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第3章 ポンコツしかできないこと
27話 戻りたい平和な時代が偽りと気付き
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眼が覚めますと、ベッドの上で眠りについていたようです。当たり前のように同衾しているエミリアさんを見て、今の状況を思い出しましたわ。
そうでしたわ。デークルーガ帝国に向かうために一度ジバジデオ王国を経由していくのでしたね。
エミリアさんを起こさない様に立ちあがりふとあることに気が付きましたわ。
「着替え方がわかりませんわ」
やっぱりこれ起こして着替えの手伝いをして頂いた方が良いのかしら?
どうしましょうかとおろおろしていますと、部屋の扉をノックする音。
「失礼します。グレイ様より着替えの手伝いを申し付けられてまいりました」
入ってきたのは赤いツインテールのメイド服を着た女性と、青いサイドテールのメイド服の女性でした。
「あ、ありがとうございます」
入ってきた二人に着替えを手伝って頂き、私が部屋を出ますとそこには既にグレイ様とジェスカがいらっしゃいました。
「おはようございますお二人とも。ここはどこかしら? 宿屋にメイドは在中しませんよね?」
「ここはベルトラーゾ領になるベルトラーゾ侯爵家の屋敷さ」
ベルトラーゾ? 確か我が親友レティシア様の婚約者様のご実家でしたわよね。一度お会いしたことがありますが、変な笑い方で怖い方なのですよね。
「そう、挨拶くらいはした方が良いかしら?」
「それには及びませんわルクレシア様」
私の名を呼ぶ声。振り向けばそこにいるのは銀色の髪を腰まで伸ばした青い瞳の女性。間違いありませんわ。
「こちらにいらしたのですねレティシア様」
「お久しぶりですルクレシア様。ナダル領からいらしたとお聞きした時は驚いてしまいましたわ」
なんだかホッとしている自分がいます。ここ最近様々なことに巻き込まれてしまい、今までの自分とは大きく変わってしまったような気がして、ですがレティシア様は以前の何もできない私とすら仲良くしてくださった心優しい方。
気がつけば私の着替えが済まされ、レティシア様と会話しながら、グレイ様たちのいるサロンに向かいましたわ。
彼女と会話していますと、昔に帰ってこれたような気がして安心できます。思えばジェスカがいること以外は元通り。グレイ様にエミリアさん。そしてレティシア様。
ここにエレナがいないことが残念に感じますが、エレナとは社交の場で付き添ってくださる訳ではありませんので、このメンツで集まるのはなぜか無性に懐かしさを感じてしまいました。
「戻りたいわね。あの何もできなくても不満に感じなかったあの頃の私に」
何もできなくても不自由に感じなかったということは、滑稽であると同時に、平和である証拠だったのかもしれませんね。
いいえ、私はあの頃何も知らなかっただけで、水面下ではイサアークやルーツィアはひどいことをしてきていました。
ユリエ様だってあの頃にはユリエ教を作り始めていましたし、遅かれ早かれこうなっていたのかもしれません。
ああ、私が気付けなかっただけで、あの頃も決して平和ではなかったのですね。ジェスカの村が焼かれたのだって平和とはかけ離れています。
「レティシア様にお聞きしたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」
「はい。問題ありませんよ」
「ここ最近までの私はとても傲慢な令嬢だったと思います。いえ、きっと今もそうです。レティシア様は私と仲良くしてくださったのは、私が公爵令嬢だからでしょうか?」
そういわれたレティシア様は、少しポカンとしていましたわ。それもそうですよね。いきなり友情を疑われたら、私も硬直致します。
「そうですね。それが理由に含まれていないと言いましたら嘘になってしまいます」
やっぱり、そうなのですね。権力と外見しかなかった頃の私を、好んで友達になってくださる方なんていらっしゃるはずがありませんよね。
