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第3章 ポンコツしかできないこと
19話 マリア・アハティサーリのトラウマ
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===sideマリア===
私とエミリア様、それからルクレシア様役のエレナさん含めたチームは、現在デークルーガ帝国とルバスラークの間にある国境の門まで来ています。
ところでエミリア様その大きなカバン。とても重そうなのですが何が? 本人は背負いながらはぁはぁ言っています。疲れからなのか興奮からなのか……
こちらではルバスラークにいるデークルーガ兵に向けた補給を行っていると事前調査でわかっていますので、我々はこちらの兵力を分散する担当になりましたわ。
だってこのメンツ。私以外令嬢なんですもの。兵力不足にもほどがありますわ。
「ではそろそろ行きましょうか。独身女性の皆様」
「あのエレナさん? え? そもそもエレナさんも独身」
「私はお姉様と結婚しました!」
珍しくエレナさんからお棘のある言葉を……何か心境の変化でしょうか? あと、エミリア様は妄言出ましたね。
「それでは生涯独り身ガールズによる作戦開始です」
「えぇ。私結婚したいのですが」
我々はエレナさんをルクレシア様と見せかけ、敵兵を一定の場所まで引き付けましたわ。
大きな運河の橋の上で立ち止まり、私は槍を構えますと、数名の兵と隊長らしき人物。
あれ? これ私一人で戦いますの? いえ、エミリア様が援護してくださるらしいですよね?
エミリア様の方を見ますと、何やら危なげな物をぶんぶんと振り回している様子。戦闘の意思は理解しました。
「え? 投げれますの?」
「はい! お姉様の元に行くために、護衛さん達なぎ倒せるように訓練してます!」
投石? え? 投げれますの? 彼女がぶんぶんぶんぶん鳴らしながら振り回しているのはスリング。そして拳と同じくらいの大きさの石。
後半のセリフは聞かなかったことにします。
どうやらエミリアさんの重そうな鞄の正体は投石用の石を詰め込んでいたようです。
え? 令嬢ですよね? そんなことしてますと婚期遅れますよ? うっ! 私にダメージが!
「まあいいですわ! 行きましょう!」
私が握った槍を頭上で振り回しながら三人の敵兵に接近し、一人の口内に石突を突っ込むと、そのまま押し込んでやりました。
「一人目!」
二人目が私に剣を振り下ろしたところで、突然相手の兜に石がゴツンとあててそのままノックダウン。
「お見事ですエミリア様」
三人目が一瞬ひるみましたが、盾を向けて突っ込んできましたわ。
所詮は補給部隊ですね。この程度でしたら奥の隊長らしき人も大したことなさそうですね。
私は槍を相手の腹部めがけて、渾身の突きを放ちますと、三人目は当然ガード。しかしその瞬間、見事投石による一発で頭部にヒット。
本当に得体のしれない令嬢ですね。木の上に移動に隠密行動。はては投石。どれだけお嬢様をお好きになったらこうなるのかしら?
