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第2章 公爵令嬢でもできること
18話 結局私は何もできないまま
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最悪ですわ。場所も状況も最悪。そして今周囲から注目を集めているこの状況を何とかする手段が一向に思いつかないことも最悪なのですが、何よりも最悪なのは、たった今両足を痛めました。立てるかしら? 立てませんね。
この格好のまま立ち上がることも困難になってしまいましたわね。仕方ありません。どなたかが助けてくださるのを待ちましょうと思った矢先に私の目の前には手が差し出されましたわ。
「ルー手を出して」
「ルクレシア様こちらに手を」
「お姉様そのまま私の手を握りつぶしてください」
何か混ざっていますね。私はお二方の手のどちらを取るべきかためらってしまいました。本日エスコートを頼んだメルヒオール様の手を取るべきでしょうが、もう反対側は王子殿下であるグレイ様。無下もすることはできません。
本当に私を困らせるのが好きな方ですね。ですが、ここで困る訳には行きません。私はあえてエミリアさんの手を取り立ち上がるのを手伝っていただきましたわ。何故来たかこの際無視しましょう。
「あの……そこは何か混ざってる。気持ち悪いって顔で見て頂きたかったのですが? お手を取っていただく必要は……」
「安心してください。その発言も十分気持ち悪いです」
「まぁ」
こんな言葉で頬を染めないでください。そして私の受け取った手を見て自分の差し出した手をどう引こうか悩んでいるお二人。本当にごめんなさい。それよりも散乱してしまった料理などですが、どうやら早々に集まってきた使用人達がてきぱきと掃除してくださったようですね。
それよりもこの事態、周りの注目が痛い。リンナンコスキ家の夜会で失態を犯すなんてベッケンシュタイン家の令嬢がやっていいことではありません。
騒ぎが大きくなりすぎましたね。お父様やお母様にお兄様とお義姉様もこちらにやってきました。勿論、リンナンコスキ家当主のマックス様も。
「ルクレシア嬢! 我がリンナンコスキ家の夜会でわざわざ。もしやわざとこのようなことを?」
「いえ、決してそのようなつもりはありません。本当に申し訳ございません」
「確かに貴方はよく転びそうになる方ですが、今日みたいに自ら転んで料理をまき散らすような真似をするような方ではありませんでした。それを自らの父親が宰相になれなかったからと言って当てつけのように!」
まずいですわ。まずいですわ。私だけでなくお父様やベッケンシュタイン家にまで迷惑がかかってしまいます。自ら転んでだなんて!
本当にそのようなつもりはありませんし、むしろ私はあなたを推薦した一人ですが、当然あれはワガママ。公にできませんわ。
お父様がこちらに抗議しようと前に出てこようとしましたが、私は手で制するようにお父様に向けて手のひらを向けました。それを見たお父様は一歩引きましたわ。お父様は何か考えがあるんだなと小さく呟いています。
まあ! 実際は! よろけそうになってバランスを取ろうとしただけなんですけどね! あ! お父様! 救いの手はもう一度差し伸べてくださっても良いのですよ! あなたの娘に何も考えはありません!
周りの方々が私の様子を伺っていますね。これって私がアクションを起こさないとダメでしょうか? 最初からダメって決めつけてちゃ始まりませんよ?
「何故黙ったままなのですか!」
しつこい方ですね。いえ、私が悪いのですけど。ですが、仕方ありません。私も何も思いつきませんもの。
さすがにまずいと思った私は周囲を見渡します。家族友人、エレナやラウラにマルッティ等のベッケンシュタイン家関連の方々、それからメルヒオール様。
誰と目を合わせても皆、私の次の一言を待っている様子。ああ、公爵家当主であるお父様を制してしまった以上、誰も私の前に出てこられるはずがありませんよね。ああ、本当にいらないドジを踏んでしまいましたよね。
足の痛みも限界です。本当に私は何もできない公爵令嬢ですよね。
その瞬間です。地から足が浮きました。またですか。本当にその横抱きお好きですよね。ですが公爵家当主以上の方ですから、私を助けられるのはどうやら今回もあなただけのようですわね。頼みましたよ? ド変態さん。
「マックス。彼女の足首を見て貰っても良いですか?」
「足!? 足はダメです!!」
足!? 足って!! よりにもよってなんてところを確認させようとしているのですか!! 私二度と公の場で足は晒さないと誓ったのですよ!
