたから、レミンゴ兄王がいるうちは本国にいない方がいいだろうという配慮だったと思われる――。
彼の人柄は基本的には温厚で、情に厚く、体も大きく、大酒飲みであった。同じ酒好きというところから、アルの相棒だったレイノルド・フレイジャのいい飲み相手としても重宝された。
魔族侵攻防衛戦もアルたちとともに戦い、その後も冒険者として活動していたぐらいまでは書いた覚えがある。
前に、ルイジェンが「ジーク・ニュール陛下」といっていたことから、のちのちにレトリアリアの王位を継いだことは察しがついていたが、まさか、チュリと結ばれるという展開は予想していなかった。
冒険者ギルドでの支部長からの聴取後、報酬を受け取った3人は、祝杯を挙げるべく酒場にやってきて食事をしている。
「なんていうか――。人と人って本当に良く分からないよなぁ――」
そう、ユーヒが思わず零した。
「はあ? なに急に言い出すんだよ?」
と、ルイジェン。
「いやあ、まさかチュリとジークが――。ああ……。正直、さすがに驚いた」
「何をそんなに驚いてるんだ? 大英雄パーティのメンバー同士だったんだ。長く一緒に居ればそういうことだってあるだろう?」
確かにその通りだ。
夕日が書いたのは彼らの「黎明期」に過ぎない。
その後も彼らは長い時間を共に過ごしていたのだろう。
その中で、チュリとジークの関係性に何かしら変化が起きる出来事があったって不思議ではないのだが――。
「――チュリはアルに執心してたんだ。だから、もしかしたら一生独身のままなのかなぁってすこし思い描いていたから。アルはケイティといい仲だったし、おそらく二人は結ばれるだろうとは予測できた。チュリもそれは察していたから、そうなるんじゃないかなぁってそう思ってたんだよ」
「ケイティスさまはアルバートさまと結婚はしてませんよ?」
「え――?」
言葉を挟んだのはサフィアだ。ユーヒはその言葉の真意を掴めず一瞬戸惑った。
「え!? でも、たしか、アリアンロッドという子孫がいるはず――」
「アリアンロッド・テルドールか!!」
ユーヒの言葉に今度はルイジェンが声を上げる。
「あ、ああ。僕の書いた物語の最終話に出てくる冒険者養成学校の学生――」
「アイツの話はするんじゃない!!」
「へ?」
「アリアンロッドのオヤジは、俺の大っ嫌いなやつだ。俺はアイツを生涯許さないって決めてるんだ!」
おいおいおい、ちょっと話が混乱してきているぞ?
何が一体どうなっているんだ?
それに、ルイの口ぶりからすると、「アリアンロッド」についてはかなり詳しいことを知っているようにも聞こえる。
あと、アルとケイティが結婚していないって――?
「ちょ、ちょっと、ごめん! 順番に聞くから、少し待ってくれ――!」
ユーヒの頭はさらにごちゃごちゃになってゆく。
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