控えていた兵たちは数名逃げ出そうとしましたが、二人ほどエミリアさんが投石で気絶させましたわ。
私より敵戦力撃破しているのですが。いえ、私が前にいてこその投石に集中できると考えましょう。
さてと、一人こちらを静観している独身なら素晴らしい殿方が身構えていますね。
「あなたはこちらにいらっしゃいませんの? あと独身でございますでしょうか?」
「? ズィークフリド。一応独身だ……待て、これは何の確認だ?」
独身男性。良い響きですね。捕まえてしまいましょう。
私は槍を振り下ろしますと、独身男性様は一瞬で私の懐まで入り込み、その拳は私の腹部にめり込む。
鎧はへこみ私はそのまま打ち上げられましたわ。
なんと逞しいのでしょう。ですがこれは危険ですね。
まさかもう家庭内暴力に発展してしまう……あ、これは想像新婚生活でしたね。
私はそのまま橋の上を転がりながら横たわってしまいました。鎧がへこんで上手く呼吸ができませんね。
まずいですね。エミリア様もですが、エレナさんには逃げて頂かないと。
「次は投石女か」
「エミリア・ディートリヒ……私こそがルクレシアお姉様と結ばれるべき令嬢ですわ」
「うちの姫といい、どうなってんだそのルクレシア様という人間の魅力は興味がわくな」
「殺す」
エミリアさんは木々を飛び越えるような跳躍で独身男性様に向かって突進しつつ、隠し持っていた短剣で斬りつけようとしましたわ。
「その程度か。いいか? これが圧倒的な力だ」
独身男性様は足で石造りの橋を粉砕。その破片を蹴り飛ばしてきましたわ。
エミリアさんは破片を頭部に受けて一瞬クラっとし、そのまま橋に倒れ込んでしまいましたわ。
鉄の鎧を殴ってへこませたり、石造りの橋を生身で破壊したり。力自慢にもほどがあります。
「さて……そこの女はどうやらルクレシア様ではなさそうだな。瞳の色が違う」
バレましたか。ですが、この独身男性様を足止めできるだけでも……でき、呼吸が続きませんね。この鎧どうにか脱ぐしか。
その時でした。独身男性様がそのまま直進して歩いてきたのです。
途中、エミリア様が横たわっていたところ、そのまま踏みつけましたわ。
ああ、この男は独身男性様ではありませんね。クズです。
私は槍を杖のようにし、なんとか立ち上がろうとしましたわ。
このままでは三人とも捕まってしまいます。せめてエレナさんだけでも逃がさないと。
「立ち上がるのか」
「ええ。あなたを許せない。女性に暴力を振る男を許せない。許せない。許せない。私の幸せを踏みにじった。そういう男が許せない。はぁはぁ。私の幸せの為にお前を潰す。男! 男! 男! お前らが憎い!」
? 私は今何を? 男が憎い? いえ、私が憎いと感じたのは後にも先にも私の幸せを踏みにじったあの男だけのはず。
大体結婚したいはずの私が男が憎い? はて? いえ、違いますね。
憎いのは女性への暴力にためらいのないこの男があの男に被ったから……ですよね?
「様子がおかしいな。まあ、いい。俺はそのルクレア様もどきを拘束する必要がある。あとお前もな」
エミリアさんは未だにクズに足蹴にされています。早く助け出さねば。
私が何とかへこんだ鎧を脱ぐと、ゴトっという音と共に橋の上に落ちますが、すぐに槍で持ち上げ川に投げ捨てました。
「懸命だ。そこに転がっていたら武器として俺が使っていただろう」
よろけそうになりながらもなんとかクズの隙を探る。ない。ない、ない! ないないない全く隙が無い。
そもそも隙かそうでないかの判別がつかない。
そう考えていますと、ふとクズの足をエミリア様が掴みましたわ。
「私の身に痣を……傷をつけていいのはお姉様だけですわ」
お嬢様はそのようなことはしません。ではなく無事でしたのね。
「許さない!」