「ですが一番の理由は、ルクレシア様が私の育てた花を褒めてくださったことですね。令嬢なのに花を愛でるのはともかく育てるだなんてと馬鹿にされていた私の前に現れまして綺麗な花を育てられるあなたは天才ねって褒めてくださったことが、今でも忘れられません」
最初の出会いでしたね。勿論、覚えています。確かあの花の名前はスノードロップだったかしら。白くて小さい可愛らしい花でしたね。
「実はルクレシア様は私にとって初めてのご友人だったのですよ? 今までもこれからもあなたがどのような方になっても一番の親友の座に私を置いてくださりますか?」
「それはレティシア様の努力次第ってとこかしら」
「ありがとうございますルクレシア様」
そういったレティシア様は私に飛びついてきましたわ。私も彼女を抱きしめ返すと、彼女の力もぎゅっと強まりましたわ。
「なあ王子さんや。姫さんの返事でなんで友人の嬢ちゃんは喜べるんだ?」
ふと、向かう先からお声が聞こえ、そちらを伺うとグレイ様とジェスカが待ちきれずにこちらに向かってきていたようです。
「ルーは人に対しての好意を表現するのがとても下手だからね。素直になれてないだけ。僕やクラヴィウス嬢は付き合いが長いからね。つまりあれは大好きですって言っているのさ」
「難儀なもんだな」
そこ! 会話聞こえてますからね! と、とにかく! レティシア様が私の一番の親友であるということは今までもこれからも変わりません。絶対に変わりませんからね。
エミリアさんも目覚め、五人で朝食を頂き出発の準備を整え始めましたわ。
特に準備をしなくて良い。我々がやりますと言われ、何もすることがない私とグレイ様はベルトラーゾ家のサロンでくつろがせて頂いています。
「さてとグレイ様。本当にジバジデオ王国にご同行されるのですか? 止めたかったのですよね?」
一番の疑問点。何故グレイ様はジバジデオ王国までの脱走に加わってくださったのか疑問でしたが、今一度確認しておくべきよね。
「あー、君に信用して貰える言葉でいうとね」
「言いますと?」
何でしょうか。絶妙に嫌な予感がするのですよね。
「単純にルーを困らせたかったから特に反対ではなかったんだよね。君が困った顔を見せてくれればいいと思っただけ。そして逃げ出すならついてきた方が面白いかなって」
「今、果てしなく絶望しています」
「いいね。困惑している。その顔が見れただけついてきたかいがあったよ。抱きしめてもいいかな?」
そう言っておきながら既に私の体をぎゅっと抱きしめるグレイ様。良いのかしら? これだと表情が見れませんよ?
その後、中々離してくださりそうになかったので無理やりグレイ様の体を押そうとしますと、グレイ様はゆっくり離れてくださりました。
「安心しきったその表情もすっごい可愛いよルー」
グレイ様は密着状態から離れてくださりましたが、顔が至近距離の位置で離れるのをやめられ、両手で私の肩をがっちりと掴んでいらっしゃり、私からもこれ以上離れることはできませんでした。
「離して欲しいのですが」
「んー、今度はどんな条件にしようかな?」
「困ってますよ? 既に困っていますよ? これで充分じゃないですか。これ以上困らせても表情は変わりませんよ!?」
助けて欲しいところですが、今ここに誰かが来ても私が何かをされているかと言われればいつものお戯れ程度。
この程度で王子から私を助けてくださる人なんていませんし、どうしましょう。ジェスカはこないだは助けてくださりましたが、あれは私に目的があったからですし、むやみに王子に歯向かうなんてしませんよね。
「やっぱり今すぐ結婚しよう」
「ちょっと!? それは私がグレイ様の生誕祭まで婚約者が見つからなければですからね!? 後118日あるじゃないですか!!」
私がそう言いますと、珍しくグレイ様が驚いたような表情をされましたわ。私、何か申し上げましたでしょうか?
「そんな細かくカウントしてたの? 僕ですら知らなかった数値なんだけど。計算すればわかるけど」
なっ、なっ、なっ!? なんですかそのリアクションは!? それでは私がもういくつ寝るとグレイ様の生誕祭ってまるで楽しみにしていたみたいではないですか?
バカなのですか? バカなのですね? ばーかばーか!
