ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている

大鳳葵生

文字の大きさ
84 / 102
終章 有史以前から人々が紡いできたこと

5話 デークルーガ城潜入大作戦

しおりを挟む
 デークルーガ城にはあくまでユリエと会うことが目的。

 ですので私以外は数名で潜入し、それ以外は待機することになりました。

 エミリアさん、エディータ、ヨハンネスの三人も合流し、潜入ルートも確保。当然作戦は夜決行。ですのであと数刻で潜入開始となります。

 身軽で潜入になれたメンバーが選抜されるのですが。

「エミリアさんにお義姉様にエディータの三人は確定よね」

 何このメンツ嫌。令嬢《エミリア》、令嬢《オルガ》、姫殿下《エディータ》に令嬢《わたし》フー!

 どう考えても失敗。潜入作戦やめたい。私含めて四人。これでメンバーの約半分。あと一人くらい呼ぶべきでしょう。

 残っているのはグレイ様、エリオットお兄様、ヨハンネス、メルヒオール様。マリア。ここで誰か一人選んだら贔屓しているように見えるかしら?

 私は一番問題なさそうなお兄様に同行をお願いし、四名には待機して頂くことにしました。

「それでは残りの皆様。一つお耳に入れて欲しいことがありまして。実は天啓についてお義姉様と議論しあった結果。もしかしたら答えがでたかもしれません。それである準備をお願いします」

 私がそう言いますと、三人はやれやれと言った雰囲気で頷いてくださりました。マリアも、その間に独身男性探してきますとか何言っているのかしらあなたは司祭様の家で待機よ。今決めました。

 マリアはおいといて、やはり皆さま頼りになる方々です。

「お願いしますね、皆様の準備。万が一ユリエを鎮圧してもなお、帝国民がユリエ教を支持した時の為に役立ちます」

 さあ、今度は私達がユリエを引っ張り下ろす番です。

 日が沈み、月の光が大地に届く。私達はなるべく光の届かない影を通りながら城壁付近まで到達しました。

「ここですね。エミリアさん。壁」

「え? 確かに私の胸は壁ですけど、触るのですか?」

「登りなさい」

 エミリアさんは、無視、気持ちいと鳴き声を上げた後にせっせと壁を登る準備を始めました。

「あの令嬢はおかしいですよ」

 誰もが口にすることを諦めていたことをつぶやくエディータ。でもね、あなたも十分おかしいですよ。

 しばらくして城壁の上から縄梯子が吊るされました。これいつも用意しているのかしら。私の家に侵入する為に努力しすぎよ変態。

 縄梯子をスルスル登っていくお兄様とお義姉様。そして私を背に乗せて楽々登るエディータ。やっぱり猛獣の称号は彼女にあげましょう。

 城壁の上に立ちますと、下を見たことに後悔しました。突然クラっとした感覚に襲われます。何ここ怖い。

「ルクレシア……もしかして高いところ」

 今日やっと口を開いた兄。心配になってやっと喋ってくださったことは嬉しいのですが、もっとお義姉様と仲良くなれるようにちゃんと喋れるようになってください。

「こっここここここわ怖くないわよ! これくらい、ダンスだってできるわ!」

「地上でもできない」「そうだね、僕もそう思う」「私がつき落として先回りしてクッションになりましょう!」「ええ、ルクレシアさん信用なさすぎじゃないですか? ……え? 最後? え? は? ん?」

 エディータ、あなたここにくるまでずっと一緒にいた珍獣の本性に気付き始めたようですね。

 事実を理解できないエディータがは、ひとまず私を抱え安全な場所まで移動してから城壁内に侵入。

 場内には数名の兵がいらっしゃいますが、まだバレていないと考えていたことが甘かった。

 ユリエの天啓の方が一枚上手だったようです。

「囲まれてしまいましたね」

「僕とエリオットが道を切り開くよ」

 お義姉様が前に出ようとした時でした。私、エミリアさん、お兄様、お義姉様は思いっきり投げ飛ばされ、城の入り口まで飛ばされてしまいました。

「先に行くと良いです。私は強くなるためにここにいます。お見せできないのが残念ですがこのエディータ・レオノーラ・ディ・ジバジデオの心配は不要です」

 エディータの猛攻が始まり、私達を追ってくるものはほとんどおらず、数名程度はお兄様とお義姉様の次期ベッケンシュタイン夫婦コンビが瞬殺。

 これはお父様がいなくてもベッケンシュタイン家は安泰ですね。

 今回の件で、我がベッケンシュタイン家の爵位が剥奪されなければですけど。

 グレイ様がどうお考えになられているかですね。まさか公爵家が二つも取り潰しになんてなりましたら大問題ですし、大事にならないように片付けられるはず。

 そうあるべきではないと考えているのはきっと私だけでしょうね。この戦いが終わったら、私はもう公爵令嬢でいられない。

 でも、培った人生は変わらない。私は公爵令嬢として育てられたルクレシア。この事実に違いなんてない。

 私が決めたこの道を、ただ突き進むだけ。大切な人たちとのかけがえのない時間を護る為。

 先に進みますとまた数人の兵士たち。これ以上私の周りから戦力を裂くわけにはいかないと判断したのかエミリアさんが私のすぐ前に立ち、お兄様とお義姉様が更にその前に立ちました。

