黒沢ゆいなと森原みらいと女神をめぐる三角関係の内角の和

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美貌の矢沢亜紀が夜中に土を掘る

　暗い山の中でスコップを手にして土を掘っていると西山智之の胸に疑問が湧いてきた。
（俺の人生、このままでいいのだろうか？）
　手を休めて空を見上げる。地上では見られない程の多くの星が煌めいている。
（俺もその星の一つだった）
　世間的な評価では成功した人生と言えるだろう。
　大阪で生まれ地元のサッカー名門高校に進みＪリーガーとなった。日本代表にも選ばれた。
　身長一七六センチとプロスポーツ選手としては小柄だが、その童顔と相まって女性人気も高かった。
　三十歳になって日本代表からは外れたが、それでもまだ充分に活躍している体力はまだ充分にある。
　西山はまた掘り始める。
 「ねえ」
　傍らに立ち西山智之が地面を掘るのを懐中電灯で照らしながら見つめている矢沢亜紀が声をかける。
　矢沢亜紀は二十八歳になる女子プロゴルファーである。抜群のスタイルを強調するミニスカートがトレードマークで、その美貌と相まって人気が高い。去年、念願のツアー初優勝も飾っている。
　月明かりが矢沢亜紀の顔に銀色の光を落とす。
　二人の他に人の気配はない。
「何？」
　西山は手を止めて矢沢亜紀を振り返った。
　土の匂いや樹木の湿った香りが鼻をつく。
　手を止めて却って息づかいが荒くなる。
「出てきたんじゃない？」
　西山はゴクリと唾を飲み自分が掘った穴に目を遣る。
「ああ。出てきたようだ」
　二人は懐中電灯に照らされた穴を見つめた。