グレイ様が驚いた拍子に、私を掴む力が弱まったように感じ、私はグレイ様から離れました。
「全く、後がついたらどうしてくださるのですか」
「その時は責任を取るよ」
「それは貴方にしか利益がないのでは!?」
「怒らない怒らない。でも怒らった表情も可愛いよ」
全くこの王子ときたら、どんな表情しても私は可愛いに決まっているじゃないですか。
暫くしてすべての準備が整い、私達はベルトラーゾ家の馬車に乗せて頂くことになりましたわ。
そうでしたわ。デークルーガ帝国に向かうために一度ジバジデオ王国を経由していくのでしたね。
エミリアさんを起こさない様に立ちあがりふとあることに気が付きましたわ。
「着替え方がわかりませんわ」
やっぱりこれ起こして着替えの手伝いをして頂いた方が良いのかしら?
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「失礼します。グレイ様より着替えの手伝いを申し付けられてまいりました」
入ってきたのは赤いツインテールのメイド服を着た女性と、青いサイドテールのメイド服の女性でした。
「あ、ありがとうございます」
入ってきた二人に着替えを手伝って頂き、私が部屋を出ますとそこには既にグレイ様とジェスカがいらっしゃいました。
「おはようございますお二人とも。ここはどこかしら? 宿屋にメイドは在中しませんよね?」
「ここはベルトラーゾ領になるベルトラーゾ侯爵家の屋敷さ」
ベルトラーゾ? 確か我が親友レティシア様の婚約者様のご実家でしたわよね。一度お会いしたことがありますが、変な笑い方で怖い方なのですよね。
「そう、挨拶くらいはした方が良いかしら?」
「それには及びませんわルクレシア様」
私の名を呼ぶ声。振り向けばそこにいるのは銀色の髪を腰まで伸ばした青い瞳の女性。間違いありませんわ。
「こちらにいらしたのですねレティシア様」
「お久しぶりですルクレシア様。ナダル領からいらしたとお聞きした時は驚いてしまいましたわ」
なんだかホッとしている自分がいます。ここ最近様々なことに巻き込まれてしまい、今までの自分とは大きく変わってしまったような気がして、ですがレティシア様は以前の何もできない私とすら仲良くしてくださった心優しい方。
気がつけば私の着替えが済まされ、レティシア様と会話しながら、グレイ様たちのいるサロンに向かいましたわ。
彼女と会話していますと、昔に帰ってこれたような気がして安心できます。思えばジェスカがいること以外は元通り。グレイ様にエミリアさん。そしてレティシア様。
ここにエレナがいないことが残念に感じますが、エレナとは社交の場で付き添ってくださる訳ではありませんので、このメンツで集まるのはなぜか無性に懐かしさを感じてしまいました。
「戻りたいわね。あの何もできなくても不満に感じなかったあの頃の私に」
何もできなくても不自由に感じなかったということは、滑稽であると同時に、平和である証拠だったのかもしれませんね。
いいえ、私はあの頃何も知らなかっただけで、水面下ではイサアークやルーツィアはひどいことをしてきていました。
ユリエ様だってあの頃にはユリエ教を作り始めていましたし、遅かれ早かれこうなっていたのかもしれません。
ああ、私が気付けなかっただけで、あの頃も決して平和ではなかったのですね。ジェスカの村が焼かれたのだって平和とはかけ離れています。
「レティシア様にお聞きしたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」
「はい。問題ありませんよ」
「ここ最近までの私はとても傲慢な令嬢だったと思います。いえ、きっと今もそうです。レティシア様は私と仲良くしてくださったのは、私が公爵令嬢だからでしょうか?」
そういわれたレティシア様は、少しポカンとしていましたわ。それもそうですよね。いきなり友情を疑われたら、私も硬直致します。
「そうですね。それが理由に含まれていないと言いましたら嘘になってしまいます」
やっぱり、そうなのですね。権力と外見しかなかった頃の私を、好んで友達になってくださる方なんていらっしゃるはずがありませんよね。
「ですが一番の理由は、ルクレシア様が私の育てた花を褒めてくださったことですね。令嬢なのに花を愛でるのはともかく育てるだなんてと馬鹿にされていた私の前に現れまして綺麗な花を育てられるあなたは天才ねって褒めてくださったことが、今でも忘れられません」