「足首? それが……これは」
グレイ様が私のスカートの裾を引っ張り、腫れにより変色した両足をあらわにしましたわ。とても小さな声であれ? 両足? と聞こえましたが、両足捻ったのは先ほどの転倒時ですよ。踊っていた時は片足です。といいますか未確認で気付かないで。
「ですから見ないでください!」
私はイサアークの件もあり、他人に足を見られることが極端に怖くなっていました。ですが、グレイ様が本当に見せたいところは怪我の所なのでしょう。でもやっぱり足を見られるのは抵抗が!!
「彼女は足を怪我してしまっているようだ。私もさきほど踊っている時に気付いた。おそらく転倒しそうになったのはこれのせいだろう。彼女を責めないでやって欲しい」
「確かに、ここまで赤く……わかりました。今回の件は故意ではないということにしておきましょう」
「宰相になってそうそうすまないね。今度私の方からお詫びさせてもらおう。彼女の足の怪我を知っておきながらそのままにさせていた私のミスだ」
「いえ、王子殿下自らそのような。それに今回の件は私の早とちりで」
グレイ様とマックス様がお話しあってる所申し訳ありませんが、私はいつまでグレイ様に横抱きにされたままなのでしょうか。正直これは少々……いえ、とても恥ずかしいです。
そう思いながらも周囲の目が気になってしまいます。両手で顔を覆いながらも指の隙間から周囲を見渡すと、一瞬だけでしょうか。まるで憎悪のような表情を向けている方が見えたような気がします。
ハッとした私は両手を顔から離し、周囲を見渡しましたが、そのような方はどちらにもいらっしゃいませんでした。
まるでイサアークやユリエ様の時と似たような表情。あれはいったい。女性のような気がしましたが、レティシア様でもエミリアさんでもありませんでしたね。エレナやお義姉様? いえどなたとも違いますわね。そもそもあの憎悪の瞳は誰に対してなのでしょうか。
「グレイ様、そろそろおろしてください」
「その足の腫れはひどすぎる。座れる所まで運ぼう。きついならば今日はもう帰ると良い」
「そう……させて頂きます」
「でしたら私がお送りいたします」
さっと名乗り出るメルヒオール様。そうですわね、本日のエスコート役をご依頼したのですからそれが当然でしょう。グレイ様も少々考えこんだみたいですが、メルヒオール様に私を渡すと、メルヒオール様は私を受け取りましたわ。
なんですの? 王子が臣下に褒美を渡すような構図。私は褒美ではありませんわ。……いえ、そこらの褒美よりも喜ばれるくらいには美しい自信はありますけど。
私とメルヒオール様が帰ることになったら、こっそりとラウラの姿をして紛れていらしたヨハンネスが、会場から抜け出している様子ですわ。私に気付かれるようでは、まだまだダメですわね。
メルヒオール様に運ばれて馬車にたどり着きますと、そこには待機していたマリアが別の場所の御者や使用人の方々に求婚している様子が……当然引き戻しましたわ。ベッケンシュタイン家の使用人の恥さらしでしてよ。いえ、本当に何しに来たのよあなた。
私たちが馬車に乗り込みますと、いつの間にか騎士服に着替えたヨハンネスが後ろで馬に跨って待機していました。その早着替えはどのようにやるのでしょうか。いえ、私は自らの手で着替えなどしませんけどね。
奥さんと娘さん連れのマルッティはさすがに来ませんよね。少し待機していますと、お兄様とお義姉様も帰られるようです。
「ルクレシア! 足の怪我を僕に見せておくれよ!」
早速私の足を手に取り、てきぱきと手当をしてくださるお義姉様。まーたお義姉様は侯爵令嬢らしからぬ技術を身につけていらっしゃいますね。しかしこれはとてもありがたいです。さきほどまで痛くて痛くて仕方なかった足は、羽が生えたように軽く感じましたわ。
「それでこの足で夜会に参加したのかい?」
お義姉様もしかして怒っていらっしゃいますか? お兄様やメルヒオール様以上に私の足を心配してお義姉様は私に真剣に怒っていらっしゃる様子。
私は素直にお義姉様に謝り、明日一日はお義姉様から離れることを禁止されてしまいましたわ。それはそれで少々楽しみなのですが……いえ、ちゃんと反省します。