「待っててルクレシア。僕たちがすぐに道を開くよ」

「いえ、お兄様、お義姉様。三秒後に耳を塞いでください」

 お兄様とお義姉様だけに聞こえるようにそう言いますと、すぐに三秒経過しました。私はエミリアさんの背中に背負わせていたヴァイオリンを手に取りました。

「さて、今日も恥をかかせて頂きます」

 私がヴァイオリンの演奏を始めますと、両耳の痛みに大喜びするエミリアさんと、耳を抑え苦しみ隙だらけになる兵士たち。

「今です!」

 私の掛け声とともになぜかパワーアップしたエミリアさんとお兄様、お義姉様がとびかかりました。ドMってすごい。

 エミリアさんのロープ縛り。お兄様の柄殴り。お義姉様の掌打が次々と敵兵を戦闘不能にしていってます。お兄様、地味。

 剣技を使わないで気絶させようとしている辺り、さり気無い優しさだと解釈することにしました。

 兵たちを圧倒し、前に進んでいきます。デークルーガ城内部へと進んでいきました。

 私やお兄様は、幼い頃からデークルーガ城に訪れていたため、一直線にユリエの部屋に向かうことができましたが、おそらくそのことくらいユリエも見越していることでしょう。

 もし、部屋にいらっしゃいましたらおそらく私たちが部屋に訪れても問題ないと判断していることになります。

「着きましたね」

 城の外が見えると、まだ庭園では騒がしく、エディータが一騎当千しているようです。

 あれだけの兵の海。彼女がいなければ先に進むことはできなかったでしょう。ですが、いきなり投げ飛ばしたこと。まだ許していませんよ?

 そして彼女《ユリエ》の部屋の扉を勢いよく開きますと、数名の護衛とその中心で優雅に紅茶を飲むユリエ。

 そして四つの空席には、紅茶が湯気を立てながら用意されていました。

「天啓通りですね。ルーちゃん。そして天啓通り仮にも外交なのに現れない王子。プッ、やはりあのような男はルーちゃんに相応しくありません」

 用意された席にはそれぞれネームプレートまで用意されており、左からお義姉様、お兄様、私、エミリアさんの名前がありました。

 ここに潜入するメンバーにはエディータもいらっしゃいましたが、最初から用意されていなかったのか、急遽隠したのか。

「うちの王子は私が選抜から外しただけです」

「そうですか。神子《みこ》にはどうでもいいことですが、まあいいでしょう」

「この紅茶、何か入ってたりはしていませんでしょうね?」

 私の質問に対し、ユリエは澄ました表情で何も入っていませんと答えました。彼女の雰囲気からでは、判断が難しい。

「ではこのような質問はどうでしょうか? 天啓通りになるとしたら、私達四人の中で、最初に眠るのは誰かしら?」

「以前も言いましたが、天啓は自由には使えません。必要な時に降りてくるのです」

「今がその時ですよ。何せ、私に天啓を信じさせるチャンスなのに、まさか使えないなんてことはありませんよね?」

「……今はその時では」

 ユリエは一向に天啓を見せようとせずに、苦い顔をしています。やはり予想通り、天啓で情報を得るには、リアルタイムである必要がある。

 未来を見ることができない。リアルタイムで起きていることならいくらでも把握できる。そういうことですね。

 きっと城に潜入するメンバーのことも、エディータが庭園で暴れていることも、常に把握し続けている。

 だけど、未来予知はしない。未来のわからない天啓なんてだめよユリエ。私の勝ちは貰ったわ。

「わかりました。明日、あなたの奇跡をお見せください。そしたら私も信じましょう。ただし、本当に奇跡でしたらですけど」

「良いでしょう。ついにつがいになる決意を固めてくださりましたか。安心してください。神子《みこ》はいつでも大歓迎ですから」

 大歓迎はこちらです。説得しようと考えてきましたが、やはり彼女の天啓は瓦解させた方が早そうです。

 今頃外にいる方々はもろもろの準備を整えてくださっているでしょう。

 さあ、舞台《しょけいだい》に上がりなさい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...