最初の出会いでしたね。勿論、覚えています。確かあの花の名前はスノードロップだったかしら。白くて小さい可愛らしい花でしたね。
「実はルクレシア様は私にとって初めてのご友人だったのですよ? 今までもこれからもあなたがどのような方になっても一番の親友の座に私を置いてくださりますか?」
「それはレティシア様の努力次第ってとこかしら」
「ありがとうございますルクレシア様」
そういったレティシア様は私に飛びついてきましたわ。私も彼女を抱きしめ返すと、彼女の力もぎゅっと強まりましたわ。
「なあ王子さんや。姫さんの返事でなんで友人の嬢ちゃんは喜べるんだ?」
ふと、向かう先からお声が聞こえ、そちらを伺うとグレイ様とジェスカが待ちきれずにこちらに向かってきていたようです。
「ルーは人に対しての好意を表現するのがとても下手だからね。素直になれてないだけ。僕やクラヴィウス嬢は付き合いが長いからね。つまりあれは大好きですって言っているのさ」
「難儀なもんだな」
そこ! 会話聞こえてますからね! と、とにかく! レティシア様が私の一番の親友であるということは今までもこれからも変わりません。絶対に変わりませんからね。
エミリアさんも目覚め、五人で朝食を頂き出発の準備を整え始めましたわ。
特に準備をしなくて良い。我々がやりますと言われ、何もすることがない私とグレイ様はベルトラーゾ家のサロンでくつろがせて頂いています。
「さてとグレイ様。本当にジバジデオ王国にご同行されるのですか? 止めたかったのですよね?」
一番の疑問点。何故グレイ様はジバジデオ王国までの脱走に加わってくださったのか疑問でしたが、今一度確認しておくべきよね。
「あー、君に信用して貰える言葉でいうとね」
「言いますと?」
何でしょうか。絶妙に嫌な予感がするのですよね。
「単純にルーを困らせたかったから特に反対ではなかったんだよね。君が困った顔を見せてくれればいいと思っただけ。そして逃げ出すならついてきた方が面白いかなって」
「今、果てしなく絶望しています」
「いいね。困惑している。その顔が見れただけついてきたかいがあったよ。抱きしめてもいいかな?」
そう言っておきながら既に私の体をぎゅっと抱きしめるグレイ様。良いのかしら? これだと表情が見れませんよ?
その後、中々離してくださりそうになかったので無理やりグレイ様の体を押そうとしますと、グレイ様はゆっくり離れてくださりました。
「安心しきったその表情もすっごい可愛いよルー」
グレイ様は密着状態から離れてくださりましたが、顔が至近距離の位置で離れるのをやめられ、両手で私の肩をがっちりと掴んでいらっしゃり、私からもこれ以上離れることはできませんでした。
「離して欲しいのですが」
「んー、今度はどんな条件にしようかな?」
「困ってますよ? 既に困っていますよ? これで充分じゃないですか。これ以上困らせても表情は変わりませんよ!?」
助けて欲しいところですが、今ここに誰かが来ても私が何かをされているかと言われればいつものお戯れ程度。
この程度で王子から私を助けてくださる人なんていませんし、どうしましょう。ジェスカはこないだは助けてくださりましたが、あれは私に目的があったからですし、むやみに王子に歯向かうなんてしませんよね。
「やっぱり今すぐ結婚しよう」
「ちょっと!? それは私がグレイ様の生誕祭まで婚約者が見つからなければですからね!? 後118日あるじゃないですか!!」
私がそう言いますと、珍しくグレイ様が驚いたような表情をされましたわ。私、何か申し上げましたでしょうか?
「そんな細かくカウントしてたの? 僕ですら知らなかった数値なんだけど。計算すればわかるけど」
なっ、なっ、なっ!? なんですかそのリアクションは!? それでは私がもういくつ寝るとグレイ様の生誕祭ってまるで楽しみにしていたみたいではないですか?
バカなのですか? バカなのですね? ばーかばーか!
グレイ様が驚いた拍子に、私を掴む力が弱まったように感じ、私はグレイ様から離れました。
「全く、後がついたらどうしてくださるのですか」
「その時は責任を取るよ」
「それは貴方にしか利益がないのでは!?」
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