この格好のまま立ち上がることも困難になってしまいましたわね。仕方ありません。どなたかが助けてくださるのを待ちましょうと思った矢先に私の目の前には手が差し出されましたわ。
「ルー手を出して」
「ルクレシア様こちらに手を」
「お姉様そのまま私の手を握りつぶしてください」
何か混ざっていますね。私はお二方の手のどちらを取るべきかためらってしまいました。本日エスコートを頼んだメルヒオール様の手を取るべきでしょうが、もう反対側は王子殿下であるグレイ様。無下もすることはできません。
本当に私を困らせるのが好きな方ですね。ですが、ここで困る訳には行きません。私はあえてエミリアさんの手を取り立ち上がるのを手伝っていただきましたわ。何故来たかこの際無視しましょう。
「あの……そこは何か混ざってる。気持ち悪いって顔で見て頂きたかったのですが? お手を取っていただく必要は……」
「安心してください。その発言も十分気持ち悪いです」
「まぁ」
こんな言葉で頬を染めないでください。そして私の受け取った手を見て自分の差し出した手をどう引こうか悩んでいるお二人。本当にごめんなさい。それよりも散乱してしまった料理などですが、どうやら早々に集まってきた使用人達がてきぱきと掃除してくださったようですね。
それよりもこの事態、周りの注目が痛い。リンナンコスキ家の夜会で失態を犯すなんてベッケンシュタイン家の令嬢がやっていいことではありません。
騒ぎが大きくなりすぎましたね。お父様やお母様にお兄様とお義姉様もこちらにやってきました。勿論、リンナンコスキ家当主のマックス様も。
「ルクレシア嬢! 我がリンナンコスキ家の夜会でわざわざ。もしやわざとこのようなことを?」
「いえ、決してそのようなつもりはありません。本当に申し訳ございません」
「確かに貴方はよく転びそうになる方ですが、今日みたいに自ら転んで料理をまき散らすような真似をするような方ではありませんでした。それを自らの父親が宰相になれなかったからと言って当てつけのように!」
まずいですわ。まずいですわ。私だけでなくお父様やベッケンシュタイン家にまで迷惑がかかってしまいます。自ら転んでだなんて!
本当にそのようなつもりはありませんし、むしろ私はあなたを推薦した一人ですが、当然あれはワガママ。公にできませんわ。
お父様がこちらに抗議しようと前に出てこようとしましたが、私は手で制するようにお父様に向けて手のひらを向けました。それを見たお父様は一歩引きましたわ。お父様は何か考えがあるんだなと小さく呟いています。
まあ! 実際は! よろけそうになってバランスを取ろうとしただけなんですけどね! あ! お父様! 救いの手はもう一度差し伸べてくださっても良いのですよ! あなたの娘に何も考えはありません!
周りの方々が私の様子を伺っていますね。これって私がアクションを起こさないとダメでしょうか? 最初からダメって決めつけてちゃ始まりませんよ?
「何故黙ったままなのですか!」
しつこい方ですね。いえ、私が悪いのですけど。ですが、仕方ありません。私も何も思いつきませんもの。
さすがにまずいと思った私は周囲を見渡します。家族友人、エレナやラウラにマルッティ等のベッケンシュタイン家関連の方々、それからメルヒオール様。
誰と目を合わせても皆、私の次の一言を待っている様子。ああ、公爵家当主であるお父様を制してしまった以上、誰も私の前に出てこられるはずがありませんよね。ああ、本当にいらないドジを踏んでしまいましたよね。
足の痛みも限界です。本当に私は何もできない公爵令嬢ですよね。
その瞬間です。地から足が浮きました。またですか。本当にその横抱きお好きですよね。ですが公爵家当主以上の方ですから、私を助けられるのはどうやら今回もあなただけのようですわね。頼みましたよ? ド変態さん。
「マックス。彼女の足首を見て貰っても良いですか?」
「足!? 足はダメです!!」
足!? 足って!! よりにもよってなんてところを確認させようとしているのですか!! 私二度と公の場で足は晒さないと誓ったのですよ!
