ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている

大鳳葵生

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第後章 公爵令嬢をやめること

epilogue

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「お母様!」

 綺麗な銀色の髪の少女が、私と違い紫紺の瞳で真っすぐと私目掛けて走ってきました。

 その瞳の色は、本来の私の瞳と同じ色だと思うと、より愛おしく感じました。

「姫様、あまり走られては王妃様じゃなくても転んでしまいます!」

「どういう意味よエレナ」

「そうだぜエレナ。姫さんは歩いてても転ぶし、立ったまま突然崩れ始める」

「ジェスカ!!」

 ジェスカとはもう十年の付き合いになりますが、結構な年のはずなのに昔となんら変わりません。

 ここ十年で起きたことと言えば、皆さま随分変わられました。

 まずは目の前のバカ夫婦。ジェスカ・マオリとエレナは結婚し、現在は王宮に仕えています。

 二人の間には、我が娘より一歳年上の女の子が誕生し、彼女は後に王宮侍女に育てる予定のようです。

 十年ずっと身近にいるこの二人は、どこが変わったかよくわかりませんね。

 あまり離れないと言えばもう一人。ほぼ毎日のように私に会いに来る変態ドМ令嬢だった彼女エミリア・リンナンコスキ公爵夫人。

 この女、私と一緒にいるためだけに宰相に嫁ぎやがった。ドМってやばい。

 女嫌いのマックス様も、世継ぎさえ残せればクライにしか思っていなかったようですが、エミリアさんは夫に嫌われていても気にしないためかある意味一切ぎすぎすすることなく夫婦関係を続けています。

 それからユーハン・フランスワ男爵とメルヒオール・クエンカ子爵は、よく知りもしない女性とご結婚されてしまいましたわ。

 お二人とも、今はそれなりに幸せそうで何よりです。

 そういえばベッケンシュタイン家にも新たに家族ができました。可愛い甥と姪が一人ずつです。

 あの時、お義姉様のおなかにいた子はなんと双子で、お二人ともお義姉様の好奇心旺盛な所を引き継いでいて将来が不安です。

 また、もうじきミシェーラの社交界デビューが控えておりまして、彼女の侍女たちは大忙し。フリーデリケさんはあの後すぐに退職されてしまった為、もういらっしゃいません。

 それからバルトローメス様とルイーセ様もご結婚されています。お二人はあの頃から相思相愛で、少々羨ましかったんですよね。

 それからマリアなのですが、結婚する為に旅に出たっきり、連絡が取れなくなってしまいました。

 どこか遠い地で、彼女が幸せになっていると良いのですが。

 隣国、ジバジデオ王国では、新女王エディータの王政により、やや野蛮さがなくなり、奴隷制度も廃止されました。

 彼女もご結婚されているとお聞きしましたが、旦那さんが不憫で仕方ありません。

 アンジェリカは、王族が一瞬で不信になったデークルーガ帝国の立て直しの相談役として裏でひっそりと国政に関わっているみたいです。

 他国の元女王でしたが、今はアルデマグラ公国、デークルーガ帝国、ジバジデオ王国は友好国となり、相談役程度ならと受け入れられたそうです。

 私、本当に幸せだったんですね。思い返すだけでこんなにも大切なご友人に囲まれていただなんて。

 ああ、幸せだったではありませんね。幸せ真っ盛りです。

 だって今、私は大好きな人と大好きな人の間に生まれた子供がいるのですもの。

 しばらくして私の夫と夫に連れられた金色の髪に青い瞳の少年が稽古から戻られました。

「ただいまルー」

「ただいま戻りましたお母様」

「あらー。稽古頑張ったわねマルッティ」

 私が愛する我が子を抱きかかえると、ドレスの裾を引っ張る愛娘のルーツィア。

 散々悩んだ結果ですが、あの結婚前の辛い事件の中で、もういないお二人の名前を頂くことにしました。

 ヤーコフにしなかったのは、この名前はさらに特別だと思ったから控えました。

 しばらくしてエレナの娘のアリスが、やってくるとエレナと一緒に料理の配膳を始め、王族四人の昼食が始まりました。

「そういえばルー。近隣の王国から、国際交流の話が来ていてね。一緒に来てくれるよね?」

「当然ですわ。ジバジデオじゃなければ」

「エディータ君は別に君以外取って食わないじゃないか」

「それは問題視して良いのでは?」

 グレイ様は相変わらず私をいじることをお止めになりません。

 最初の頃は信じてくださらなかったエレナも、最近ではエレナ達家族の前でもこの調子の為、本当だったのですねと言っていました。

 最近できた、写真という技術により、少々手間になりますが遠くにいる方々のご尊顔を拝見することができます。

 グレイ様から写真を一枚見せて頂きますと、そこにはこれから行く予定であるカーリアム王国の王族の集合写真が写っていました。

 侍女の方々もご一緒な辺り、我が国くらいには王族や侍女と距離感が近そうですね。

 あら?

 この侍女のお二人。天啓諜報隊のユルシュルさんとシュザンヌさん?

 それからもう一人、見覚えのある茶髪に青い瞳の女性が、隅っこで仕方なさそうに映っていました。あらあら。

 そういえば、ユルシュルさんもシュザンヌさんもグルヴィーラでの戦いの後、どちらに消えたか存じ上げませんでしたが、そうですか。彼女を連れて逃げてくださったのですね。

 もし、彼女がアルデマグラ公国に残されていたら、もう一度牢獄に入れなければいけませんでした。

「ルーツィア。この写真をご覧」

「なんですかお母様」

「この性格が悪そうなお姉さん。貴女と同じ名前をしているのよ」

「えー!? でもこのお姉さんすっごく綺麗だよ? 性格悪いの?」

「ええ、とっても」

 彼女が存命だと知り、グレイ様やエレナ。ジェスカにまで笑われてしまいました。

「まったく、ルーが何かやると必ずどこかほころぶよね」

「ええ、王妃様ですから」

「だな」

「何なのよ貴方たち!」

 私がみんなに向かってツッコミを入れてしまうと、息子のマルッティが笑いながら言いました。

「お母様愛されてる!」

「何よ。当然でしょ。私は公爵令嬢の時から変人大好きな人たちから愛されているのよ」

 そして公爵令嬢をやめても、変人大好きな人から愛され続けています。




「ポンコツ公爵令嬢は変人たちから愛されている」 -fin-
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