「どうやら俺は女に許されないと何度も言われる人生らしい。では終わらせよう」
そうクズが言った瞬間でした。エミリア様が何もセットしてないスリングを振り回します。
「悪あがきか?」
ビュンビュンビュンと音をたて、クズがスリングに意識を集中させましたわ。
なるほど。私はそのスリングに槍の石突をひっかけましたわ。一瞬男は理解が追い付かなかった様子。
私はそのままスリングを引っ張ると、すぐに槍をスリングから離す。スリングは勢いよくクズの顔面にクリーンヒット。
クズが完全にひるみました。私はそのまま槍を横薙ぎに振り、クズの頭に思いっきり叩きつけましたわ。
「ひとまず任務完了ですね」
「エレナさん、すみません。もっと早くお逃げになってもよかったのに」
「いえ、万が一の時は私も戦うつもりでしたので」
「……そうですか。あなたの手を煩わせることがないことを祈りましょう」
エレナさんが戦える? 一体どのようにというのでしょうか? とにかく、今はお屋敷に戻りましょう。
私とエミリア様、それからルクレシア様役のエレナさん含めたチームは、現在デークルーガ帝国とルバスラークの間にある国境の門まで来ています。
ところでエミリア様その大きなカバン。とても重そうなのですが何が? 本人は背負いながらはぁはぁ言っています。疲れからなのか興奮からなのか……
こちらではルバスラークにいるデークルーガ兵に向けた補給を行っていると事前調査でわかっていますので、我々はこちらの兵力を分散する担当になりましたわ。
だってこのメンツ。私以外令嬢なんですもの。兵力不足にもほどがありますわ。
「ではそろそろ行きましょうか。独身女性の皆様」
「あのエレナさん? え? そもそもエレナさんも独身」
「私はお姉様と結婚しました!」
珍しくエレナさんからお棘のある言葉を……何か心境の変化でしょうか? あと、エミリア様は妄言出ましたね。
「それでは生涯独り身ガールズによる作戦開始です」
「えぇ。私結婚したいのですが」
我々はエレナさんをルクレシア様と見せかけ、敵兵を一定の場所まで引き付けましたわ。
大きな運河の橋の上で立ち止まり、私は槍を構えますと、数名の兵と隊長らしき人物。
あれ? これ私一人で戦いますの? いえ、エミリア様が援護してくださるらしいですよね?
エミリア様の方を見ますと、何やら危なげな物をぶんぶんと振り回している様子。戦闘の意思は理解しました。
「え? 投げれますの?」
「はい! お姉様の元に行くために、護衛さん達なぎ倒せるように訓練してます!」
投石? え? 投げれますの? 彼女がぶんぶんぶんぶん鳴らしながら振り回しているのはスリング。そして拳と同じくらいの大きさの石。
後半のセリフは聞かなかったことにします。
どうやらエミリアさんの重そうな鞄の正体は投石用の石を詰め込んでいたようです。
え? 令嬢ですよね? そんなことしてますと婚期遅れますよ? うっ! 私にダメージが!
「まあいいですわ! 行きましょう!」
私が握った槍を頭上で振り回しながら三人の敵兵に接近し、一人の口内に石突を突っ込むと、そのまま押し込んでやりました。
「一人目!」
二人目が私に剣を振り下ろしたところで、突然相手の兜に石がゴツンとあててそのままノックダウン。
「お見事ですエミリア様」
三人目が一瞬ひるみましたが、盾を向けて突っ込んできましたわ。
所詮は補給部隊ですね。この程度でしたら奥の隊長らしき人も大したことなさそうですね。
私は槍を相手の腹部めがけて、渾身の突きを放ちますと、三人目は当然ガード。しかしその瞬間、見事投石による一発で頭部にヒット。
本当に得体のしれない令嬢ですね。木の上に移動に隠密行動。はては投石。どれだけお嬢様をお好きになったらこうなるのかしら?