「足首? それが……これは」
グレイ様が私のスカートの裾を引っ張り、腫れにより変色した両足をあらわにしましたわ。とても小さな声であれ? 両足? と聞こえましたが、両足捻ったのは先ほどの転倒時ですよ。踊っていた時は片足です。といいますか未確認で気付かないで。
「ですから見ないでください!」
私はイサアークの件もあり、他人に足を見られることが極端に怖くなっていました。ですが、グレイ様が本当に見せたいところは怪我の所なのでしょう。でもやっぱり足を見られるのは抵抗が!!
「彼女は足を怪我してしまっているようだ。私もさきほど踊っている時に気付いた。おそらく転倒しそうになったのはこれのせいだろう。彼女を責めないでやって欲しい」
「確かに、ここまで赤く……わかりました。今回の件は故意ではないということにしておきましょう」
「宰相になってそうそうすまないね。今度私の方からお詫びさせてもらおう。彼女の足の怪我を知っておきながらそのままにさせていた私のミスだ」
「いえ、王子殿下自らそのような。それに今回の件は私の早とちりで」
グレイ様とマックス様がお話しあってる所申し訳ありませんが、私はいつまでグレイ様に横抱きにされたままなのでしょうか。正直これは少々……いえ、とても恥ずかしいです。
そう思いながらも周囲の目が気になってしまいます。両手で顔を覆いながらも指の隙間から周囲を見渡すと、一瞬だけでしょうか。まるで憎悪のような表情を向けている方が見えたような気がします。
ハッとした私は両手を顔から離し、周囲を見渡しましたが、そのような方はどちらにもいらっしゃいませんでした。
まるでイサアークやユリエ様の時と似たような表情。あれはいったい。女性のような気がしましたが、レティシア様でもエミリアさんでもありませんでしたね。エレナやお義姉様? いえどなたとも違いますわね。そもそもあの憎悪の瞳は誰に対してなのでしょうか。
「グレイ様、そろそろおろしてください」
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「でしたら私がお送りいたします」
さっと名乗り出るメルヒオール様。そうですわね、本日のエスコート役をご依頼したのですからそれが当然でしょう。グレイ様も少々考えこんだみたいですが、メルヒオール様に私を渡すと、メルヒオール様は私を受け取りましたわ。
なんですの? 王子が臣下に褒美を渡すような構図。私は褒美ではありませんわ。……いえ、そこらの褒美よりも喜ばれるくらいには美しい自信はありますけど。
私とメルヒオール様が帰ることになったら、こっそりとラウラの姿をして紛れていらしたヨハンネスが、会場から抜け出している様子ですわ。私に気付かれるようでは、まだまだダメですわね。
メルヒオール様に運ばれて馬車にたどり着きますと、そこには待機していたマリアが別の場所の御者や使用人の方々に求婚している様子が……当然引き戻しましたわ。ベッケンシュタイン家の使用人の恥さらしでしてよ。いえ、本当に何しに来たのよあなた。
私たちが馬車に乗り込みますと、いつの間にか騎士服に着替えたヨハンネスが後ろで馬に跨って待機していました。その早着替えはどのようにやるのでしょうか。いえ、私は自らの手で着替えなどしませんけどね。
奥さんと娘さん連れのマルッティはさすがに来ませんよね。少し待機していますと、お兄様とお義姉様も帰られるようです。
「ルクレシア! 足の怪我を僕に見せておくれよ!」
早速私の足を手に取り、てきぱきと手当をしてくださるお義姉様。まーたお義姉様は侯爵令嬢らしからぬ技術を身につけていらっしゃいますね。しかしこれはとてもありがたいです。さきほどまで痛くて痛くて仕方なかった足は、羽が生えたように軽く感じましたわ。
「それでこの足で夜会に参加したのかい?」
お義姉様もしかして怒っていらっしゃいますか? お兄様やメルヒオール様以上に私の足を心配してお義姉様は私に真剣に怒っていらっしゃる様子。
私は素直にお義姉様に謝り、明日一日はお義姉様から離れることを禁止されてしまいましたわ。それはそれで少々楽しみなのですが……いえ、ちゃんと反省します。
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