素人作家、「自作世界」で覚醒する。

永礼 経

文字の大きさ
85 / 124

第85話 大英雄ジーク・二ュール

しおりを挟む

 ジーク・ニュール――。
 レトリアリア王国の王族の血筋を引く彼は、ユーヒがはじめてこの「クインジェム」に舞い降りたときにいた街、ケリアネイアで父親と二人で暮らしていた。

 父親の名は、ジェレミア・ニュール。祖父の名はリューガー・ニュールという。

 リューガー・ニュールはレトリアリアの国王であり、かつて、1200年以上前にシルヴェリア王国との間で最後の国家間戦争といわれる『領土確定戦』を起こした当事者でもある。
 この『領土確定戦』の最中、「病死」し、王位は第一王子のレミンゴ・ニュールが継いだ。

 第二王子だったジェレミアは当時、『領土確定戦』の将軍として全軍を率いていたが、父王の「病死」を理由に本国より撤退命令が下り、『領土確定戦』は終結する。

 その後、敗戦の責めを理由に辞任し、ケリアネイアへと移り隠遁生活をしていたが、ジークが20歳の時、王都から捕吏が遣わされ、ジェレミアは「大臣殺し」の嫌疑を掛けられ逮捕され、ついには処刑されてしまった。
 これは、のちのち王位争いの禍根となると見たレミンゴ国王を担いでいる一派が企てた謀略であったことがのちに判明するが、当時は証明のしようがなく、ジークの元にも捕吏が遣わされることになる。

 すでに数年前に流行り病で妻を亡くしていたジェレミアは獄中で、一人残してきた息子ジークに危険が及ぶことを察知し、腹心であったヘイゼル・クロスに自身の剣を託し、息子を逃がしてくれと依頼する。

 ヘイゼルはジェレミアの遺志を受け、ジークの元へ走り、二人はケリアネイアからダイワコクへ、そしてベイリールへと逃れ出た。

 そこから身を隠す為に都合よく、まだ発起当初だった冒険者ギルド「木の短剣」へと身を寄せ、ジークは「ジークバルト・キュール」、ヘイゼルは「ヘンデル・クライス」と偽名を名乗ることになる。

 その後、レトリアリアで起きた魔巣の急激な浸食を機に、レトリアリアの国家体制が一新され、国王を担ぎ上げていた一派を追い落とすことに成功したジークだったが、自身は継続して冒険者を続け、アルたちと行動を共にするようになった。
 ジークにしてみれば、改心したレミンゴ国王との間に和解が成立していたから、レミンゴ兄王がいるうちは本国にいない方がいいだろうという配慮だったと思われる――。

 彼の人柄は基本的には温厚で、情に厚く、体も大きく、大酒飲みであった。同じ酒好きというところから、アルの相棒だったレイノルド・フレイジャのいい飲み相手としても重宝された。

 魔族侵攻防衛戦もアルたちとともに戦い、その後も冒険者として活動していたぐらいまでは書いた覚えがある。
 
 前に、ルイジェンが「ジーク・ニュール陛下」といっていたことから、のちのちにレトリアリアの王位を継いだことは察しがついていたが、まさか、チュリと結ばれるという展開は予想していなかった。

 
 冒険者ギルドでの支部長からの聴取後、報酬を受け取った3人は、祝杯を挙げるべく酒場にやってきて食事をしている。

「なんていうか――。人と人って本当に良く分からないよなぁ――」

 そう、ユーヒが思わず零した。

「はあ? なに急に言い出すんだよ?」
と、ルイジェン。

「いやあ、まさかチュリとジークが――。ああ……。正直、さすがに驚いた」

「何をそんなに驚いてるんだ? 大英雄パーティのメンバー同士だったんだ。長く一緒に居ればそういうことだってあるだろう?」

 確かにその通りだ。
 夕日が書いたのは彼らの「黎明期」に過ぎない。

 その後も彼らは長い時間を共に過ごしていたのだろう。
 その中で、チュリとジークの関係性に何かしら変化が起きる出来事があったって不思議ではないのだが――。

「――チュリはアルに執心してたんだ。だから、もしかしたら一生独身のままなのかなぁってすこし思い描いていたから。アルはケイティといい仲だったし、おそらく二人は結ばれるだろうとは予測できた。チュリもそれは察していたから、そうなるんじゃないかなぁってそう思ってたんだよ」

「ケイティスさまはアルバートさまと結婚はしてませんよ?」
「え――?」

 言葉を挟んだのはサフィアだ。ユーヒはその言葉の真意を掴めず一瞬戸惑った。

「え!? でも、たしか、アリアンロッドという子孫がいるはず――」
「アリアンロッド・テルドールか!!」

 ユーヒの言葉に今度はルイジェンが声を上げる。

「あ、ああ。僕の書いた物語の最終話に出てくる冒険者養成学校の学生――」
「アイツの話はするんじゃない!!」

「へ?」
「アリアンロッドのは、俺の大っ嫌いなやつだ。俺はアイツを生涯許さないって決めてるんだ!」

 おいおいおい、ちょっと話が混乱してきているぞ?
 何が一体どうなっているんだ?

 それに、ルイの口ぶりからすると、「アリアンロッド」についてはかなり詳しいことを知っているようにも聞こえる。
 あと、アルとケイティが結婚していないって――?

「ちょ、ちょっと、ごめん! 順番に聞くから、少し待ってくれ――!」

 ユーヒの頭はさらにごちゃごちゃになってゆく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...