控えていた兵たちは数名逃げ出そうとしましたが、二人ほどエミリアさんが投石で気絶させましたわ。
私より敵戦力撃破しているのですが。いえ、私が前にいてこその投石に集中できると考えましょう。
さてと、一人こちらを静観している独身なら素晴らしい殿方が身構えていますね。
「あなたはこちらにいらっしゃいませんの? あと独身でございますでしょうか?」
「? ズィークフリド。一応独身だ……待て、これは何の確認だ?」
独身男性。良い響きですね。捕まえてしまいましょう。
私は槍を振り下ろしますと、独身男性様は一瞬で私の懐まで入り込み、その拳は私の腹部にめり込む。
鎧はへこみ私はそのまま打ち上げられましたわ。
なんと逞しいのでしょう。ですがこれは危険ですね。
まさかもう家庭内暴力に発展してしまう……あ、これは想像新婚生活でしたね。
私はそのまま橋の上を転がりながら横たわってしまいました。鎧がへこんで上手く呼吸ができませんね。
まずいですね。エミリア様もですが、エレナさんには逃げて頂かないと。
「次は投石女か」
「エミリア・ディートリヒ……私こそがルクレシアお姉様と結ばれるべき令嬢ですわ」
「うちの姫といい、どうなってんだそのルクレシア様という人間の魅力は興味がわくな」
「殺す」
エミリアさんは木々を飛び越えるような跳躍で独身男性様に向かって突進しつつ、隠し持っていた短剣で斬りつけようとしましたわ。
「その程度か。いいか? これが圧倒的な力だ」
独身男性様は足で石造りの橋を粉砕。その破片を蹴り飛ばしてきましたわ。
エミリアさんは破片を頭部に受けて一瞬クラっとし、そのまま橋に倒れ込んでしまいましたわ。
鉄の鎧を殴ってへこませたり、石造りの橋を生身で破壊したり。力自慢にもほどがあります。
「さて……そこの女はどうやらルクレシア様ではなさそうだな。瞳の色が違う」
バレましたか。ですが、この独身男性様を足止めできるだけでも……でき、呼吸が続きませんね。この鎧どうにか脱ぐしか。
その時でした。独身男性様がそのまま直進して歩いてきたのです。
途中、エミリア様が横たわっていたところ、そのまま踏みつけましたわ。
ああ、この男は独身男性様ではありませんね。クズです。
私は槍を杖のようにし、なんとか立ち上がろうとしましたわ。
このままでは三人とも捕まってしまいます。せめてエレナさんだけでも逃がさないと。
「立ち上がるのか」
「ええ。あなたを許せない。女性に暴力を振る男を許せない。許せない。許せない。私の幸せを踏みにじった。そういう男が許せない。はぁはぁ。私の幸せの為にお前を潰す。男! 男! 男! お前らが憎い!」
? 私は今何を? 男が憎い? いえ、私が憎いと感じたのは後にも先にも私の幸せを踏みにじったあの男だけのはず。
大体結婚したいはずの私が男が憎い? はて? いえ、違いますね。
憎いのは女性への暴力にためらいのないこの男があの男に被ったから……ですよね?
「様子がおかしいな。まあ、いい。俺はそのルクレア様もどきを拘束する必要がある。あとお前もな」
エミリアさんは未だにクズに足蹴にされています。早く助け出さねば。
私が何とかへこんだ鎧を脱ぐと、ゴトっという音と共に橋の上に落ちますが、すぐに槍で持ち上げ川に投げ捨てました。
「懸命だ。そこに転がっていたら武器として俺が使っていただろう」
よろけそうになりながらもなんとかクズの隙を探る。ない。ない、ない! ないないない全く隙が無い。
そもそも隙かそうでないかの判別がつかない。
そう考えていますと、ふとクズの足をエミリア様が掴みましたわ。
「私の身に痣を……傷をつけていいのはお姉様だけですわ」
お嬢様はそのようなことはしません。ではなく無事でしたのね。
「許さない!」
「どうやら俺は女に許されないと何度も言われる人生らしい。では終わらせよう」
そうクズが言った瞬間でした。エミリア様が何もセットしてないスリングを振り回します。
「悪あがきか?」
ビュンビュンビュンと音をたて、クズがスリングに意識を集中させましたわ。
なるほど。私はそのスリングに槍の石突をひっかけましたわ。一瞬男は理解が追い付かなかった様子。
私はそのままスリングを引っ張ると、すぐに槍をスリングから離す。スリングは勢いよくクズの顔面にクリーンヒット。
クズが完全にひるみました。私はそのまま槍を横薙ぎに振り、クズの頭に思いっきり叩きつけましたわ。
「ひとまず任務完了ですね」
「エレナさん、すみません。もっと早くお逃げになってもよかったのに」
「いえ、万が一の時は私も戦うつもりでしたので」
「……そうですか。あなたの手を煩わせることがないことを祈りましょう」
エレナさんが戦える? 一体どのようにというのでしょうか? とにかく、今はお屋敷に戻りましょう。
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